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 彼…ブルーシェント=オスカー・ドロワ・ディアン、カラーズのブルー、青の君―様々な名前があった。


「はじめまして、こんにちは…僕の名前はブルーシェント、ブルーシェント=オスカー・ドロワ・ディアン」

 彼、ブルーシェント=オスカー・ドロワ・ディアンと名乗った。


「私は…咲真未那」

 今は意識だけ、身体もない。クリスタルみたいな中で眠兎と一緒に閉じ込められている。


「僕のことはブルーでいい、最初に言ったとおり君は無事に返す。ちゃんと神界に」

「神界?」

 聞き慣れない単語、神界ってなんだ?


「神界…君たちが済む世界の事だよ。全ての根源、始まりの可能性、神々が住まう世界―いろんな呼び名があるが、神界エデンと呼ばれている…しかし、この状態だと話しづらいな」

 彼はクリスタルに手を向けると今まで私が第三者視点だったのが、主観視点に切り替わった。頭が一瞬だけ混乱したが、身体に重みはなく浮遊しているのがわかった。

 そして素っ裸だった…


「ねぇ、ちょっと…」

 私は見られたくない部分を両手で隠す。彼は無言で手を掲げたまま、ため息をついた。マジ失礼な奴だなこいつ

 すると私が現実で着ていた服が形成された。


 最初からそうしろし!


 私の思いが通じたのか、少し目元がぴくりと動いた。やっぱりちゃんと自分の身体があるっていうのは調子が出る。とはいえ…実体かどうかとなると実体ではないだろうと思う。だって浮遊してるし…霊体みたいなものかな…


「それでブルーはどうしようというの?」

 無表情のブルーの顔は変わらず、私の質問に対して何喰わず、聞いていたのかさえ反応がなかった。


「・・・」

 流れる沈黙…


「そんなことを聞いてどうする?悪意が溢れ、そんなことを知る前に終わる事になっているものが溢れているこの世界に…」


 ブルーは両手を抱え込むように掲げ、指環が薄く光る。

「発動公作、創始記述、星の記憶よ…発術環スターメモリーに応え…現処よ」

 手と手の間に淡い光が放たれ、本が現れた。


「全てへの道、なぞられる導き、求める者たちの答え…禁呪本コスモメモリーをここへ」

 本は開かれ、パラパラとページがめくられていく、ページの端にたどり着くことなくずっとめくられていた。


「何をしてるの?」

 前回、彼は何も言わずに出現させていた。だが今回はなにか唱えていた…スターメモリーとコスモメモリー…星の記憶と宇宙の記憶という意味だ。でもなぜ…日本語と英語なの?


「ねぇ、なんでその指環と本の名前が日本語と英語なの?」

 どうせ答えてくれないだろうと思ったが、反応があった。


「ふむ…やはり特別なのか、これの名前を聞き取れることが出来るのは所有者に認められた者だけ、それも自分が知ってる言語で一番近い単語でだ。神界の人はやはり特別なんだろうな…」


彼が特別という言葉を使う時、一瞬だが目元が厳しくなっていた。


「外界への門、彼岸の故郷への道はそこに…」

 ブルーと私の周りを幾何学的な紋様と文字が渦巻く、巨大な球体に包まれた。そして球体の外面から内面の私達にかけて光の線がほとばしる。

 眩しさに眼がやられると思ったが、今の体質はそんなに眩しいと感じなかった。気がつけば下には地面、いや大地が広がっており空…しかもかなりの高度に浮遊していた。


「ひぃっ」

 思わず、あまりの高さに驚いてしまった。高度何メートルなのかわからなかったが、見慣れた風景が広がっているのがわかった。世界の縮図を使って見た景色がそこにあった。

「こ、ここはソーディアー上空?!」


 自分の周りには風がなかった。結界のようなものが貼られているのかブルーの髪もなびくことなかった。温度は特に寒くもなく暑くもないが、不思議な感じがした。

 リビングアーマーだった時とくらべて、五感にいろいろなものが訴えられているような感じがした。前の私だったら、こんな体験したら「楽しい」というのが湧き上がってそれで他のことはどうでもいいような風になっていた。

 今、冷静に自分を向き合えているのがブルーという何万回も繰り返した存在が目の前にいるからだろう。あと魔法だよね…どう考えても魔法だよね?


「お前、よくここがソーディアー上空だとわかったな」

「だってあそこに壁があるしね、それよりこれからどうするのよ?全てが終わったら私を無事に返すとか言っていたけれど信じられないんだけど…」

 少しはこいつ喋れるんじゃないかなと思っていた。対峙した時は怖かったけれども、今はブルーという存在がどういう存在なのかなんとなくわかったことで怖さというのは軽減していた。


 青い黒い髪にケモミミ、ふさふさなしっぽ、獣のような鋭い眼光を持つけれど…なんかどこかで見たことがあるような気がする。世界を人格化した存在だからなのか、どこにでもいるような感覚にさせるのか、そのどこかが思い出せなかった。


「自動ログアウトされる、心配はいらない」

 最低限の会話すらしたくないのか、会話はそこで終了した。私もこれ以上、会話しようにも雰囲気的に何も聞けなくなっていた。


 ブルーは宙に浮いているページがめくられ続けている本に指先で軽く降った。するとさっきまでいた異界のように長方形の紙片みたいなものが現れた。いや、これは3D実体ディスプレイに映像が映しだされていた。


 そこには恵那と月無の姿が映し出されていた。


 私は思わず叫びそうになった、隣には乃陰はいなく一人で北を目指していたのがわかった。目つきは最後にこいつに打ちのめされた時と変わって鋭く、悲しみに満ちていた。自分の無力さに憤りを覚え、何もできなかった事に対して怒り、それでも歩みを止めるにも止められない感情が渦巻いているようだった。

 きっとどこに矛先を向ければいいのか、自分という存在そのものに不安を感じてる中で恵那は必死に歩んでいるように見えた。


 見えたのだけれども、なんか荒み具合がやばい。無事を伝えたいにも、このブルーってやつはそれをよしとしないのがわかる。ユーリのおっさんの話からすると恵那と月無は互いに殺し合わせるつもりだ。


 そういえば月無も映しだされてるんだった…


 月無の方を見ると見たことの無い街でゾンビと戦っていた。街にゾンビとか…完全にこの世界だと感染拡大して世界が終わるんじゃないかなと思った。でも待てよ…この世界、人口が密集しまくってるわけじゃないから大丈夫なのか?

 おっと脱線してしまった…月無の位置がわからないとなるといつ恵那と出会うのかわからない。


 2人がまた出会い、戦うとなった時に私は何ができるんだ?


 今はブルーに囚われの身だし、武具であるアーマーの機能は使えるのか?

 暇だしちょっと試してみよ。

 

 しかし、意識を向けるがアーマーは何も反応しなかった。まあ、そうですよねー


 さぁて、今出来ることは…とフラフラしながらブルーから離れようとしてみるが一定距離に壁のようなものがあり離れられなかった。


 アーマーの中に戻ろうとしてみたがクリスタルに入れず、何もできずの状態だった。


 勇気を出して、ブルーのしっぽをモフモフでもしのうかと脳裏によぎったがさすがに止めた。ぶっ殺されることはないと思うが一応この世界の神だし、今やったらきっとキレる気がする。


 その前にあまりにも暇で私はキレそうだけど…


 そこでふと自分がアーマーだった時とくらべて時間間隔や行動に対する欲求が変わったというか元に戻ったといった方が正しいのか以前のようにボーッとできなくなっていた。

 リビングアーマー時は外への好奇心や感覚が今とまるで違う、まるで制限されていたのだがわかった。そして、今はその制限がなくなって開放感あふれるというか、今までなんで感じなかったんだろうということが感じ取れていた。


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