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 彼にとって私の存在というのが大きな支えだった。何度も挫けそうになって自暴自棄になろうとも生きていた。自分がタイムループするすることに嫌気をさして、全てを投げ出した時もあったという…その時に解決の糸口が見つからず彷徨っている時に特殊な武具をこことは違う世界で見つけていた。

『以前、遺跡の残骸だと伝えたものは実は武具だ。これを手に入れる前まではミナさんは恵那と乃陰に自分を打ち明けていた。その時に二人っきりで話す機会があっていろいろ互いに打ち解けることが出来、お互い異世界からここに来たことがわかったンだよ』


 過去、というよりも別の私の話は正直自分であって自分ではない。それでも自分が選択したことや思い描いていることは今の私にはそんなの私じゃないと何か奇妙な感じがあった。


『こういう話をすると決まってミナさんは嫌がっていたっけな…悪気があるわけじゃない、ただ懐かしみたいンだ、そこに自分がいたことをな…


 タイムループのことだって、最初は呪いだと思ったンだ。


 だが、ミナさんに会って、意味がある事だと教えてくれた。そして俺にしか出来ないンだということも実感した。あとな…俺が達成したい目的と一致することもミナさんは教えてくれた。


 今回のループで絶対に終わらせる。毎回そう決めて動いてる、だからこそ…何が起きても驚かないでくれ…ああ、あと最後に俺をユーリのおっさんと呼ぶのはやめてくれよ』


 んげ、私がユーリのおっさんと心の中で呼んでいたことが筒抜けだった。

『まさか、ずっと知ってたってこと?』


『まあ、な…何度ループしていると思ってるンだ』


『あははっ、それもそうね。それでなんでこっちに向かってるの?ループしていたのなら場所くらいわかってるから先回り出来るものじゃないの?』


ブルーが言っていた、ここが最後にふさわしいと言っていた。それとも毎回違うのか?


『先回りが絶対に出来ないようにされているンだ。毎回タイムループをして策を講じても先回りが絶対にできないようになっていた。何度か行こうとしたことがあるが、途中でループしてしまうンだ。世界の意思…かもしれないな…』


 世界の意思、ブルーが世界を人格化した存在なら、その意志を背こうとするものを止めるはず…だから気付かれないようにってことなのかな…でもそれでも何か腑に落ちない。


『今回のループでは、乃陰だ。遺跡のパーツの護衛して納品する為に首都に向かう話は覚えてるな?乃陰が護衛になっているンだが、納品後に依頼主と関係を持ちたいらしくて俺に接触してきてな…それで遅れている』


 変態武具マニアめ…


『だがな、乃陰はループの中で何度かそっちに向かうのを邪魔してきている。タイミングよくな…それもどれも取り留めもない出来事が多々あったがおかしい。ループ時にミナさんにも相談したことがあったが、しっぽを出すことも無かった。だが、俺の直感が言っている、あいつはおかしい』

 わかってる、あいつは変態武具マニアでゴーグルしてて、おかしな奴だ。


『ところで私が今いる場所って首都よりそんなに離れてない所なの?』

 ギリギリになりそうと言っていたので、そんなに離れてないと思ったが、まさかまた数日とか数週間とかここでボーッとしてるとかはさすがに辛い…


『かなり離れている。だが、俺の武具ではすぐだ…3時間くらいで着く』

 ユーリのおっ…ユーリも武具を持っていたのか…移動特化系なのか


『先に言っておくが移動特化系じゃない、攻撃特化を無理やり移動に応用している。この案を教えてくれたのはミナさんだ』

『えっ?私?!』

 攻撃を無理やり移動に応用…?どういう形状の武具なのか想像つかなかった。


『本来、俺の武具は長刀だ。最初に見せた折れた刀は違うぞ、遺跡の残骸と言った円形のが武具だ。だが、元は長刀だった、ミナさんの発想が円形に変化させたンだ。ここまで言えば、察するだろう?』

 円形、まさか…一輪バイク!?いや、でもアレは相当バランス感覚ないと事故るし、しかも道がでこぼこの中でサスペンションが意味をなさないあの一輪は自殺行為じゃないのか?

『え、大丈夫なの?』


『慣れるまで、というよりも既存のように走っているわけではなく、滑りながら移動してンだ。それを教えてくれたのはミナさんだしな…俺もコツとか考え方を教えてもらったンだがよく理解してないンだよ』

 私が教えた…うーん、現実の知識を入れ込んだってことだろうなんだけど、現物見ないとよくわかならない。


『あと聞きたいのだけど、アルファとオメガはどうなったか知ってる?』

 どうやって来るかはわかったけれども、他にも気になった事があった。あの謎の二人だ…月無との関係がわからない。


『あの二人は、ブルーの戦闘実験体だと思われる。月無が面倒を見ていて、あの二人は月無と一緒に旅をすることで世界をもっと見たいと思うようになって別れる。どこに向かうのか何を目的としているのか調査したことがあったが怪しい行動が全くなかった。彼らもブルーの被害者だったことくらいしかわからない』

 戦闘実験体という言葉が引っかかった。

『その戦闘実験体って何?』


『恵那と月無が二つに分かれた後、月無は奇妙な夢を見るようになった。それは恵那の出来事を追体験のことだ、それに悩まされながら各地の遺跡を巡っていたンだ。その遺跡の中で見つけられたのがあの二人だ。俺もその遺跡を確かめに行って、タイミング悪くブルーがいてループして、時間をズラして調査してわかった。あの二人は失敗作らしい…放置された後に月無が発見して保護したってわけだ』

 それであの強さと苛立つ性格だったわけか…

『ふぅん、そうだったの…』


『あっ、そうそう…俺は月無とは同じ仲間だったンだ』

 えっ…


『それ聞いてない、どういうこと?』

『昔、一緒のパーティだった。ああ、もちろんレンツや那美ともな…フォーマンセルで世界を旅していた。この世界じゃなくて他の世界でな…月無は昔はあンなじゃなかったんだ、それこそ今の恵那のような性格だった。


世界の敵、あいつらによって大きく変わった。レンツも那美もな…まあ、俺もだが…


過去の話はこのへんにしておこう、もうそろそろそっちに恵那と月無が転送されるはずだ』


 世界の敵、この世界に初めて来た時に襲ってきた奴ら…あのクソ外道畜生共か…ふと、自分の中にどす黒い感情が湧き上がっていた。暴力や力を持った者による理不尽な行動が自分は世の中の摂理、自然の摂理だと知っていても心ではどうにも苛立ちや制裁を与えたいと思っていた。

 きっとユーリや月無、レンツ、那美もそういう思いをしたことがあって今があるのかなと思った。彼らの事はよくわからない、ユーリのことも深く知っているわけじゃない。今の今まで流されてこの場所にいるだけだ。


『ユーリさん、ありがとう』

 自然と出てきた言葉だった。


『まだ礼を言うのは早いぜ。それじゃあ、またな』

 そして通信は終わった。


 私はブルーの方を見る、彼は変わらずそこにいた。何かを思い出しているのか空中に浮遊した本はパラパラとめくられ続けている。ページの端までたどり着かないまま、パラパラと…ループしてるユーリ、終わりと止めたいブルー、どちらも無限に続く檻から抜け出したい思いで動いている。

 自分はただ流されてここにいる。流されないで自分で決めて行動したかった、でも、結局は流されている。その流れの中で抗っていく事が「楽しい」という感情で抗えなくなっていった。


 女性は、その時の感情で動き、決める。精神心理学のカリキュラムで習った事だ、その時に良かったら過去や未来に対して簡素になる。その時に悪かったら過去や未来に対して敏感になる。思考のアルゴリズムの土台が今までの生物進化、文化という環境の中で形成されてると言っていたっけ…


 はぁ…


 ため息をつき、ネガティブになっていることを自覚する。気を取り直してブルーを見ると本から透明なページが抜けて飛び出ていた。ペラペラとめくられ続けてはいるが、物理干渉をせずにその抜け出ているページがうっすらと光っていた。

 最初は1枚だったが、2枚になった。よく見ると星型の紋様が描かれていた。淡い光が濃くなったと思ったら消えた。


 気が付くと、洞窟の下に恵那と月無がそこにいた。二人は距離はある程度離れていて、二人とも何が起きたのかわかっていない状態だった。

 ブルーが今したことが転移魔法だとわかった。これから二人は…殺し合う事になる。ユーリに聞かされた事でわかっていはいるけれど、私は辛かった。そして、思い過ごしでもなんでもなければ、ユーリは二人を止めるために命を掛けるのだというのも気づいていた。


 そこまでして世界を救うのか、救ってもまたブルーが繰り返すだけじゃないのか…そもそも止めても世界の崩壊が起きるんじゃないのか…


 私は空で暇している時に行き着いた考え…いや不安が溢れだし、涙目になっていた。世界の意思、世界を人格化した存在、タイムループ、造られた存在恵那、魂を引き裂かれた存在月無…そして、神界の住人である私。


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