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 暇だ。囚われの姫とか毎日何やってるんだろうと考える暇と余裕を持ちあわせてきた。この時間を有効に活用するにも特に何かできるわけではないので、ぼーっとしているくらいしかない。

 ブルーはずっと恵那と月無を見ている。プライバシーも全く知ったことではない、彼らが起きて、一日を終えて眠るまでずっと見ている。暇なのかと問い詰めたいくらいずっと見ていて、こいつはストーカーだというのがよくわかった。


 それが数日続いた。その数日間、暇すぎて死にそうだったのでブルーに話しかけまくった。しかし、思った反応はなく無為に時間だけが過ぎていった。恵那と月無を見ているのもなんだか慣れない。というか気が引けるものがあった…


 無為に時間が過ごしていく中で気になることがあった。本体、つまりは現実の私は今のこの状況についてだ。今まではログインしていた時は眠兎に入ってる感じだった。眠兎は現在、クリスタルのような結界の中に入れられている。

 今、この状態で起きた時の私ははたしてどういうリアクションをとるのだろう、普通に旅をしていたのに今は囚われれて、別世界に行きブルーの過去を知った。今の私ならわかるがこのゲームをはじめてから、ログイン時間が伸びてきている。アーマーの中に居た時は現実での記憶がやけに曖昧だ。


 今は一眠り1ヶ月から3ヶ月に伸びている…なんだこれ、どうなってるんだ?


 こんなにログイン時間が伸びてしまってるのなら、次に目が覚めた時に全てが終わっていると私は考えた。このまま、ここに囚われたまま起きたら全てが終わってるという事になるんだろうか。

 こっちの世界で数ヶ月経っているが、あっちに戻っている記憶が結構前だ…現実の私はそれを喜んでいる。正直、今の私も結構嬉しかったりもするが無事に帰れるかは別だから素直に喜べないのもある。


「ねぇ、ブルー…いつまでここにいるつもりなの…」


 あまりにも退屈過ぎるのもあり、ブルーがほとんど微動だにしない銅像のようにただ映像を見ているだけだ。映像といってもリアルタイムの監視映像だ、はっきり言って趣味が悪いが…


「チッ、また無視だし…はぁ…」


 相変わらず反応がない。ただ本がパラパラとめくられている。魔道書になるのだろうか、覗きこんだが中に何か書かれているわけではなく白紙だった。本人しか見えない文字でも書かれているのだろうかと思ったりした。


 ふと、月無が写っている映像を見てみる。ゾンビ騒動が終息していっていた、そこにアルファとオメガが写っていた。三人は何か話していた、もちろん声は聞こえないので映像で何を言っているのか推測しなければいけないのだが、どうやらあの二人はそこに残るみたいな感じだった。

 アルファとオメガ…結局あの二人は何者なんだろう、気持ち悪い武具だったなぁ…あの次元を切断する攻撃は反則だった。アルファの方は振動がなんとかって乃陰が言っていたっけ…また会うことがあったら面倒だと感じた。

 それにしてもだ、この二人美男美女だな…


 恵那の方の映像を見ると相変わらず北を目指してる。乃陰がいる首都に向かい合流しようとしてるのか…切羽詰まった表情をしている。余裕が無さが私の胸に突き刺さる、なんとか連絡でもできればと何度思ったか…


 時折、モンスターと遭遇すると叫びながら彼は戦っている。今までの彼はそんな戦い方はしてなかった。自暴自棄と言ってしまえばそれに当てはまってしまう、けれど自棄ではなく、ただ自分の無力さを嘆いていてぶつけていた。


 彼が持つ盾の形や剣もだいぶ雰囲気が変わっていた。


 それから数日経った。月無は南へ向かい、恵那は北へ変わらず目指していた。二人が鉢合わせるのは時間の問題だとはっきりとわかった。


 暇、とは感じなくなっていた。何もしないで自然を感じていた、風がなびいてるわけではないこの空間で雲の流れや星の軌跡、移りゆく太陽と月を眺めていた。眼下の大地では、戦争が起きているのが遠くに見える日もあった。


 世界が終わると言っていたがどうにも信じられなかった。


「ねぇ、ここに閉じ込めておくのいい加減にしてほしいんだけど…」

 何度目になるのか、彼に言う。もちろんまともな反応すら返ってこない。彼にとって私という存在はどうでもいいんだろう。


 何度目になるのかわからない無視にストレスを貯めつつもいつものように瞑想するような感じで浮遊していた。


「あと少しで終わる」


 ブルーが何かつぶやいた。何をつぶやいたのかわからなかった。何かを言ったのは聞こえたが何を言っているのかわからなかった。自分は言葉を忘れてしまったのかと錯覚するくらい久々の他人の声を聞いたからだ。


「え?なんだって?」

 難聴といわれようが何を言ったのかわからなかった。他人と話さない日が続いただけでこんなにも言葉が聞き取れにくくなると思わなかった。いい経験になった。


「もう一度、なんだって?」


 よく聞こえなかったのでもう一度聞くことにした。


「二人の魂がそろそろ限界だ。互いに引き合う前に消滅するだろう、だから二人を引き合わせる」

 二人が限界になるまで待っていたってことなの…なにそれ…


「エンディングにふさわしい場所にするか…」

 瞬時にあたりの景色が変わった。一瞬、何が起きたかなんて冷静に理解するのに5秒くらいかかった。それが転移だとしたら何も違和感を感じさせない程の力を持っているのがよくわかった。

 まるで息をするように行う、それがブルーが持つ力なんだろう…そりゃあ、この世界を人格化した存在ならば、そういった神がかった力を持っていても不思議ではない。


 転移した先はクリスタルの結晶が多く突出してる場所だった。洞窟…と言える場所なのか周りは岩とクリスタルに囲まれ、岩には藻がまとわりついていた。岩の隙間から水が流れ出ており、よく見ると泉があった。その周りには草木が生えていた、自然の隠れ家といっても過言じゃないなと思った。天井は一部分開いており、空が見えるが結構な高さだった。


「ここはどこなの?」


 私はブルーに聞いてみる。答えは期待していないが、さっき喋ったのでもしかしたらと喋ってくれると思ったからだ。


「ここ、つまりはこの座標はいつも世界が終わった後に必ず目覚める場所…遠い、遠い昔の思い出の場所でもある。最後を飾るのはいつもここと決めている、今度こそ…エンディングの始まりだ」


 ブルーは眠兎が入ったクリスタルを洞窟内を一望できる展望席みたいな場所に置いた。私はクリスタルからそんなに離れられないので展望席みたいなそれなりの高さがあるところにいる。

 一応、浮遊はしているが今までお空の上にいたので地面があるとなんか安心し、適当に腰掛けることにした。


「それでここで何するの?」

 私はジト目でブルーを見る。彼は私を見ようとしていないのは、結局のところ私は付属品みたいなものだろう。もう用済みだが、なぜ私がここにいるのか、その事も考えたが…


 結局は、眠兎の力を引き出すには私が必要だからこの場にいるんだろう。まるでバッテリーだ。


 心地の良い風が頬を撫で、木々と土の匂いが鼻腔をくすぐった。私は当たり前のことに驚いた、今まで結界内にいたのかはるか上空にいたのでそういうのが感じなかった。いくら空の上とはいえ、風は吹いているし、肌寒さがまとわりつくはずだったが今は感じている。

 霊体状態なのかよくわからない状態だったから、そういうのが感じてないと思ったりもしたがやはり結界を貼っていたのかというのが確信した。そして今はその結界を貼られていないということは自由に動けるんじゃないかと思ったりしたが、今がどこにいるのかわからない上、下手に動けない位置にいた。


 この展望席みたいなところ、他に登ってこれる場所もなければ降りれそうな場所もなかった…


 はぁ…これから恵那と月無がここで戦うのがわかってる。そして私がやれた事なんて今まであるのかと疑問に思った。ユーリのおっさんはループを打壊しようとしているが今回も失敗になってしまうのだろうか…


『ミナさん、聞こえるか?』

 ユーリのおっさんの声が聞こえた。それは武具を使った内部通信だったが今の私は武具じゃない…

『え?ユーリさん?』

『青はこの会話を認知は出来ない、今は武具じゃなくて人の姿でいいンだよな?』

 どこからか見ているのか?

『え、ええそうだけど…』

『今、そっちに向かってる。多分、ギリギリになるだろう…先に言っておく、ありがとうと…ミナさんが居たおかげで俺はやり遂げることが出来るンだ』


 私は彼が何を成そうとしているのか、その言葉で察した。そして私はそれを止められないとわかっているからこそ、彼はそう言ったのだろう…

 彼のループの中で私はいったいどういう存在だったのだろうか…見知らぬ他の時間軸の私…今の私は何も知らない。


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