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28-

 眠兎の震えが止まり、怯えもなくなる。さっきまで冷え切っていた身体が温まっていき、フルフェイスヘルメット内の表情はさっきとは変わっていた。

 久々にバーサーカーモードにしたこともあり、以前やった時は自分が眠兎だった時だった。しかし、今回はリビングアーマーとしてだったのか、意識は前回と違って飲まれているような感じはしなかった。ただ、身体が引っ張られているような感触がざわりと全身に感じた。まるで内側から外側に出て行くのと引っ張っていた。


 なに、この感じ!?全身が引っ張らせて気持ち悪い…っ


「へぇ…抗うか」

 巨大な狼が言葉を発した。私に向けられたものか、恵那と眠兎に向けれたものなのか定かではなかった。そんな余裕すらなかった、ただここで気を抜いたらヤバイとしか思えなかった。


 眠兎のアーマーはすでに重装状態からバーサーカー状態に変異していた。目の部分はより禍々しく尖っており、肩や胸、胴、腰、脚などより凶悪な装備へと変質していた。鈍いくすんだ白色のアーマーに赤黒い線が走っており、血管のようにグラデーションがかかっていた。

 ビーム刃は色が変わっていた、今までは赤を基調としたっような桜色だったが今は白を基調とした桜色だった。より高火力になり、ビーム刃の周りは空間が歪んでいた…何の精霊の力を部分的に召喚しているのか私にはわからなかったが末恐ろしい力だというのは感じ取れた。これはとんだチート能力なんじゃないか…


 もし眠兎自身が召喚の能力を理解し、どのような精霊やら召喚する対象や力やルールなどを理解したらと思うとゾッとした。自分自身が今、召喚を使うとなると今までのゲーム、ファンタジーの知識を使い検証すると思う。ただ、反動などを恐れて検証方法は臆病なほどに慎重になると思う。なにせMPのゲージや何が代償なのかさえわからないのだから…


「貫けェェェ!!!」

 眠兎が咆哮すると同時に恵那の横から今までにない速さで突きを放った。バーサーカーモードということもあり、さっきまで立っていた位置からにゅるりと分身したかのような残像を引きずっているものが見えた。

 また驚くべきことに突きそのものが5段突きだった。綺麗に5つ星形を象るような形で打ち込まれていた。ほぼ同時に超速で突かれたビーム刃はそのまま刃が伸び巨大な狼を捕えていた。そう、捕えて間違いなく当たっていた。


 しかし、渾身の一撃だとしても無情にもその体毛が全てを流していた。


 眠兎は一瞬驚愕するも、そのまま突っ込む。引いてはダメだと直感が告げたのだろう、伸びた刃を縮ませ、短くもより高密度化させた形状に変化させた。それは短刀が棒の先についているオーソドックスな槍だった。だが、高密度に圧縮された何かの精霊の力は、空間そのもの歪むどころか刃の周りを黒くさせていた。


「み、眠兎?」

 恵那は彼女の纏っている武具、つまりは私そのものも異様な雰囲気を戸惑っていた。

「恵那、倒すわよ…」

 眠兎は引いていない、彼女から逃げたい、怖い、嫌だという感情が流れこんできた。バーサーカーモードの戦闘昂揚状態で恐怖を抑制する機能があっても、根底にある生存本能が警告していた。それでも立ち向かわないといけない、と言い聞かせていたの感じた。

「あ、ああ!」

 恵那も自身を鼓舞し、剣を構える。普段は片手持ちに盾を右手に装備しているが剣を両手で構えていた。その切っ先は震えていたが、剣を見る限り心はまだ折れてはいなかった。私も足掻いても結果は変わらないと言われ、諦めていた。結果が知っていても今回は違うかもしれない私はそれを信じたい。


 巨大な狼が踏み出した前足を上げ、地面に置いた。たったそれだけの動作、どんな行動も警戒し即座に動けるようにしていたが反応できなかった。動作に隙がなかったとかそういうものじゃなく、ただその動作そのものが意識できなかった。

 普段生活している中で道を歩いてる中で小石や小さい虫の存在を気にするだろうか、気にしない。そんな感覚だった、何かあったという意識だけを感じた。これが世界そのものなんだと気づいた時には、地中からクリスタル状の突起がはえていて、恵那は盾を召喚しガードしたのか目立った外傷はなく地面に転がっていた。

 眠兎は受け流すこともできず、武具のおかげで無傷ではあったが恵那よりも吹き飛ばされ受け身もとれず転がっていた。身体には深刻なダメージではなく、パーティクルアーマーも生成が間に合わなく、強い衝撃だけが彼女を揺さぶった形になった。


 私がリビングアーマーのため、脳が揺さぶられたり、衝撃で視界がぼやけるといったことはなく何が起きたのかわかった。わかったけれど、何もできなかった。一瞬の出来事ではなかった、ちゃんと前動作もあった、あったのにも関わらず、どこにでもあるいつもの風景にしか見えてなかった。


「クソッ…なんだよ今の…」

 眠兎はよろめきながら立ち上がった。私は反応できなかったことを眠兎に告げ、謝る。

「眠兎、済まない反応できなかった」

「わかってる、今の感じ…なんなの」

 憎々しげに身体が動かなかった違和感がわからず武具を構えるが先ほどの出していた刃は出ていなかった。

「えっ…なんで?!」

 私は瞬時に眠兎のステータス状況を確認した。武具を通して彼女のバイタルチェックなど可能なのでさっきの攻撃時に何かあったのかと思い見たら…特に異常値が見当たらなかった。しかし私自身が眠兎を補助する機能の多くが動作不良を示していた。

(眠兎、さっきの攻撃で身体強化や補助機能などが使えなくなったわ)

 私は通信を使い、現状を伝える。わざわざ声に出して伝えるなど、巨大の狼に情報を与えるものだしね。

『わかった、ありがとう』

「チッ」

 眠兎は舌打ちをし、ビーム刃が出ていないただの棒を構える。私自身も他に何か動作不良が起きていないか調べるとアーマー機能がすべて使えなくなっていることを知る。辛うじて今のバーサーカーモード用のアーマーだけは機能しており、身体強化面は損なわれていなかった。


 恵那は先程の攻撃からすでに立ち上がり、一撃を巨大な狼に入れようと戦っていた。しかし、一度もその攻撃は届かず、巨大な狼も微動もしていなかった。何かに阻まれているようではなく、恵那の攻撃そのものが空を斬っていた。全く見当違いにただ巨大な狼の前で素振りをしているだけだった。なにをしてるんだ?


「くそっ!くそぉおおおお!!!!!」

 恵那は何度も何度も振り続けていた。そしてそれは決して当たらなかった。眠兎はそれを見て疑問に思い、同じく刃の無い棒で真横に回りこみ突くが…恵那と同じように空を突いただけだった。もう一度、体重をかけ、一歩前に踏み込み突きを放っても結果は変わらなかった。

「なに、これ・・・」

 眠兎は刃のない棒を捨て、拳で殴ろうとするも空を殴るだけだった。地面には踏み込んだ際の後はあるが、眠兎の位置が先に動いていなかった。


 ゆっくりと巨大な狼は眠兎の方を向き、不思議な色をした青色の眼が眠兎を捉えていた。私自身も眼があるわけではない、リビングアーマーなのだから視覚というものが第三者視点で見ている。その私も目が合ったと感じたのだ、恐らく眠兎もフルフェイスのヘルメットで目が合ったと感じたと思う。

 そう、目が合った。たったそれだけのことだった、眠兎と私は力が抜けたのだ。その場で膝を付き、呆然となった。恐慌状態なら叫んだり、暴れたり、逃亡したりするだろうがそんな事すら選択すら出来ない。

 ああ、クソ…なんだこれ身体が動かない…


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