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盗賊一味が伏せをさせられた状態で並べられていた。足元にそれぞれの武器が置いてある状態になっており、準備いいなと思った。
「おっ、終わったか…なんかすごい音聞こえたけれど、大丈夫だったか」
「バチバチうるさかっただけだ」
確かにうるさかった。まあ、まさか打ち返すとは思わなかったけれどね…あとパーティクル・アーマーでもかなり威力減衰して今の重装を突き破る程の威力じゃないことがわかった。当たったら、すごい衝撃だろうけれど・・・
「それで眠兎、こいつらの武具を解析するって言っていたけれど…」
眠兎は引きずってきた伸びてる男を無造作に並べられている奴らの近くに放おり、足元にニードルガンを置いた。
「ああ、可能かどうかわからないが遺跡から出てきたものなら遺跡と同じように何らかの解析が出来るんじゃないかと思ったんだ」
解析、プレイヤーが使う初期装備は成長するタイプの固有武具で様々な遺跡から特殊な昨日をインストール可能になっている。そしてその情報を同じ武具を持っている者なら共有や交換などが可能だ。
(眠兎、武具に手を当ててくれる。ナイフ使いの二人からの方がいいかな、意識あるしね)
『了解』
眠兎は足元に大量にナイフが置かれ恐怖で震えているナイフ使いの一人に近寄った。しゃがみ込み、ナイフ一本一本触ってみるが何も反応しない。
こいつ…ナイフが武具じゃない?
(眠兎、こいつ武具がナイフじゃないね)
『うん、触っても何も感じない…てことは普通の人?』
(いや…こいつの着ている上着が怪しい。触ってみて)
上着はタクティカルベストになっており、その下に革製の防具を着ていた。眠兎がタクティカルベストに触ってみると私のアーマーが反応を示し、武具だというのが感じ取れた。するとビクリとし、更にナイフ使いが怖がっているのがわかった。
(当たりね)
『どうすればいいの?』
このゲームはPVPそのものは目的や手段の一つである。ましてや人型同士が殺し合ったり騙したり、パーティ組んだり、ほとんど制限がない。しかし、同じ武具持ちの遺跡から目覚めたプレイヤー同士は協力しやすいようになっている。
相手の武具を盗むことは出来ないが特性を吸収することも可能だ。吸収されないように抵抗はもちろん可能というのもわかっている。
私自身が調べた経緯があり、もし一人で行動をする時があった際に他のプレイヤーに出会ったりした場合、どんなメリットがあってデメリットがあるのか気になったからだ。私自身といっても現実の別意識と化している私だけど…くそ、思い出したらイライラする。
(眠兎、今から私がこいつの武具の特性やその他何か手に入るのか試してみる)
アーマーに機能が拡張され、武具の系統がわかるようになった。他人の武具を調べたことで武具の系統が構築されたが、全部が閲覧可能になったわけではなく自分が認知したものが自動で整理されていくものだった。
そして、屈服というか生殺与奪権がある状態であるためか、相手が恐れていて正常な精神状態ではないためだろう特性の吸い出しが上手くいかない。最初から上手くいくとは思ってないが、ちょっと残念だった。
「どうだ、何かわかったか?」
乃陰は武具マニアなので非常に気になっているのがわかった。
「ある程度はな」
眠兎はそれぞれのうつ伏せになってる人たちの武具をチェックしていった。そして、伸びているやつからも武具から情報を引き出せた。
意識がない人のも情報を引き出せるのか…だけど特性の吸い出しは出来ないとなると私のアーマーそのものがそれに特化してるわけじゃないからかな…この黄金の民が作ったとされている武具のことを考えるとレベルに応じてそういったことも可能な武具がありそうな気がする。
そして、驚いたことに、一人はNPCだったのだ。剣と盾を持っていた人だった。
一攫千金を夢見て、武具が強い連中と一緒に盗賊行為ってところか…それにしても運が悪かったというべきか、相手が悪かったね。
「恵那、こいつらどうする?」
私は一通り調べ、情報の吸い出しが終わったので眠兎に用がおしまいと告げた。ニードルガンを持ってる奴はすこし気になったがここで話す事ではないので後で話すことにした。
「こいつらをギルドなりに引き渡すにしても、その間の管理が面倒だ。どうせ殺しても遺跡で目を覚ますんだ。サクッと殺るか」
乃陰が恵那の代わりにサラッと答える。
「た、助けてくれ…もうしない…頼む…」
泣き出している人、まだ気を失っている人、正直戦闘時に相手を殺すのは慣れているが非戦闘時は苦手というか…私はしたくない。眠兎がどう思っているかわからないけれども、眠兎にはさせたくないと思っている。
「眠兎、この片足が無くなってる奴らはどうなるんだ?一生このまま?」
「損傷具合によって時間はかかるけれど、基本回復するよ。ただし遺跡内でだがな」
恵那はちょっと考え、乃陰はやれやれといった仕草をした。きっと乃陰は恵那がどう答えるかわかってしまったのだ。もちろん、私も彼がどう答えるのかわかったし、眠兎もどこかでそう答えて欲しかったんだろう。
「放っておこう、殺すのは面倒だ。ただし―」
気を失ってない人たちの頭上に盾が出現し、頭にガツン!と落ちる。
「気絶しててもらおう」
先ほどあった泣き声はなくなり静かになる。
「恵那、お前はほんと甘ちゃんだよな。こいつら俺らを殺すつもりだったんだぞ?まあ、眠兎もそうだが…チッ」
「わかってるよ…だけど、乃陰…眠兎の同郷かもしれないしさ」
「そういうところが甘いって言うんだよ…まあ、いいさ俺たちが無事なんだしな」
「二人とも、ありがとう…」
こうして何事もなく襲われても何も被害がなく終わった。相手が弱すぎたというよりも…こいつらが強すぎるといったほうが過言ではない。二人に稽古をつけてもらいつつ冒険をしてるだけあって、眠兎も大分変わった。私自身が眠兎だった時は…もっと本能的だったっけかな…あれどうだっけ?まあいいや
(眠兎、おつかれさま。早速得られた情報を共有するね)
『うん、おつかれ!あのニードルガンどうだった?』
そう、ここからが本題…例のニードルガンは明らかに私のアーマーや眠兎が持ってるビーム刃を生成可能な棒と一緒のランクが高い武具なのだ。
(あれはヤバイよ、技術的にも戦争そのものを変えるね。それに…あの系統の武具がどれほど出回っているか気になる所ね)
音が問題だが、射程距離、威力、連射力…世界の敵にわたらない事を祈るしかないものだった。