27-
プレーンバレイに戻り、宿の個室で早速、世界の縮図の縮図を起動させた。前回は自分の位置がバレたこともあったけれども、今回はそんな事があったとしても対処できる。なので心配なく、使用することにし、乃陰とユーリのおっさんの位置を探ることにした。
数十分程度でどこにいるか見つけることが出来た。そして、私はユーリのおっさんに連絡を入れてみた。
(もしもし、元気―?)
『お、どうやらそっちの用事は終わったってことだな…こっちは順調だ。数日中には首都には着く』
(私たちもそっちに向かうけれど、時間かかりそう…)
『そうか…あとは俺が上手くやれるかにかかってくる。すまない』
ユーリのおっさんの様子がおかしかった。
(な、何を言ってるの?)
私は何かおかしいと感じた。
『これから恵那と眠兎はこっちに向かう途中で青に襲撃されンだ。その時、眠兎はさらわれる。今まで様々な対処法を試したがダメだった、そしてその後…恵那は一人になり乃陰と合流しようと北を目指すが途中で月無と戦闘になりそこで終わる』
これから起きる事がわかるなら、それを知っていれば…そういう甘いものじゃないくらい回数を重ね、これがベストな選択だと言う自信が感じられた。この立て続けで恵那は大丈夫だろうか…こんな急に他に何か出来たのではないかと思った。
『他に何か出来たんじゃないかと思うかもしれない、そんな時に最初に全てを明かして打開していこう、一緒に悩み、行動し、常に前向きで俺を励まし支えてくれありがとう。今度は大丈夫だ、間違わない』
ユーリのおっさんが言っている事は彼は直前で間違いを犯し、それが原因でダメになった。そして上手く行く確信があると感じ取れた…
(全て上手く行くの?)
『大丈夫だ、今度はしくじらない。ミナさん、前に言った事を覚えているか?』
なんだっけ…決断とか覚悟とかそういうことだったっけ…
『覚えてないかもしれないが、いつか必ず決断する時が来るからそン時までにどうしたいのか決めておく事だ。みたいな事だ』
ああ、そうだった…自分がどうしたのか、最初この世界に来た時からずっと流され感情に任せていた。リビングアーマーになってからも無為にドキュメンタリーを見ているような感覚で眠兎についていっているだけだった。
行動といえる行動なんて全然していない、目的も楽しければそれでいいというものだった。私はどうしたいのかどこへ向かいたいのか、何も無かったんだ。
(私は―)
きっとこのやりとりもユーリのおっさんは知ってるのだろう。私が今なにも持っていないことを知っている。知っていても聞いてくるってことは大事なことなんだろう。
『俺がこれをミナさんに聞くのは…今までそう聞くように言われてきた。俺がここまでこれたのはミナさんのおかげだからな。きっとその答え今は無いンだろう、これが終わった後に気づくンかもしれねぇし、どのタイミングなのかは俺も知らない。だが、問い続けろって言っていたからな』
違う私が言っていた言葉…今の自分がどうしたいのか、どうしたいんだ?世界を救いたい?恵那と眠兎の恋路を上手くいってもらいたい?眠兎に記憶を戻ってもらいたい?
周りを見るようになってこの世界の情景をもっとちゃんと見るようになって、いいなと感じたけれど、どうしたいのだろう。
『じゃあ、近いうちに青は接触してくる。いつまでかわからねぇが…ミナさん、どうしたいのか早く見つかるといいな。それじゃあな』
私は自分の身体がリビングアーマーとなり、現実の私は普通に生活している。現実の私は眠兎になってるつもりでプレイしている。別の意識の私だけはここに閉じ込められている。私は自分を動かすことができない、どうしたいも何も…眠兎が行く所を見ることしかできない。世界の縮図を使えば世界中どこにでも行ったつもりにはなれる、暇な時はやったことがあるけれど飽きるし、眠兎が寝ている時じゃないと出来ない。
引きこもっているにも等しい自分はどうしたいんだ…
答えが出ないまま、私は青に襲撃されるまで無為に過ごしていた。自問自答しても答えが出てこなかった。知らない事が多すぎたのだと思う、青がいったい何者でユーリのおっさんがどういう存在だったとか、恵那と月無の事ととかも…
この世界のことも何も知らないまま、振り回されているだけだった事に気づくのは、眠兎と私は青の手に渡った後のことだった。
「な、なんだアレは…」
突然、前の前に巨大な狼が現れた。初めてこの世界に来た時に見た狼だった、こいつがやっぱり青だったのかとわかった。
プレーンバレイから北に向かい、山越えをせず山途切れる谷があり、丁度その谷で出くわしたのだ。常に霧に包まれてはいるが、モンスターなどは出現しない特別な地と言われる場所だったが、霧のため馬車などは使えず徒歩だった。
恵那は剣と盾を召喚し構え、眠兎を守る形で陣形をとる。その間に眠兎は武具を構え、ビーム刃を槍の形状にした。
「こいつ知ってる…夢に出てきた狼だ」
眠兎はハッと油断した。私は油断してなかった、油断していなかったのに関わらずそこにいた巨大な狼が消えた。恵那は周りにタワーシールドを組み合わせて密集隊形型のドームを形成したと同時にそれが吹き飛んだ。
「くっ…なんだ今の」
恵那は片膝をついていた、衝撃波で眠兎も怯んでいた。
「クソッ、いきなり?!」
二人は互いを背にし、消えた巨大の狼がどこから現れるのか警戒した。レーダーマップにも表示されず、どこから現れるのかさえわからなかった。どう足掻いても、絶対に捕まると言っていた理由がひしひしと感じた。私は二人にどこにいるのかわからないことを伝えた。
「気をつけて、どこにいるかわからない」
巨大な狼の気配も感じられず、周りからも音もなかった。さっきまでいたのは幻だったと思えるくらい静けさがあった。何もなかったと言われれば信じしてしまいそうだった。静けさの中、恵那は再度ドーム上にタワーシールドを召喚する。二人がすっぽりと入るように結界が生成された。
だが、またしてもタワーシールドで出来たドームは吹き飛ぶ、二人の側面から強い衝撃とともに盾は粉々に粒子となって消えていった。
「全方位に展開していたのに、全部同時に…」
恵那の表情が曇っていく、知覚も出来ず何が起きているか私もわからなかった。
「なにが起きてるんだ?」
クソが…足掻くにも足掻け無い、何も出来ない事を自覚しろってことなのか…戦う事もなく終わるのか?
綺麗に盾だけが消えた後、恵那はもう一度盾を召喚しようとしたが目の前に巨大な狼が音もなく現れた。その巨大な狼の瞳は青色、じぃーとこちらを見ていた。身体、私には武具の身体だが、髪の先、爪の先までまるで鷲掴みされ何もできない感覚に襲われた。まるで自分が自分じゃないものになったような感じだった。
恵那は辛うじて震え、息を荒くし、剣を構えようとしていた。眠兎は、固まったままだった、ビーム刃も消えガタガタと震えみっともなくその場で尻もちをついていた。私はわかっていなかった、世界を人格化した存在…それがどれほどの存在感なのかということに…
その巨大の狼は前足を一歩出した。その一歩がどれほどの時間なのかさえわからなかった。だが、一歩踏み出すその時に恵那は声を上げていた。
「逃げろ、眠兎!」
その言葉が発した瞬間、眠兎はハッとし意思を取り戻した感じがした。
『ミナ、や・・・やるよ・・・』
(わかった)
私は結果がわかっている、でも目の前の畏怖に立ち向かわないとダメだと自分に言い聞かせた。きっと大丈夫、絶対大丈夫、大丈夫ったら大丈夫だ!!!!!
バーサーカーモード発動!!!!!




