花の瞳
「なぁ…… 高校卒業したらどうするん?」
「はぁ!? さっき中学卒業したばっかやん」
「3年なんてあっという間やで」
中学最後の帰り道、いつものように自転車を漕いでいる島本の後ろで私は少し感傷的になっていた。
この大好きな時間は今から思えばすごい速さで過ぎていったような気がする。
だから島本と一緒にいる時間もすぐに消えてなくなってしまいそうで怖くなったのだ。
「オレはオヤジの後を継ぐかな」
「……そっか」
島本はちゃんと将来のことを考えていて少し、寂しくなる。
今を生きることに精一杯で変化を酷く嫌う私を滑稽に思うだろうか。
「島本の未来に私はいる?」そう聞きたいけれど臆病な私には聞けそうにない言葉。
「どうしたん?」
心配そうにゆっくりと自転車を止め、私の顔を覗きこむ。
でも私は島本の背中に顔を埋めていたので表情までは読み取れないだろう。
今だけは見られたくなかった。きっとすごく不細工な顔をしているから。
「私たちつき合ってんのかな、て……」
そしてまた、ゆっくりと自転車が動き出す。
「……花井はどう思う?」
そうね。島本はバカだけどやれば出来る奴でスポーツ万能で優しくて天然で、私の憧れの人。
女の子にも男の子からもたくさんの人にモテてちょっぴり悔しいけれど嫉んだことはなかった。
ただ島本といる時間が何よりも大切なんだ。島本の視線の先にずっと私がいて欲しいって思う。
「さぁ」
了