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二人は両思いということがわかったが、特にその後に何かあったわけでもなく微妙な気まずい雰囲気があったりはしたが、いい感じになっていった。翌朝、RIO傭兵団のキャンプ場がある平原に向かった。
プレーンバレイからも見える位置にキャンプ場を設置してるので、迷うこともなく到着することが出来るのがわかったが、かなりの規模の人数がいるのが遠目でもわかった。
これ…もう一つの町といってもいいくらいの規模じゃん…どんだけでかい組織を運営してるんだ、あのレンツという奴は…
「前見た時とくらべて、かなり大きくなってない?」
眠兎は少し不安気に言う。確かに私も見る限り、そう思った。
「いくつもの部隊があるって聞いたよ。かなりの大規模でクランとも言われているらしいよ」
クラン、そういえば前に聞いたことがあるな…確か、プレイヤーたちが徒党組んでるやつだ。いい組織作りをしているところもあれば、問題を起こしてるところもあってこの世界に変化をもたらしているんだっけ…
私たちは、RIO傭兵団があるキャンプ場に着いたが団長を務めているレンツを呼び出すわけにもいかず、名前を告げて前のように待つことにした。すると、前回とは違い来ることがわかっていたのかキャンプ場の中を案内され、一際大きなテントに案内された。
「よぉ、久しぶりだな…那美に会いに来たんだろ」
テントの中には、豪華なカーペット、ソファ、テーブル…応接室といっても差し支えなく、調度品なども飾られていた。外と中とは偉い雰囲気が違ってて別空間に転移しましたといっても信じるレベルだ。
「まあ、座りなよ。もう少しで那美も来る」
白髪に黒髪が一部分だけメッシュで入ってて、身長は低く、中学生のガキに見える。以前会った時と違い、フード付きのローブは着込んでいるわけではなく半袖に長ズボンだった。この部屋とは不釣り合いだ…
左腕は途中から義手だった、「鋼の」とか言われてそうだなと思ったりした。前とあまり変わらないが、腰にはビームソードの柄がぶら下がっていた。いつでも抜き、攻撃できるだろうな
恵那と眠兎は言われるがままにソファに座り、テーブル越しに左右色違いの目が恵那と眠兎を交差し、一人いないことに疑問に思った顔をしていた。
「二人って付き合ってるの?」
どうやら乃陰のことではなく、全く別のことだった。
「ちがっ―」
眠兎の顔が赤くなり、動揺する。眠兎はフルフェイスの重装状態ではないため、その表情はレンツに丸わかりとなる。
「あの時のアーマー着込んでいた奴の中身が…まさか女だったとは驚いたよ。まあなんでもいっか」
恵那はギロリと睨み、眠兎をからかっている事に不快感を示していた。
「何か騒がしいわね」
すると那美が奥の方から入ってきた。白い装束、独特な巫女のような服装だった。恵那とは対照的な白髪のような銀髪、月無と同じといった方がしっくりくる。
髪をかきあげ、耳にかけると左耳につけているアクセサリーが目に入る。一つ一つの仕草が何か色っぽく感じた。
「久しぶりね、恵那…月無に会ったそうだけど、何かわかった?」
「月無に会ったのか?そうだよな…僕はいったいなんなんだ?」
那美はため息をつき、恵那の焦っている表情を見ていた。
「ちょっと前に月無がここに来た時に話を聞いて魂を見てみたけれど、よくわかったわ。あなたたち、魂がつながっているわ…それに…」
那美がこちらを見た、多分気づくのがこのタイミングだろうと思った。
「その武具―」
「リビングアーマーのミナです、よろしく」
私が挨拶をした瞬間に、レンツが瞬時に那美の前に移動し、腰からビームソードを抜刀していた。刃はまだ出ていないが、レンツの両目は見開かれ警戒していた。恵那もその動きに応じて盾を召喚し、眠兎を守る体勢に移行していた。
「すみません、驚かせてしまって」
「いや、まさかしゃべる武具とはな…取り憑いているわけじゃないだろうな?」
レンツは警戒を続けていたが―
「そんなわけないでしょ、全く」
眠兎は腕を組み口をへの字にし、不機嫌な顔をした。そんな様子が何がツボだったのか那美がクスクスと笑い、手をレンツの肩において落ち着かせた。
「ふふっ、ごめんなさい。それにしても武具にも魂が宿るのね…聞いたことがあるわ、付喪神みたいなものね」
「話を戻すわね、恵那と月無…二人ともどういう原理かわからないけれど魂がつながっている。そして、つながってる理由は二人の魂を見て確信がいったわ…無理やり一つの魂をわけられている」
恵那は震えていた…怖いのだろう、自分が何者かわからなくなっていく感じなのだろう。
「ぼ、僕は…それじゃあいったい…」
「あなたは…私の弟であって、弟ではない何かなのは変わらないわ。ただ、魂がその身体に捕らえられているわ、魂がひとつに戻りたがっているのかもね」
そうか、これがきっかけでどちらの身体に戻るのか、という流れになるのか…
「どちらかがいなくなれば…」
「それはどうでしょうね、私にはわからないわ…でも少なからずどちらかが潰える事で身体という束縛がなくなり魂は元に戻るでしょうね。それに今の状態は、魂に変調をきたしているのを見えるわ」
魂の変調?聞いたことがない、どういうことだろう?
「このままだと、二人とも魂が自壊して、死ぬ事になると思うわ…」
そうか、これで二人は戦うことになるんだ…生き残るために…
どちらかが逃げて戦わないままだとしても、死ぬことに変わりない。だったら二人は戦うだろう、生存するために命を懸けて戦うだろう。
でも今それを知ってるのは恵那だけのはずだ。すぐに襲ってくることはないとは思ったが月無が今夜夢で今の内容を知ったら変わるだろう。
まさかそこまで青に計算されているのか?
「じゃあ、どちらかが死なないとダメだってことなのか…」
「少なくても、二人が近くにいた状態ではないとダメね。例えば、今私たちがあなたを殺しても解決はしないわ」
那美の発言に恵那は悲しげな顔をするが、彼女は前言撤回するつもりはなかった。
「そんな悲しそうな顔をしないで、あなたが何者であるかさえ私はわからないのだからね。それに弟のクローンだとしても私は特に驚きはしないわ、記憶を入れられて、何の為に動いているのか私にはわからないけれどね」
恵那は聞き慣れない言葉に眉をひそめた。
「クローン?」
那美は開いていた銀眼を閉じ、腕を組みため息をついた。
「弟の模造品、つまりはそっくり造られた人形ということよ。でも意思や思いもある…まあ、人に近い人形ね。悪魔でも可能性だけどね」
恵那の精神は耐え切れない状態だっただろう、あながち間違っていない事だというのが何よりも私が彼にかける言葉が見つからなかった。
「彼が例え造られた存在だったとしても、私にとって彼は彼です」
眠兎が力強く那美に向かって発し、恵那はそれを見ていた。那美は驚き、彼女を見て微笑んだ。
「そう、じゃあ頑張って私の弟を倒せばいいわ」
「おいおい、那美いいのかよ?」
レンツが驚いていた、そりゃそうだ。弟を倒せばいいって…
「あいつが引き起こした問題でしょ、自分のケツくらい自分で拭けって話よ。嫌よ、弟の尻拭いなんて…いい大人なんだし、ね」
こうして私たちは、月無を倒すことが目的となった。恵那自身生き残る為に、眠兎も月無よりも恵那に生きていてもらいたいからだ。でもこのままじゃ、ユーリのおっさんが言うにはダメらしい。
「最後に魂が自壊し始めているけど、このままだとそんなに長くはないわ…それは月無も知っているわ。決着をつけるなら早めにすることね、じゃ」
那美は一方的に言い、テントの奥へと帰っていった。私たちは特に話すこともなかったので、その場を後にすることにした。
「北を目指す前に、月無を探して…探して…倒すのか…」
恵那は帰り道、迷っていた。
「私はあなたに生きてもらいたい、あなたが倒さないなら私が討つ」
眠兎の眼は強く輝いていた、彼女自身記憶喪失の中で恵那や乃陰は自分を支えてくれた人たちだからだ。
「まずは乃陰と合流しないとアルファとオメガ含めて戦うのは不利だと思うのだけど」
私は眠兎が燃えている中で冷静に何をした方がいいのか伝える。
「そうだね、今頃どのあたりにいるんだろう…」
「宿に戻ったら世界の縮図で探せばすぐだよ」
眠兎は前向きにこたえ、歩みを進めた。
「大丈夫、きっとなんとかなるよ」
彼女の根拠がない発言に恵那はきっと救われていたのだと思う。
「ああ、そうだね。とりあえず、戻ろっか」
二人は歩み、町へ向かった。




