1/2
愚か者へ告ぐ
「ごめんな」
人が離れる瞬間を見てしまった。一週間前の私とだぶってまた泣きそうになる。
野田は冷たい目をしていた。私の恋人だった人もまたあんな目をしていたのだろうか。
悲しくて辛くて怖くて顔を上げられず最後まで目を見れなかったのだ、私は。
「悪趣味」
「あ……」
いつの間にか教室には野田の恋人だった人はいなくなっていて、野田は私の目の前に立っていた。
言い訳をしようと口を開きかけたが、止めた。これでお互い様だと思った。
私も野田に恋人だった人にフラれるところを見られたのだ。
「今度は反対やな」と言ったけれど声が届いていなかったのか、いつまで経っても返事は返ってこなかった。
野田は赤から黒に染まる空をながめていた。
「真崎、俺とつき合うか」
「……イヤや」
「即答やな」と野田は笑う。
横顔を盗み見るといつもの笑顔だった。
野田の笑った顔が好きだ。でももし、もしもあの冷たい目が私に向けられると思うと、怖い。
それならば一生いばらの冠をかぶりつづける方が何倍もましだ。
了