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装甲車の中は快適とはいえない、サスペンションもきいてるわけではなくガタガタと揺れる。陸路から行き、空路でという話だったのでそんなに長時間この装甲車にいるわけじゃないと思っていた。
運転をしているマッチョは緊張しているのが私にも感じ取れた、この世界は強さことが全てだと少しだけ感じ取れた。生き残るために、生存競争に勝つ為に日夜戦い続けるのが正義みたいなものだろう。
「あ、あの飛翔様、ご説明をさせて頂いてもよろしいでしょうか!?」
それにしても声が出かかった、いやサスペンションもあまり聞いてないし、ガタガタと音もする車内だから声をでかくなるのも当然か…
「ああ、頼む!」
マッチョの説明によると空港は少し離れており、そこまで数十分程度だということ、空港からは数時間で着くとのことだった。空路での着陸ポイントはなく、アンバーシティ近くの場所でドロップされるとのことだった。
降下させられるってことか…
帰還方法については、殲滅後に連絡をしてください。本ミッションでは救難信号は却下されるタイプだと言っていた。こういったミッションは大抵は数十名からなす隊を成して行くのに、一人だとやはり怖さの方が引き立つのだろう…
説明を簡単に聞いてうちに空港に着き、私は輸送機に乗り継ぐことになった。空港といっても戦闘機やヘリなど入り乱れ、受付カウンターなどもあるが物々しさが際立っていた。
装甲車から出た私は、まず奇異な視線を受ける。他の冒険者、いや兵士や傭兵に比べると装備が重火器ではなく、メインが槍だからだろう。またしきりに「あれがチュートリアをトップで…」やら「あんな装備で大丈夫か?」なんて聞こえてくる。
私もこんな装備で勝てふのかさえわからないからわからないし、逆に周りの人たちの装備と見比べると不安になってくる。
とはいえ、一応ゲームとしてログインしているので死に戻りができるのは知っている。どこからリスタートになるのか、またデスペナルティがどれだけ身体にどのくらい影響するのかが気になった。調べた情報だと倦怠感としか書かれていなかったので、どのくらい身体が気だるさに襲われるのかがわからなかった。
慣れている人はそれでも別に戦えないことがないと書かれていたが、近接戦闘メインになっている自分にとっては結構死活問題になると感じたからだ。
装甲車を運転していたマッチョは、自分の案内はここまでですと言い、詳しくは受付カウンターへと言われた。適当に礼を言うと無事の帰還を願っていますと言われた。
受付カウンターへ着くと、結構な人の列があり、待つの面倒だなと思ったらカウンターの奥のドアが開き、ビシっとしたスーツ姿の人が現れて私のところに来た。
「お待ちしておりました、お出迎えもせず申し訳ございませんでした。どうぞこちらへ」
並んでいた途中だったが、一般の人が使うようなラウンジとは違う所に案内された。プラスティック製の椅子ではなく、ふかふかした本革仕様なのかしっかりとした造りになった椅子だった。また、テーブルの造りなども凝っており、空港じゃなかったらどこかのホテルのラウンジだろうと感じた。
ラウンジから案内してくれたスーツ姿の男は、ラウンジにある巨大なディスプレイに空路からの移動ルートと予定到着時刻、アンバーシティの知る限りの地図情報が表示された。
「では、発射時刻まで少々お待ち下さい」
そう言うとスーツ姿の男は退出し、ラウンジにポツンと一人になった。ディスプレイを見ると大まかではなく詳細な地図情報が出ており、ソーディアーの地図とは違ってこっちは文明や技術力も大きく違うなと感じた。アンバーシティの広さを見ると結構なもので、その中から二体を探せるのかと思った。
ディスプレイを見ていると着信という文字が走り、別ウィンドウ枠が現れてグリーディンが映った。
「こんにちは、さっきぶりね。あなたが持つクラスについて説明してなかったのを思い出してね」
そうだ、引知士だかダウンローダーと呼ばれるクラスについてだ…誰かに聞く前にここに連れてこられた感じだった。
「そういえば、そうだったね…教えてくれるの?」
「ええ、もちろん。今持っている、重槍にデータが入っているからその武器に向かってどういう使い方、機能があるのか、知りたいという意思を持って接すればわかる」
私は槍を持ち、知りたいと思った。
こみかみと首の後ろが熱くなり、次第に身体へ電気が走ったような痺れのようなものが走った。今までに感じたことのない、身体の中に走る奇妙な感覚は槍から何か取り込んだという感覚だ。
知識だけではなく、その使い方が入り込み、身体も今までずっと使ってきたような慣れ親しい感触があった。さっき貰ったという感覚はあるが、重心の位置やこの槍の特性が何かを把握していた。
様々な物に対して出来るのなら最強じゃないか、武器や乗り物から知りたいと思うだけで強くなっていく。私は早速、ハンドガンの事を知りたいと明確に思った…
槍の時は手に持ち、知りたいと思った。しかしハンドガンは腰につけたままだ、だが使い方、特性が入り込んできた。くすぐったいような感覚が全身に一瞬だけ広がり、瞬時に浸透していった。
「この能力って…ズルくない?」
「ええ、でも…使うには使う対象の情報量によって一日というか当人の体力に関係すると聞く。使い過ぎると倒れたりするし、気をつけて」
私はハンドガンを取り出し、手に取り構えたりし、撃ったらどこに当たるのかも体感でわかるようになっていることに気がついた。
「アンバーシティがある場所の地下にゲートがある、ただそのゲートを起動のに少し時間がかかる。なので二体を倒し、街を掌握することが必要だ…飛翔未那が死亡した際のリスボーンポイントはアンバーシティ近くに設定してある」
「とりあえず、倒せ…という事ね。考えるな、感じろだっけ?」
「そういうことよ、それじゃ良い報告を待っている」
通信は終わり、ディスプレイに表示されていたウィンドウも切れ、地図と空路情報が表示されていた状態に戻る。ラウンジ内は音楽がついているわけでもなく、ポツンとしている私はその静けさになんだか落ち着かなかった。
銃を仕舞い、アンバーシティの地図を見てもっと建物内の詳細や地下通路とかあるなら知りたいなと思った。
ズキンとこみかみが痛くなり、首筋の後ろもピリピリとした感じになる。瞬時にアンバーシティが地図情報を把握してしまった。ただ、3Dマッピングされた情報は自分が思った通りに動かすことが出来、どこにどんな建物があるのか、どういう通路があるのか把握することができた。
コンコン、とノックの音が聞こえた。
脳内で3Dマップとして形成されてはいるものの、実際に二つ視野がある感覚で特に違和感を感じなく、どうぞとノックに対して自然に反応することが出来た。用意出来たとのことで発着場へ案内され、ヘリみたいな飛行機のような輸送機に乗り込む。
実用を重視しているのか座り心地はあまりよくなかったが、頑丈そうだった。装甲も厚く、武器もごてごてついていた。試しに知りたいと思ったら、最前線仕様の中でもトップクラスというのがわかり、操縦方法やこの機体の癖などもわかるのも面白かった。
そして、マッチョな重装備な人が操縦手だった。この世界はマッチョが多いのか…?
3Dマップを頭に叩き込む事もなく、自然とどこに何があるのかわかるという感覚が面白くもつまらないものだった。新鮮味は最初だけだが、昔から知っている、わかっているというのがあり、味気ないものだなと感じた。
鈍重音と重低音が入り混じった振動が機内に鳴り、外の景色は灰色とコンクリートが通り過ぎていった。季節感というのを感じられない景色から、ここはまだ地下だというのがわかった。通り過ぎる景色から大きな塔みたいなものが見えて、見上げるとそれは天井を支えるようになっていたのが見えた。
過ぎ去っていく塔と広大な、地平線まで見える景色を見て、遠くで光が点滅していたり、爆発や光の線が見えたりもした。この世界は常にどこかで戦っているのが当たり前の光景なのだろうと感じた。
争いが絶えない世界か…戦闘狂には持って来いの場所なんだろうと思った。
私は槍を握りしめ、これから行く戦場に不安とワクワク感が混同して、ドキドキしているのがわかった。




