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パーティメンバーは多い方がいい、生存率が高まるからだ。通常の冒険者のパーティだと最低でも5人だ。それに比べて自分たちのパーティは3人、私は人数に含めないし、単独で動けるわけじゃないので数には入らない。
今、狼系のモンスターと遭遇し、囲まれている。数は5匹、取り囲み隙を伺っているのがひしひしと肌身に感じる。肌身といってもアーマーだけどね。
モンスターと呼ばれているけれど、実際は人に害をなす者を総じてモンスターと言われている。他の呼び方があるとすれば魔獣、化け物など様々なのだ。これは文化圏の違いや宗教上の理由とか様々だが、面倒なので私はモンスターのひとくくりにしている。
そのモンスター5匹に囲まれ、それぞれ襲われたら各個撃退するというなんともアバウトな作戦になっている。本来、5対3で狼系のモンスターで囲まれたとなると良くて一人生き残れるかどうかという危険度だが、私達はそんな事にはならない。
恵那は優秀な自在に出せる召喚盾をメインにした剣士で主に盾役として相手をひきつけたり行動を阻害したりする。もう一人は内臓系がやられても不思議な気の力で回復できる徒手空拳と暗器を使う乃陰というヒーラー兼アタッカーがいる。
そして、私を装備している眠兎はフルアーマー状態なので狼程度が噛み付いたところで傷がつくわけがない…と思う。それに武器だってちょっと規格外と言われるビーム刃を出す棒を持っているので油断をしなければなんとかなるレベルの冒険者だ。近接アタッカー枠だと思っている。
「狼系って確か食えないよね?」
眠兎が棒にビーム刃を出し、狼に威嚇しながらつぶやく
「眠兎、かの有名な世界の敵と呼ばれる国では犬も食ってるらしいぞ。見た目がちょっと凶暴だが食おうと思えばいけるんじゃないのか?俺は食わないが」
世界の敵と呼ばれる者達が世界に向けて宣戦布告し、さながら魔王に近いような存在だ。
「げっ、私だって食べないわよ。確認よ、確認」
モンスターといえど毛皮や牙など買い取られるため、それ以外の部分…肉、骨など加工品や食材や何かに使われたりする。そのため、討伐する時に出来る限り傷つけないで倒したりすることもある。時には必要な資金を得るために目当てのモンスターを探し、素材目当てで討伐したりもする。
「乃陰!眠兎!ふざけてないで来るよ!!!」
恵那が叫ぶと同時に3匹が飛びかかってきた。残る二匹は眠兎へ向かって大きく口を開き、その牙を腕と足にめがけて挟もうとしていた。
眠兎の意識は飛びかかってきた狼に対してのみに向いていた。あーこれは噛み付かれるなー
この状況に対して、恵那と乃陰はフォローには入らない。
冒険者足る者、少数精鋭なのだからそのぐらい対処しなくちゃいけないのだ。眠兎が狙われたのは他の二人とくらべて力量に差があるからだ。装備はいっちょまえに二人よりはるかにいい。しかし、宝の餅腐れでこのアーマーを使いこなさえていないのだ。
(眠兎、リアクティブアーマー起動して弾いておくよ)
私は対処できないことを想定していたので瞬時に眠兎のフォローをする。二匹の狼が噛み付こうとすると同時にバチィン!と音がし、二匹の狼の口が裂ける。
眠兎はその二匹を視野にも入れず飛びかかってきた狼をビーム刃で下から切り上げ一刀両断する。
恵那と乃陰の方も同じく狼を退けていた。
恵那は召喚しておいた盾を打ち付けて、狼を気絶させていた。乃陰は蹴り上げによるカウンターで狼の首を折っていた。
「なんで私に3匹同時に来るのよ…」
「一番弱いと思われたんだろ」
眠兎と乃陰は仲が悪い。いい意味で
「弱い?乃陰さん、私に襲いかかってきたそこの二匹は口が避けたショックで死んでるけれど同時に3匹倒すことが出来て?」
「まあまあ、二人とも先進もう?遺跡はもう少しだしさ?ね?」
喧嘩の仲裁というか、喧嘩に発展する前にいつも恵那が止めに入る。
「おい、恵那…お前なんで殺ささないんだ?」
乃陰が恵那に対して疑問を持っていた。基本、襲ってきたモンスターに対しては、生かすという行為はしないからだ。
私も気になっていた、基本モンスターは倒すもので、生かすという選択肢はない。なので私も手加減などせず、リアクティブアーマーという特殊カウンター装甲を発動させて倒した。眠兎もビーム刃で一刀両断したのだ。
「一匹くらい残しておいた方が、このへんの生態系に影響ないだろ…あまり狩りすぎると生態系が崩れて本来だったら出没しないエリアに降りてくる可能性あるし…」
「最近、私みたいな記憶喪失の冒険者たちが増えて乱獲してることもあって生態系が崩れてきてるって噂があるものね…恵那はそれを懸念していたのね」
そういえば、大量にプレイヤーが増えて経験値稼ぎというかこの世界で生きていくためにモンスターを狩って生活するからか…
冒険者ギルドの方も治安がよくなるからって依頼を出しているけれど、実際問題…そのうち生態系崩れたりして変わってしまっていくだろうな…
「恵那、お前そんなこと考えていたのか…まあ、眠兎みたいな記憶喪失者のおかしな冒険者が積極的にモンスター退治してるかどうか遺跡に行けばわかるだろう」
「ちょっとおかしなってどういうこと?あんたも充分おかしな冒険者でしょ?ゴーグルつけて、黄色の服とかちょっと趣味おかしいんじゃないの?」
乃陰の服装は盲目なので常に眼を隠している。ゴーグルをしておいて目の部分を守っているのだ。服は眠兎が言ったとおり黄色を基調とした左右非対称のだらりとした服を着ている。
「はっ、誰も眠兎のことをおかしな冒険者って言っていないのに…まさか自分がおかしな冒険者だと思っていたとは予想外だな」
「なんだとコラァ?」
「ちょ、ちょっと二人ともストップストップ!!!いい加減にしようよ、血の臭いに惹かれて他のモンスターが来る前にここを離れるのが先だよ」
気絶させた狼一匹ははたしてそのまま置いていくのだろうけれど、他のモンスターの餌食に…いや外傷がない分、中身をぶちまけられてる方が先に喰われるかな
私達、いや眠兎と乃陰は言い争いながら恵那と一緒に遺跡に向かった。二人は言い争ってはいるが乃陰は周囲の気配を感じているので眠兎も辞めないし、恵那も止めない。
『ミナ、さっきのリアクティブアーマーありがと、助かったわ』
(いいってことよ~、さぁてこれから行く遺跡に手がかりあるかな~)
『あって欲しいな~』




