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 遺跡の中はちょっとしたカフェみたいな感じになっている。とはいえ、どれも簡素な作りになっていて遺跡から持ち出すと跡形もなく崩れる。カウンターにはホムンクルスがいる。

 ここはちょっとした衣食住可能な施設になっている。最低限の生活は可能になっているが利用できる者は限られていて、同じ記憶喪失した者だけとなっている。


 中は意外と広く作られていて、記憶喪失者にとってはこの世界に慣れるまではここを拠点にしてもいいように作られているのがわかる。私の場合はいきなりほっぽり出されて、こういう拠点的なものがなかったことを思い出し、イラだってきた。

『ミナ、大丈夫?なんかイライラしてる?』

 おっと、どうやら空気を感じ取ってしまったらしい…

(まあね、最初に目覚めた時のことを思い出してさ…)

『あの時は怖かった、ミナが助けてくれなかったら私どうなっていたことか…思い出しただけでもあのクソどものムカつくわ』


 私達、いや元は私だった眠兎。スタート時は今のようなごっついフルアーマーではなく、軽装に近い装備で結構な危険地帯に気を失っていたのだ。目が覚めた時は盗賊数人に囲まれていて身ぐるみ剥がされそうになっていた。

 あの時は怖かったなぁ…私自身、現実の記憶を失ってプレイヤーとしてログインして遊んでるわけだからゲームだとは思わない状態だしね。犯されるかと思った。

 それがこの武具のおかげで助かって、恵那と乃陰に助けられて一緒に旅をするようになったのだからよかったと思う。


『さて、ここのホムンクルスにミナが聞きたいことをいつものように聞くね』

(ええ、お願い~)

 このリビングアーマー状態になってから恵那や乃陰、他者とコミュニケーションが取れなくなったのだ。全て眠兎に頼まないといけなくなった、まあ、無理やり身体をアーマーで制御して動かすということは可能なのはわかっているがそんなことをしたら眠兎に捨てられるだろう。


「ホムンクルスさん、ちょっとお聞きしたい事があるのですが―」

 眠兎はいつものようにカウンター越しにいるホムンクルスに質問する。恵那や乃陰が質問してもあまりいい反応は示さないが、遺跡から目覚めた事になってる眠兎に対しては反応はいいのだ。

 反応の良さ悪さは受け答えの内容の差、愛嬌の差、などいろいろあげられる。国の偉い人だろうがこの遺跡の関係者ではないものに対しては話すら聞いてない時すらあるのがすごい。それに怒り遺跡を破壊しようとしたが無駄に終わり、ホムンクルスを殺そうにもすぐに復活してしまうため意味をなさない。 またホムンクルスに対して攻撃行為を行えば遺跡に入れなくなる仕組みになっている。

 ホムンクルスの容姿は…どこの遺跡でも全く一緒というわけでもなくその土地柄に合わせた平均的な容姿に設定されている。


設定されている、これは私が現実で知り得た情報だ。現実の私はゲームの情報を調べたりする為、様々なことが反則的にわかったりはする。しかし、知り得る情報は眠兎自身が興味を惹かれたことに対してだ。

今の私の奇妙な状態については、そういうものとして認識している。私が彼女に説明しようにも説明できないように制限されているので厄介だ。


 ミナはホムンクルスにGMへ連絡できないか聞くが知らないとのことだった。また遺跡にある端末を使って調べるものの、欲しい情報はなかった。遺跡内には、長方形のクリスタル削りだしのディスプレイがあり、タッチパネル式でいろいろ調べられるようになっている。

 調べられるといってもこのアーマーにインストールしてあるものばかりなので、あまり役に立っていなかったりする。


 適当に調べてる中、恵那と乃陰はやることがないので椅子に座ってこれからのことを話している。眠兎もある程度調べ終え、二人がいる方に向かうことにした。その際に、ホムンクルスに飲み物を頼み受け取り椅子に座る。


「ここも外れだったけど、面白い情報を得られた」

「へぇ、どんな?あ、飲み物ありがとう」

「お、悪いなサンキュ」

 二人は飲み物を受け取る、遺跡内で支給される飲み物はエナジードリンクだ。炭酸が微量に聞いていて、結構人気である。


「北ではゾンビ型のモンスターが活発化してるらしい」

 発生原因は謎、北方地方は宗教を主体とした国家が形成されていて、ゾンビ系なんて無縁だったのだ。そのため、ゾンビ系の討伐依頼が盛んになっているらしい。

「ゾンビか…あいつら臭いんだよな…動きが遅いゾンビなのかそうじゃないのか気になるな」

「戦う事を視野に入れるのはいいけれどさ、乃陰は気にならないのか?どうしてゾンビなんて発生してるのか」

 ファンタジーの異世界が舞台のゲームなのでゾンビとか発生することもある。しかし、本来ゾンビというのは…戦地後や怨念が残る場所に発生する傾向があるのだ。

「そりゃあな、北は国境付近にある壁とはだいぶ離れているし、異常だというのがわかる。そういえば眠兎、ゾンビ型って言ったな…まさか―」

「ああ、人型だけではなく様々な種族のゾンビだ」

 遺跡の中とはいえ、いつ誰が入ってきても大丈夫のように眠兎の声はイケボでしゃべり方も変えている。

「チッ…嫌な予感しかしねー」

「はぁ~、でも当面の目的は北だしね…」

「だが、私達が到着する頃にはゾンビ騒ぎも落ち着いてるかもしれないだろ」

 眠兎は楽観的に答えるが二人の顔はそんなことないと物語っていた。乃陰は腕を組み天井を見ている。いや盲目だから顔を上げているといった方が正しいか…

 恵那は頭に手を当てて下を向いてる。

「なんだよ、長引く理由があるのか?」


 単純にゾンビが厄介な理由、私は事前に知っているため二人がめんどくさそうにしているのはわかる。

「眠兎、ゾンビ型ってことは…人だけじゃない。つまり足の早いモンスターがゾンビだったりすると感染範囲がいっきに広がる。そうなってくると北に移動してる時に出くわす可能性がある。突破するのも困難な状態になると面倒だってことさ」

 恵那はうなだれながら、ため息をついていた。

「迂回するにしてもルートが山脈コースしかないし…多分、国も動き出すだろうし、それに便乗して突破しよう」


 こうしてゾンビが居たとしても、北へ目指す事になった。私達はこの遺跡で休息を取ることにし、明朝出発することにした。関係者なら5人まで泊まれるステキ宿屋にもなる遺跡である。



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