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 山の斜面に町が作られていた、東側から攻めてくるにも天然の要塞ともいえる防衛が設置されていた。町そのものは、上に登ることが苦労を強いられる急斜面になっているが、町内で定期の馬車が出ているため下から上に移動する際は町の住民は使っているという。

「下に降りるのは楽だけど、これ登る時大変だね」

 眠兎は町を見渡しながら恵那に言った。

「この町は下から上に登る際に間違った道に入ると行き止まりになってるから、登る時は大通りから登ってくる方がいいよ」

 世界の敵というものが幅を効かせるようになる前から、防衛拠点として作られていたのがわかる作りだった。

「お互い単独行動をせず、一緒に行動するからきっとだいじょうぶでしょ」


 昼前についた二人は宿をとり、着いたその日は休むことにした。もちろん私は眠兎に休むように言ったからだ。それに二人で眠兎がフルフェイスのアーマーを外した状態で話をしてもらいたかったからだ。

 鉱石など採れる土地柄で炭鉱夫や鉱石を細工する職の人もいるため、宝石店やアクセサリー店が豊富だった。また、それ以外にも武具なども取り揃えている店もあった。デートにはいいかもと思ったので眠兎に提案はしておいた。

 その日、眠兎は久々にフルアーマー状態から軽装状態になって素顔の状態で恵那と二人で町を散策することになった。最近、ずっとフルアーマー状態でフルフェイスヘルメットで隠れている事もあって、息苦しさを感じていたのもあるのだろう。何よりも口調を男言葉に変えて話していることが多い。たまには、いや…せめて今だけは女の子に戻ってもいいんじゃないかなって思った。


「いろんな物が売ってるね」

 はしゃぎながら露天と見たり、店を構えている中を散策していた。

「眠兎もこういうの興味あったんだ」

「えっ、普通にあるよ!そりゃ、今の武具は使い勝手がよくて高性能だけど組合せたり出来ないかなって思ったりはするよ」

 違う、そうじゃない。性能の話じゃない、そこは女の子的な返答としろ。

「はははっ、眠兎らしいな」

 ここでは黄金の民の遺産に比べれば性能は落ちるがダメージを軽減したり、相手に自分の位置を知らせるペアリングといったものなどがあった。こうやって店のものを見ていくと、文明技術レベルはそんなに高くなく黄金の民が異常だったのが感じ取れた。


 眠兎と恵那は、はたからみるとデートしているように見えたが会話の中身が冒険する上で、実用性があるかといった色気や雰囲気が全く出るようなものじゃない会話をしていた。それでも二人はこれでいいんじゃないかなって思えてきて不思議だった。男女の関係なんて環境や人が違えばいろいろあるだろうし…


『ミナさん、明日の事なンだが…』

 ユーリのおっさんから絶妙なタイミングでコンタクトが来た。恵那と眠兎がイチャついてるっていえばイチャついてるので正直、意識を他のところにやろうとしていて丁度よかったのだ。彼ら二人はいいアクセがないか話をしたり、先日の戦闘でボロボロになった服の替えと着ているものの、服を新しく買おうといった話をしていたので、普通にデートっぽくなって見ていられなくなったからだ。

(何か問題が起きるんですか?)

『那美がお前を認知することになって、武具に魂が宿っている…と言うだろう。そこで恵那にお前の正体がバレる流れになる』

 那美は魂を見る、そのため前回会った時、私は眠兎自身だった。だから、何も言われなかったがその後、私が武具に宿る事になりリビングアーマーとなった。

(それは面倒な事になりそうね…どうしたらいい?)

 この場合、恵那には先に打ち解けておいた方がいいと思った。乃陰はちょっと武具マニア的なところでキモいから知られたくはない。


『今まで先に恵那に言う、何も言わず場に任せる、といったものがあったンだが…先に眠兎の口から恵那に言った方があとで合流した時、二人がいい雰囲気になっていたぞ』

(よし、先に恵那に言うわ。ありがとう!)


 こうして、私の存在を那美から知られる前に眠兎の口から恵那に伝えられた。話の流れとしては、眠兎が恵那のことを信頼するから話すねという感じにし、乃陰には黙っていてもらうことになった。二人の秘密というやつだ、元よりあいつに知られると私を弄られるだろうしそれは絶対に嫌だ。


 時は夕方、晩ごはんの時刻にさしかかり、眠兎と恵那は宿場付近のご飯屋や酒場の近くにいた。眠兎が個室もあるご飯も食べれる酒場を見つけ、そこで恵那と一緒に食べる事になった。いつも一緒なので、二人っきりだとしても何も違和感がないので眠兎が誘うにしても自然な形だった。

 個室がある酒場や飯屋というのは高い、場合によっては寝泊まりする部屋になる。わざわざ個室を活用するのはお金を持ってるところか、依頼者と直接話す時だったりする。ある程度は防音がされているとはいえ、この部屋は外に音が漏れる作りになっていた。

 まあ、そんなに気にするとことでもないか、と思い眠兎にさっさと私のことを紹介してね、と言った。料理も頼んだものがある程度出てきて、二人でもぐもぐと食べていて、このままだとすぐに終わってしまいそうだと感じたからだ。


「恵那、実は話したいことがあってね…大事な話なんだけど」

「改まってどうした?」

 パンを咀嚼してから返事をする恵那は口に物を入れて話す癖がないから個人的にはいいと思ってる。どうでもいいが

「実は話してないことがあって、この武具…生きてるの」

「え、なんだって?」

 動揺して、難聴になるのはわかる。そういえば、私ってスピーカーモードとか出来たっけな確か…

「こんにちは、こうやって話すのは初めましてになるね。恵那くん」

「ま、マジか…」

 驚愕し、眠兎の胸の部分を凝視していた。まあ、今は軽装状態で胸当てになってるから胸を見るわけだけど。

「黙ってて…ごめんね、ていうかちゃんと喋れたんだ…」

「今、普通に喋れる事に気づいたんだよ。うん」

「まあ、私もわからない事が多いんだけどね…」

 こうして私達は改めて会話することになった。今まで私は聞き専だったこともあり、喋ったりするのは眠兎のみだったからなんだか不思議な感じだ。

「私はミナ、よろしくね。リビングアーマーに名前があるなんて不思議かもしれないけど気軽にミナでいいから、あと乃陰には秘密にしておいてね。知られなくないし…知られるの面倒だし、絶対嫌だし」

「あ、ああ…よろしくミナ、乃陰には秘密にしておくよ。うん」

 ここで私が青の使徒だと思われていることを恵那に伝え、月無が襲ってきたのも自分を殺すためだったことを明かし、起こりうる誤解を解いておくか…と思ったが話をするとユーリのおっさんについても説明しなきゃいけないし…その時になったらにしよう。うん、そうしよう。


「眠兎の記憶についてなんだけど、私もこうやって意思を持ち始めたのは眠兎が戦いはじめてからだから、わからないのよ」

「それじゃあ、一緒に眠兎の記憶を探してるって感じなんだ」

 私は恵那に説明し、一蓮托生だと告げた。

「戦闘時にサポートしてくれるし、ほんと助かるんだ」

「そうは言うけれど、私はあまり何もしてないことが増えてきたよ。眠兎はメキメキ強くなってきてて、びっくりするよ」

 終始和やかな雰囲気で会話が弾み楽しかったが、最後に私は眠兎を女だということを恵那に意識させることにした。


「恵那って眠兎のことどう思ってるの?男として」

 何度も眠兎の窮地を救ったり、親身になって稽古してくれたりしてる。そう考えると結構いけるんじゃないかと思っている。

「ちょ、ちょっと何言って―」

「大事な人だ」

 恵那の眼差しが眠兎に向けられ、眠兎は赤面している。まっすぐ見てきているが眠兎は恥ずかしいのか目がうまく合ったり合わなかったし、キョロキョロしている。

 なんだ、両思いじゃん。

「ならいい、じゃあ私は退散するね」

 私は一方的に黙る事にした。

「ちょっと、ミナ?!」

 あとは二人がどうなるか見てよう。

『ミナァァァァ!!!!』

(よかったね!両思いっぽいじゃん。がんばりなさいよっ)

 

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