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恵那と月無の間にユーリが無理やり割り込んでいた。二人の切っ先がユーリの胸に刺さっていた。ユーリが割り込んでいなかったら、2つの切っ先は互いの心臓を突き刺していたのは明白だった。
ユーリは両手を広げた状態で二人の剣がそれ以上突き進まないように抑えていた。どうやってその場にいきなり現れたのか、二人はわけがわからなく止まっていた。
剣も抜かず、ただ二人ともユーリを見ていた。ただユーリが持つフラフープのような円形の車輪のようなものが彼を運んだのがわかった。
「ンだよ…ゴホッゴホッ」
咳と共にビチャビチャと血が溢れ落ちる。
「な、何してんだよ!!!ユーリィィ?!」
月無が吠え、ユーリは月無の方を見て、言葉を紡ぐ
「グフッ…ハァ…ハァ…いい加減向き合い受け入れろ。こいつはお前の半身だ…それになこれは俺の意思なンだよ」
ユーリの手は月無が持っている剣の握り手の上からそっと触れる。
「これでい…い…ンだよ」
そしてユーリは恵那の方にゆっくりと、痙攣しながら向いた。恵那はビクリとしたが、反対側の手も同じく剣を握っている手を上に置かれる。
「恵那…剣を交えてお前もわかってるはず…ガハッガハッ…だ。あいつの思い通りになるンじゃねぇ…お前は『可能性』なンだ…」
「何を言ってるんだよ!意味がわからないよ!」
「うるせぇ…うるせぇ…ハァ…ハァ…いいから覚えておけ、お前は『可能性』なン…だよ」
二人の剣に血が滴っていった。そして剣は揺らぎ、透き通るように消えていった。
ユーリはその場で膝を折り、穴が空いた身体からドバドバと血が流れ、足元に血だまりが出来る。顔色からは血色が失われ灰色になっていた。もう長くない、助からないのが出血の量、身体を貫通していたことからわかった。
「ユーリ!!!」
月無は叫びながらユーリを支える。恵那は呆然と立ちすくんでいた。彼がなぜ間に入ったのか理解ができていなかった、ここにいる誰もがなぜ彼がそこに割り込む必要があるのかわからない。
「い、いいンだよ、これで…。いいか、よ…よく聞け…二人ともさい…ごの言葉だ。ちゃ、ちゃんと聞けよ…ゴホッゴホッ」
彼の目はすでに光を失い、何も見えていない。ただ、笑顔で最後の言葉を紡ごうとしているだけだ。周りは静寂に包まれ、二人は彼の言葉を待っていた。
「お前が見ていたのはそいつの予知夢じゃな…い…半身の体験だ…思い出せ、見た後にお前自身得た、ち、力を…おま、お前もか、感じたはァ…はぁ…はずだ。自分が得たちか、ちからをこ、こいつから感じたのを…」
「こ、ころ、しあってはな、ならない…絶対に相打ちになる。俺のきず、ぐち…から考え、か、感じるンだ」
『これで俺は終われる。やっと終われる。ああ、やっと死ねる。やっと開放される。やっとだ…』
『ミナさん…すまねぇな、俺の目的は死ぬ事だ。ずっと死にたかったんだ。悪いな、黙っていてな…これしか方法がなかったンだ。さようならだ』
ユーリは言う事言って、死んだ。彼は満足そうだった、私は何も発言出来ず、意識だけはっきりしたまま、彼らを見ているだけだった。ユーリがいきなりその場に現れ、二人に串刺しになり死んだ。
眠兎と私は、ブルーに拘束されたまま何も出来ずに見ているだけだった。彼らを見ていることも彼らは知らない、そしてブルーは自分の思惑、計画が失敗したということに対して指して何も感じていなかった。
ただただ、それを見ているだけだった。何か口にするまでも感情が出ているわけでもなかったように感じた。
恵那と月無、二人はユーリを看取り、何も言葉を紡がずそこにいた。死んだ後、ユーリをそこまで運んだ円形の輪は光となって消えた。
そして、ユーリの胸が光り、紋章のようなものが浮遊した。以前、私に言ったタイムループするきっかけとなったとされる刻印だった。
「向き合えか…恵那…俺はお前自身だ」
「僕は…月無、お前を…お前を…」
恵那は頭ではわかってはいても、感情が受け入れられなかった。今まで自分は彼の分身だったことに悲しみ、怒り、空虚感を本体にぶつけていたのだ。
「ユーリが言っていた、お前が『可能性』だと…俺は捨てたんだ。自分を、自分自身を…俺はお前だ。お前は自分が分身だと思っているが恐らくお前が俺なんだよ…」
月無はユーリの瞼を閉じ、そっとユーリを置き立ち上がる。視線はユーリを見たまま、うっすらと涙を浮かべていた。
「心現せよ、アイアイムズ」
月無は右手を正面につきだし、手の平を地面に向け唱えるとさっきまで使っていた剣が出現する。
「恵那、お前の剣を出せ…」
恵那は月無に言われるまま、左手を正面につきだし、手の平を天に向け唱える。
「心現れる、アイエクス」
2つの剣は同じだった。名称こそ違えど、それは鏡に写ったように同じだった。
「俺の剣は自分自身という名、お前のは自分の可能性という名を称した名…」
「僕らは…」
「元は一つだった、どっちに戻るのか、お前は自分が消えてしまうんじゃないかと思っているだろうが…消えるのは俺だ。俺は『可能性』を捨てた。『限界』なんだよ、俺はな」
月無が自らを『限界』と発した後、アイアムズの剣は揺らぎ粒子となってアイエクスに吸収されていった。月無の身体も揺らぎ、粒子のなりアイエクスの剣に吸い込まれていった。
そこには衣服が残り、恵那がただ立っていた。恵那の剣であるアイエクスは何も変わらず、形成されたままだった。
恵那は剣をとり、それをしっかりを見て、剣を胸にしまい込んだ。そのまま剣は身体に浸透していった。胸元に握られた拳が震えていた。
「見ているんだろう青…お前、お前が…お前がぁぁぁ!!!」
恵那は叫んでいた。ブルー、彼は見ていた、私も見ているように。私は眠兎と一緒に捕えられ、眠兎は意識を失ったまま、私は何も出来ないまま彼らのやり取りを見ていた。
ブルーに捕らわれてから、二人の動向を常に見守るしかできない状態だった。そして、ブルーは今回も黙したままだった、ただ見ているだけだ。
ブルーの目は、ただ興味が無く、ただ経過と結果を見たというそれだけの行為をしているだけに見えた。そこには特に感情の変化はなかった。
「僕には見えている!!!そこにいるのが見えている!!!!青、応えろ!!!!!!」
恵那には私たちが見えているらしく、ブルーを直視していた。
「返せ…眠兎を!!!!なんでこんなことを!!!!」
ブルーはため息をつき、パラパラをページがめくられる本に手を無造作に置いた。すると恵那がいる地面に紋様が現れて、恵那がどこかへと転送された。
「またやり直しか…そうだったな、君を無事に神界に返すと言っていたね。安心してくれ、無事に返すよ」
瞬時に周りが暗くなり、それが転移だと気づいた。
転移された先が異界だとわかった。うっすらと白い床が現れて、シャボン玉がブルーの背後にあらわれていた。
彼の心境が映し出されているのか、落胆している時の映像が映し出されていた。嘆き泣き、叫び狂い、悲痛な思いが溢れ出ていた。
しかし、当の本人の表情は死んでいるかのように無表情であり、冷め切っていた。
「ここからの方が君を返す時に邪魔が入らないと思ってね。まさかナンバーズの一人が彼の知り合いだったとはな」
彼がナンバーズという単語を口走った時にさっきまでシャボン玉に映っていた映像が切り替わり奇妙な紋様になった。
その中で眠兎の胸にあった紋様と同じものを見つける。紋様の他に数字の10と描かれていたりXと描かれていたりし、紋様が10を示すものだとわかった。
そして、所持している者が表示されていった。眠兎のことはもちろんのこと、ユーリの姿も表示はされたが死んだ為か灰色の表示だった。そして、名前など詳細が表示され、今現在どこにいるかなども表示されていった。
ブルーはそのことに気づいていないのか、私を元の世界に戻す準備をしているようだった。空中に静止された本は変わらずパラパラを終わる事のないページをめくり続けていた。そして十本の指輪は淡い光を放つとめくれていたページが止まり、そこに魔法陣が描かれていた。
「私を元の世界に戻すの?」
彼が今、私にしようとしていることがはたして本当に元の世界に返すことなのか確信が欲しいと思った。すると、シャボン玉に映っていた映像が変化し、彼が行おうとしていることがどういう原理で動き、私自身が元の世界に転送される流れが文字や映像、そして感覚でわかった。
「約束は守る」
ブルーが言った言葉が嘘偽りがないというのが直感的に感じることが出来た。どうやらこの異界は求める情報を、自分が知りたいことを知ることが出来ると感じた。
自分が返される前に、世界を救える方法を異界に問い、そして数分もしないうちに自分に様々な情報がダウンロードされた。それが異界の意思だったのか、私は気がついたら自分の現実の部屋にいた。




