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青、とはいったい何なのか?神と言っていたが神とは何か?
(ユーリさん、青ってなんなの?神というけれど…)
神という存在は宗教などの信仰上から形成される存在、万有顕現を創造した存在、概念的存在などといったものなどを指すが…ユーリのおっさんが言っている神はなんだ?そもそも「青」という名称が気になる。
青というのだから、赤とか緑とかもいるのだろうか、それとも青というのは名前がわからない、呼んではいけないといった理由で青なのだろうか?
『この世界そのものを人格化した存在、外見は狼だったり人型だったりするが獣人族であることが多い』
狼…あの夢の中であったことがあるぞ…
『この世界に来た時にあったことがあるはずだ、そいつで間違いない。青、という名称は名前がわからない、そもそも名前などあるのかさえわからないンでな。呼称として青と呼んでいる。人型の時は青年で…性別は男なのは確定している』
あの狼は男…いやオスになるのか
『俺がそいつにはじめて会った時は、何も感じられなかった。圧倒的な存在感など何もなく、そこにいるのに周り全てがそいつのような不思議な感覚だった』
(それでそいつがなんだっていうの?その神様とやらが私をこの世界にとどめている意味はなんなの?)
『眠兎が特別な能力を持っていること、それを覚醒させるためにミナさんが必要なンだよ』
(要領を得ない…何回ループしてるのかわからないけれど、わかりやすく言って)
こいつ説明がクソ下手なのか、それとも言えないのかもっとわかりやすく言って欲しい。
『毎回、同じこと言われるンだが…これでもわかりやすく言ってるつもりなンだがな…悪いな』
私自身、整理して彼に直接質問していかないとキツイのかなとストレスが溜まってきた。少し落ち着くためにあたりを見渡すと、眠兎や恵那と乃陰は談話しており、外ものどかなものだった。
のどかじゃないのは私達だけで休憩ポイントまではまだまだ先になりそうなので事前にどういう状況に自分がいて、取り巻く環境を出来るだけ把握しておきたかった。その上でこれから何が起きるのか事前に知っておきたい。
私が青の使徒と呼ばれるのはテスターであるから、その青というのはこの世界を人格化した神そのものである。その神が招き入れた存在だから使徒と呼ばれているのだけれども、他のプレイヤーはどうなのだろうか?そのあたりの区別がないのかあるのかわからない。
(青の使徒と呼ばれたけれど、他のプレイヤーとの区別は何かあるの?遺跡から起きてきた記憶喪失者たちもプレイヤーなんだけど?)
私はユーリのおっさんに疑問をそのままぶつける。
『青の使徒というのは、特別な刻印を持つ者をそう呼んでいる。主にテスターに与えられている』
(その特別な刻印って何?)
『刻印は胸についているンだが、眠兎にもついている』
はぁ?
思わず、口に出そうになったが押し留まる。
『眠兎の特別な能力、ミナさんがそれを覚醒させる鍵となっている。その能力が召喚と聞いているが実際に思っているものを全く異質なものだ。棒状の武具からビーム刃を出していると思うが本来、その武具にはそんな能力はない』
(え…じゃああのビーム刃ってなんなの?)
自由自在に形も変えたり出したりしていたけれど、特に何か疲れるとかそういうのもなかったし…
『あれは精霊を部分的に召喚させ、使役していたンだよ。そしてその気になれば、他にも様々なものを呼び出し、意のままに操ることが出来ンだよ』
(じゃあ、竜とかも…)
『ああ、もちろンだ。その力である原動力がミナさんにあるからこそ発揮できるンだ』
じゃあこの力がこの世界を崩界させる…にしては弱いような、っていうかその青自身ができそうな気がするしなぁ…
(ちょっと待って…召喚させて使役させているのはわかったけれど原動力が私だとして、私はそれに対して決定権は持ち合わせてない)
『あンたの所有管理権は眠兎にあるってことなンだ』
所有管理権…は眠兎にある。どういうこと、私はただ意識だけがこの武具であるアーマーに入っているだけってことになるの?
『そして、眠兎はミナさんによってちゃんと生み出されたンだが、眠兎そのものを管理しているのは青になる』
(私自身はなんの為にここに捕らえられているってことになるの…もしかしてエネルギーってこと)
『そうだ、エネルギーとして必要だからいることになるンだ』
(エネルギーってどういうこと?なんで私なの?意味がわからない…)
『その理由について、まずは話を戻そう。私の目的は、崩界を止めることだ。崩界、つまりこの世界を無くさせる方法というのは強いエネルギーの爆発が必要となる。ミナさんのエネルギーを使い、眠兎の召喚を使った所で世界は壊れるわけではない』
そりゃ、そうよね…
『そこで世界に負荷を与え、処理できない程に達した時に世界を形成する根本にぶつけ壊させる。その根本への道筋を作るのが召喚の力、その力を発揮させるのがミナさんのエネルギーなのだ』
(その負荷って何?そもそもこの世界を人格化したのが青だというのなら世界は滅びたいのはそれこそ世界の意思じゃないの?)
世界の終焉を望む世界の意思、そもそもなんで世界を終わらせたいのかがわからない。そして自分がどうしてそれに巻き込まれたのかさえわからない。わからないこと尽くしで、知れば知るだけ疑問が湧いてくる。
『負荷については、休憩後に説明する。あとな…世界が滅びたいからといって今ここで生活している人たちはどうなるンだ。滅びたいのなら勝手に一人で滅べと言いたいが神さまなら勤めを果たせって思うンだがな』
ユーリのおっさんは愚痴た。彼も彼で何度もループし、疲れているのだろうか溜まり溜まっているというのもあっただろう。
気がつけば、休憩ポイントまで来ていた。
一旦、停車すると恵那と乃陰、そして眠兎は荷車から降りて周りを見渡す。ずっと座りっぱなしだったこともあり、身体がなまるのか各自伸びをしたりした。街道を少し外れた場所に停車されており、あたりは綺麗な草原。
透き通る風が草原を走り抜けて行き、草がなびいた。春の陽気が感じられる気候、太陽の日差しはそんなに強くなく、眠気を誘わせるなと感じた。あたりに何か気配がするなと思ったら、小動物がいた。
軽食をとりつつ、恵那と乃陰、眠兎は談話していた。ユーリのおっさんは荷車の点検や馬に似た動物をなでたりしていた。
自分が関係する思っ苦しさがある話、きっと別の形でこの世界に来ていたら、この世界は違った見え方をし、いろんな人と接していたのかなと思ったりした。今は今で、恵那や乃陰、眠兎に出会えた事はそれはそれで楽しいことだ。
私は、もっとちゃんとこの世界を感じていきたいと思った。