マザコン×シスコン=僕
普段俺は俺キャラ。
顔が良いらしく頭もそこそこ。
女にはモテる。
正直ストーカーのようなような女にあって焦ったが、現在はまぁ・・・・・・ストーカーにならない程度にしつこい女とその他もろもろがいる。
特に気取ってはいない性格なので男友達もそこそこ多い。
そんな俺キャラが崩壊する場所、それは“家”だ。
「ただいま。」
「あれ?一哉もう帰って来たんだ?お帰り!」
笑顔で髪をセットしながら俺を迎えてくれたのは僕の姉、篠山 ハル。
顔は可愛い系、以外としっかり者だけど、抜けてたりわがままだったりする。
髪をセットしてるってことは・・・・・・また彼氏んとこに行くんだ。
「また彼氏ん家~?」
「うんっ!そうだよ!」
おいおい・・・・・・楽しそうに言うなよ・・・・・・。
「もしかして、寂しい?」
俺の顔を覗き込んでくる姿にドキリとする。
「そ、そんなわけ・・・・・・。」
寂しくない。でも、どうして兄弟は愛し合っちゃいけないんだ?
嫉妬で胸がつぶれそうになる。
ハルの彼氏より俺のほうが背が高いよ。
ずっとハルのそばにいるのに、顔だって悪くないって言われたのに、ハルは絶対に僕を弟以上には見てくれない。
抱き締めてしまいたい。
いかせたくない。
引き止めたい。
でもできない・・・・・・僕はこのままでいい・・・・・・これ以上関係が悪化するのは嫌なんだ・・・・・・。
兄弟以上になれない悔しさをただ噛み締めていた。
「寂しいんだ~?カズは可愛いね!大丈夫今日はお母さんが早めに帰ってくるよ?私はちょっと泊まってくるけど。」
そういって笑顔でミュールをカツカツ言わせながらはくと、僕に行ってきますと手を振った。
行くなよ・・・・・・引き止めたい。
抱き締めてしまいたい。
なのに出てきた言葉は、「いってらっしゃい。」ママも好きだ。
でも僕が一番好きなのはハル、君だよ。
姉なんて辛すぎるよ・・・・・・いっそ血がつながってないとかマンガとかのありきたりな設定になればいいのに・・・・・・。
この家は運が良いのか悪いのか、一家全員がそれなりに整った顔をしている。
だから姉もそうだし、僕もそうで、血を確かに受け継いでいるとしかいいようがない。
ハル、僕が君に“愛してる”って言ったらどうなるの?
ハルはもう二度と僕と口を聞いてくれなくなるの?
そんなの嫌だ・・・・・・。
やっぱり僕はずっとこの場にとどまらなきゃいけないんだ。
ずっと、ずっと・・・・・・きっと、一生、僕がハルを好きで居続けるかぎり・・・・・・。
それでもハル、君が・・・・・・「好きなんだ・・・・・・。」
物音一つしなくなった玄関にポツンと響いた。
ハルの部屋に入った。
彼氏との写真が写真たてに入っていた。
僕はそれを一枚一枚壊して回りたくなった。
でもぐっと堪えた。
こんなに近くにいるのに、近すぎるからダメだと拒否される。
僕に許された道はない。
それでも脱線したこの気持ちは・・・・・・どうしたらいいの?教えてよ・・・・・・ハル、ママ・・・・・・。
「ただいまーあら、一哉?帰ってたの。」
「お帰りママ、今日もハルは彼氏んとこだって。」
「お姉ちゃんと呼びなさい、お姉ちゃんと!」
「いいじゃんママ。」
「そうね、ま、許しちゃうか!」
そういってママは僕の頬にキスをした。
「ママ大好きだよ。」
「私も愛してるわよ、カズ君。」
ママは僕に愛していると言ってくれるけど、僕はそれとは違う愛の形を姉に抱いていると言ったら、ママも引くの?
やっぱり許されないの?
ママ、いつでも優しくて僕の自慢のママ。
大好きだけど、ママは意地悪だ。
どうしてハルを家族として生んだの?
血がつながってないって言ってよ。
僕は、僕は・・・・・・ハルが好きなんだよ・・・・・・年だってたった二つしかかわらないじゃないか。
ハル、ハルも彼氏がいるなんて嘘だって言ってよ。
ハルの彼氏よりも僕のほうが背も高いし顔も良いって僕、何度か言われたんだよ?
一緒に町を出かけたときはカップルですか?なんてアンケートの人に聞かれたじゃないか・・・・・・ねぇハル・・・・・・。
どうして僕はハルの特別になれないの?
なにもかも壊してしまいたい。
でも何も壊せない。
これじゃ飼い殺しだよハル・・・・・・僕はインコじゃないんだ。
飼い殺しは耐えられないよ・・・・・・。
でも今日も僕は飼い殺しにされるんだ。
行動に移すことが怖いから。