煩悩その007「BOZZ、ヘヴィメタLIVEステージへ行く」
今回はヘヴィメタLIVEステージに行ってみました。
仏教・宋櫂宗の住職、大槻雲海は、5000人の観衆の前で目覚めた。
「ここは…ど、どこだ?さっきまで檀家の3回忌で木魚を叩いてたはずだが」
雲海の前にはドラムセット。
うねる様なギターリフ。
腹の底に響くベースの低重音。
ヴォーカリストは、こうシャウトした。
「次の曲で最後だ!飛べるか!飛べるか!いけるか!」
≪雲海。いつもいつも誤転送ばかりしてすまない。今日は特別に…高校時代のお前の夢を叶えてやろうと思ってな≫
渦の中から聞こえてくる低い声が、そう言った。
「まさか…こんなことが…私の好きなバンド…チルドレン・オブ・エネミーのライヴじゃないか…」
雲海はドラムスティックを回転させた。
------------------------------------------
「行くぞ、最後の曲!」
ズダダダダダダダダッ
雲海は、激しいビートを刻む。
「デヴィル・オブ・デス!!!!!」
------------------------------------------
「仏 説 摩 訶 般 若 波 羅 蜜 多 心 経 観 自 在 菩 薩 深 般 若 波 羅 蜜 多 時 照 見 五 蘊 皆 空 度 一 切 苦 厄 利 子 不 異 空 不 異 色 即 是 空 空 即 是 色 想 行 識 亦 復 如 是 利 子 諸 法 空 相」
ポクポクポクポクポクポクポク!
気がつくと、雲海は激しく木魚を連打していた。
「は!いかんいかん」
元のビートに戻し、檀家の3回忌を終えた。
「ふむ。木魚を叩きながら寝るとは。坊主、失格だな」
(お前がその気なら、いつでもバンド戻って来いよ)
かつての級友の声が聞こえた。
ような気がした。
次回は、ニートくんのバイト面接をしてしまいます。