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38-



 廃墟風な街、使われてない建物の劣化は激しいと聞いたことがあるがさっきまで人がいたような形跡はないものの、埃などはなかった。


 君の悪さだけはあったが、ドアなどは締めれるのがわかったので密室空間にし室内に霧が発生していないことを確かめると今まであった視線もなくなった。


「はぁー」

 ため息をつき、手短な椅子に座る。中腰の姿勢の、まま移動していたので辛かった。慣れない姿勢で長時間いるのは苦手だ。


 持つ手持ちの武器が長ものの槍とはいえ、目立つように行動するのは危険だからだ。散々、事前に情報を調べて一対一でも不意をつかないと敵はかなり強いと書かれているくらいパーティ推奨だったからだ。

 それをチュートリアルだと1人でほっぽり出すあたり頭がおかしいよなと思う。あえて一人で戦うことの怖さを教えるようなものなのだろうかと考えたがチュートリアルそのものがランダムで形成される試験らしいのでそうでもないのかなと思ったりした。


 密室になった外から何か気配があった。それも複数…いや集まってきているのが感じ取れた。もしかして霧が自分を守ってくれていたのかもしれないという事を考えていなかった。椅子から立ち上がり、槍を構え、ドアがいつ開けられてもいいようにし、ドアの真正面ではなく、斜め横付近に移動。


 しかし、待ってもドアが開けられる気配もなく、外にいる気配も立ち去る気配もなかった。


 しびれを切らした私は、天井ダクトからその部屋を後にした、正面切って出るのも面倒だ。気配は相変わらずドアの前にあり、そこから動かないでいるのがわかり、変な奴らだなと思いながら別の部屋に出た。

 相変わらず霧に覆われており、通路も電灯がついていないのにも関わらず薄明るかった。ドアの前に固まってる謎の団体さん…放っておいてもいいかな…でも倒せるなら倒した方がいいかな…

 悩む中、自然と身体がそいつらに向かって槍を突き刺しまくっていた。コアがある場所へ適当に目処つけて、ざっくりとぐっさりに


 身体が思ったよりも軽く動き、仲間が倒されているのに気がつく前に固まってる奴らを一体、二体、三体とぼとぼとと粘土もどきに変わっていった。最後の一体だけは真正面から対峙することになった。

 顔、というよりも奇妙な触覚といえる角…ナメクジの角がうじゃうじゃと出ていた。気持ち悪さと不可解さからくる怖さがあった。対面することで自分の身体が強張っていくのがわかった。


 一瞬、そうほんの一瞬の恐怖が身体に染み付いていた。その染みが動きを鈍らせ、槍がコアに届かせるには至らず気味の悪いものが目の前から結晶化した。


「んな?!」


 槍はその結晶化した物体をすり抜け、私は振りぬかれた槍の反動で体勢を崩されそのまま結晶化した物体をすり抜けた。身体にひんやりとも温さも何も感じなかったが、精神的に不快さだけを感じた。


ぎゅががるぅぅぅん


 気持ち悪い鳴き声だ、全身に鳥肌が立ち…危険だと感じた。先手必勝という言葉があるのなら、今のうちにさっさと槍で突けばよかった。物理的に透過したのなら、槍も通じないと思ってしまったのだ。

 よくある話、相手が自分に攻撃してきた瞬間にそういった透過が消える物理的干渉が可能になる。そういった敵がいるし、もちろん、特殊な攻撃じゃないと敵に通じないで一方的にやられる、だから逃げないといけない。どちらのケースか、恐怖で後者だと私は思った、だって意味不明だったから


 ちっ!!!


 舌打ちをし、脱兎の如くその場から逃げながら後ろから走り追いかけてくる音が聞こえた。ハンドガンを引き抜き後方にデタラメに撃つ、狙いなんてものはなくただ撃つ。

 バァンバァンと銃砲から放たれる音のみが鳴り響き、牽制にもならないが何もしないよりはマシだと思った。


「くそっ!」


 相手しないでさっさと違うところを散策したり、この謎な状況を解明すればよかった。なんでわざわざ危険を犯そうと思ったんだ。あーめんどくさいめんどくさいー怖いー!


 マガジンが空になるまで撃ち尽くしたところで背後の気配は変わらず追ってきているのがわかった。裸足でかけてくるドタバタとした音が自分の恐怖を増長させていった。


 服くらい着ろよ、なんで人型っぽいんだよ。


 チラッと振り向き、気味悪い結晶化したトゲトゲしい半透明なものは追ってきていた。ただその結晶の一部が破損していた。


 もしかして、変身した時は無敵かなんかだけど今なら当たる?


 空になったマガジンを取り出し、思いっきりそいつに投げつけた。


ガチン


 当たったのを確認すると瞬時に槍を構え、コアがあると思われる部分に向けて突きを繰り出した。当たるなら怖くない、カウンターで何かしてくるだろうがリーチはこちらにある。


ピシィ


 結晶化している半透明なソレは割れていき、外装が落ちていった。もとの気持ち悪い全裸の顔が触角のようなツノだらけのものに変わった。


へぇ、今のを剥がしてからもう一度ってことね。


 突いた先に、もう一度突き直し、コアを破壊。粘土の塊がその場に崩れ落ちていた。

「ビビった〜」

 即座にあたりに何かいないか、仲間を呼んでいないかを確認するが特に気配はなかった。だが、ぜんしんをねっとりとする視線は感じた。


 通じるかわからないが聞いてみるか

「ちょっと、さっきから見ているやつ出てこい。気持ち悪いんだよ」

 まあ、こんなこといって出てくるのなら苦労はしないなと思ったが、存外出てくることもある。そしてソイツは出てきた、最初に私がこのシリーズをはじめた時にチュートリアルだとかほざいた奴と同じような感じの奴が…


 目の前に、霧が集合して形作っていき、ショートカットに真ん中分けされた翠色のした髪にピッタリとした白地に緑色のハイライトラインが入っている長袖特殊なスーツだった。それが太ももの少し隠すくらいのスカートのようになっており、なんだか妙にエロかった。ていうかエロい。


「こんにちは、はじめまして…私の存在に気づけたのはあなたで3人目よ」

 眼光が人形のような無機質さが出ており、抑揚のない言葉もなにか感情がなく感じた。口を動かしたのかさえわからなかった。いや口を動かしていなかったように見えた。あれか念話か?

「ここじゃなんだから落ち着いた場所で話しましょう」

 彼女がそう言うとあたりは来た時と同じ真っ白い床、あたり一面壁がない広い空間に変わった。こいつ…もしかして…

「改め、私はこの世界を人格化した存在…人は私をマザーと呼ぶわ、まあ…私を倒せれば世界は平和になるなら、とっくに世界は平和になるんだろうけれどそうじゃないのよね」

 クスクスと口元を抑えて笑っている音は出ていた。ただ、眼だけは笑っていなかった。表情がぎこちなさよりも気味悪さが際立っていた。


椅子が二つと円形のエーブル、中心はガラス張りになったものが光が収束し形成された。


「立ったままじゃ、何かと疲れるでしょう?どうぞ座って」

 私は彼女に言われるがまま座る。


「さて、だんまりのようだけど…気になるねぇ…どうして私の視線に気づいたの?」

 彼女の眼は普通ではなかった、歯車や電子回路を織り交ぜたような紋様をしており、銀河のようなものが煌めいていた。ブルーのような何もないではなく、貪欲な探究心が宿っていた。

 臆したままだと解剖でもされる勢いがあり、冷や汗が流れた。


「あなたみたいな奴と会ったことがあったから、もしかしてって思ったからよ」

 彼女の口角が微妙に上がり、目元がよりいっそう力強くなった。


「神界人が私みたいな奴と会ったことがあるねぇ…どこの世界で?」

 主導権を握られていることに、嫌な感じはしたが怖くて答えるしか無かった。

「ソーディアー…」

 私が答えた後に、彼女は見開いていた眼を細めた。

「なるほど…ブリジェストね」


 テーブルの真ん中にあるガラス張りの所に二つの星が映し出される。

「あなたが居たのはブルーシェントのところか…」

「ブルーを知っているの!?」

 中央に表示された映像がブルーに代わる。


「かつては同志だった…」

 碧色の髪の女性は少し悲しそうな顔をした。…ような気がした。

「どうやったらここから行ける?」


「お前は…」


「お前じゃない、飛翔未那。ブルーを倒す者だ」

 この世界の神とも言える存在に会えた。ならば臆していても始まらない、私の心はいつの間にか火がついていた。彼女の悲しそうな顔をしたような隙が付け入ることができる瞬間だったと思ったからだ。


「名前を名乗ったんだ、お前こそなんだ」


 彼女は目を閉じ、口元には微笑を浮かべ…ゆっくりと目を開き私を見なおしてきた。もう怖気づかない、目の前の吸い込まれそうな眼光や彼女の異質な感じに飲み込まれない。


「グリーディン=システィマティク・オール・グリーン、私の事は好きに呼ぶといい飛翔未那。しかし、自らがブルーを倒すと…実に面白い」

 ブルーとは違う名前、グリーディンという名前から緑の意なんだろうと思った。後半の名は正常値という意なのか?

 グリーディンは、最初に会った時と比べ表情は少しだけ柔らかくなっていた。


「手引きしてやろう、イレギュラーは歓迎だ」


 私はこうして、チュートリアルを終えた。このアキージョンという世界の異質な者として歓迎された。


「こちらこそ、よろしくグリーディン」

 目指すはブリジェストと呼ばれた世界、恵那がいる場所に…


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