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一人のナイフ使いの叫び、悲鳴が響きわたる。眠兎は斧状態で薙いだといっても、太ももをごっそりとだ。ポールウェポンで片面だけ斧刃になっていて、重装備の眠兎が持っているから動きがまさか機敏ではないと思ったのだろう。
残念ながら違う、重装に見えるがパワードスーツだ。眠兎が、というか私がこのゲームをはじめた時の初期装備だ。テスター時からの武具だ、持っているビーム刃は遺跡であとから手に入れた武具だ。
だから相手は重装だから動きが重いと判断したんだろう。残念ながら、鎧の形状を見て気づくべきだったと思う。だが、元が記憶喪失状態なのでこの世界の常識がわからない、仕方ないかもしれないが…重装だとしても強襲戦闘対応型だ。
眠兎はすかさず、もう一人のナイフ使いに向けて斧を振るう。長い柄に斧状のビーム刃が綺麗な軌跡を描きながらもう一人のナイフ使いの太もも目掛けて、薙ぎ払う。
見事に片足だけになるナイフ使い二人組だ。
「眠兎、なぜ止めを刺さない!舐めてんのか?」
乃陰はとてつもない怒気を放ちながら、言い放つ。ナイフ使いが発していた叫び声すら黙り、周りの動きが止まる。
「こいつらの武具、解析が可能かもしれないからな…殺したら武具ごと消える」
眠兎は不機嫌そうに答える。
「こ、こいつ…俺たちと同じ記憶喪失者だと!?」
反対側にいた剣と盾を持っている男が驚愕していた。
「眠兎、乃陰、さっさと片付けるよ!」
それが封切りとなり、一斉に動き出す。
眠兎はビーム刃をしまい、槍使いの一人に接近し、フルスイングして飛ばした。飛ばした先はもう一人の槍使いに思い切りぶつかる。
フルスイングする際にバキバキと肋骨がいった感触が伝わってきた。苦悶の表情と悲鳴が響くと同時にもう一人にぶつかる。
残ったもう一人の槍使いはすでに乃陰によって口から泡を出して倒れていた。おそらく、気功を内部に流し込み、体内の気の流れを乱しまくったんだろう。エグい
恵那の方は、相変わらず連携がうまくいっていない。恵那相手にうまく連携をとれっていう方が難しいのがわかる。眠兎は太ももががっつりえぐられているナイフ使い二人に対して棒状態で頭を殴打し、気絶させる。
(眠兎、気をつけて隠れている奴が出てくる!)
『了解ッ!』
「乃陰、今出てくる隠れている奴は私がやる」
「まあ、お前なら死なないだろ…んじゃ恵那の方を片してくるか」
乃陰はおもむろにナイフ使いが投げてきたナイフを拾い上げる。
「ブレイクだ」
乃陰の口角が釣り上がり、二本のナイフが投擲される。
槍使い二人の肩にグッサリと刺さる。もうこの二人は逃げるしかないが、刺さった瞬間に恵那が縦で思いっきり打ち付け、気絶させる。残ったもう一人の槍使いも何か言う前に恵那の投擲された鞘付きの剣が脳天を直撃し、気絶する。
私はそれを確認し、残り三人も時間の問題だと確信した。眠兎は丘の裏側に隠れている相手とまもなく対峙する頃の出来事だ。眠兎が戦っているうちに二人の戦闘が終わりそうだなと思ったりした。
ニードルガン…情報だけなら知っている。さして脅威ではない武器という印象だが、プレイヤー用のニードルガンとなると別だろうかと考える。しかし、実際に対峙しどういう性質の武具なのかわからない。
丘の裏側を覗くような形で見るとさっきまで相手していた人たちとは雰囲気が違った。バチバチと相変わらずやかましい音を立てていた。
「悲鳴が聞こえたと思ったら、ヤラれたのはあいつらか…やるねぇ」
まるで眠兎がこちらに来た事に対して、動じていない。
「さて…と、ちょっと勝つか」
眠兎が勝ちを宣言し、ビーム刃を出さず、武具を構える。
バチバチと鳴らしているロボットアニメに出てきそうなライフル銃を構えている。銃そのものに放電しているわけではないが音が聞こえる。私はどのくらい威力減衰がどのチド可能かわからないから前方向のみに比重をおいたパーティクル・アーマーを展開した。
(前方にパーティクル・アーマーを起動した、多分大丈夫だと思う)
眠兎の前方に薄い粉みたいなものが舞うようになるが、視認はできなくなる。粒子状のバリアであるため、視認は基本できない。乃陰には見えていないからこそ、そこが空気の厚みが違うと感じると言っていた。
目の前の敵はどうかというと、怪訝な顔を少ししたくらいだった。もしかしたら何か感じるのかもしれない。
眠兎は構え、前に進む。
それを見た相手はニヤリと笑い、その場でどっしりと銃から衝撃を受け止めるような姿勢をとり、腰だめの状態で銃口を眠兎に向けた。キィィィンと音がしたら轟音が鳴り響き、目の前の地面がえぐられて来るのがわかった。巨大な杭が超速で眠兎へ向かって飛んできた。
思った以上に攻撃力があると感じた。目の前に迫り来る杭は避けれない、パーティクル・アーマーがすでに起動しているので眠兎は元から避けるつもりはなかった。私はこの威力の攻撃をはたしてどのぐらい威力を減衰できるのか、わからなかった。もう一度言おう、わからなかった。
発射された瞬間不安がこみ上げてきていた、どうしようヤバイという不安が襲いかかってきていた。
だが、それは杞憂に終わった。パーティクル・アーマーで威力減衰され勢いを急激に落ちていき、眠兎はその巨大な杭の真芯を突きで打ち返した。そのまま、杭は出てきた場所に来た時よりは遅い速度ではあるが戻り、勝ち誇った顔をした男に衝突した。
私が感じた不安は一瞬でどこかへ行った。
はい、お疲れ様でした。真芯を突きで返すとかどんだけデタラメなんだよ…
レーダーを確認すると向こう側でも戦闘は終わってて、負傷してる奴らを一箇所に集めているのがわかった。
(眠兎、そいつも連れてあっちに戻ろう。あっちはもう終わってる)
『了解~、いやーびっくりしたけど打ち返せてよかった。ちょっと不安だったんだよね。あははっ』
(私は驚いたよ、まさか突きで打ち返すと思わなかった)
『赤い線が出てきたから行けるかなって思ってさ』
赤い線?ああ、もしかして敵の予測攻撃線か…プレイヤーは相手の攻撃に対して予測攻撃線を視覚化して見えている仕様になっている。とはいえ、技術力が高い相手にはその線がブレたり見えなかったりする。ニードルガンだった為か直線で見えてしまうのかな…
(そっかぁ、とりあえず合流してこいつらの武具を調べましょう)
杭を打ち返され当たった男は伸びており、ニードルガンのやかましいバチバチ音は止まっていた。眠兎は武具を仕舞い、相手が持っていた武具を持ち、男の襟元を持ちズルズルと引きずりながら恵那と乃陰がいるところに戻った。鼻歌まじりで
「ふんふんふ~ん♪」