第7話:ついに上陸!宝島
ついに、二週間目の昼過ぎ。
甲板の見張り台から、若い船員の声が響き渡った。
「陸だ!陸が見えたぞ!」
全員が一斉に船首へ駆け寄る。
ジムも慌ててロープを掴み、目を凝らした。
水平線の向こうに、ぼんやりとした緑の塊が浮かび上がっていた。最初は雲かと思ったが、次第に輪郭がはっきりしてくる。
高い丘がいくつも連なり、中央に一本の奇妙に尖った岩山――地図に「スパイグラス(望遠鏡の丘)」と記されたあの山だ。
島の周囲は深い緑の密林に覆われ、浜辺は白く輝く砂で縁取られている。潮の匂いが強くなり、遠くで波が岩に砕ける音が聞こえてくる。
宝島。
ついに、そこに姿を現した。
ジムの胸は高鳴っていた。
いや、高鳴っているはずだった。
だが、同時に冷たい不安が這い上がってくる。
喜びなのか、恐怖なのか、復讐の興奮なのか、それともすべてが混じり合った何か――感情がうまく分からない。
ただ、喉が乾き、手のひらが汗で滑る。
横からケローネが近づいてきた。
黒い肌が陽光に照らされ、白髪が風に揺れる。彼はジムの肩に手を置き、低く言った。
「ついに見えたな、ジム。宝島だ」
ジムは頷くしかなかった。
「どうした、不安か?」
ケローネの声は穏やかだが、どこか探るような響きがあった。
ジムは正直に答えた。
「……分からないんです。嬉しいはずなのに、怖い。
おじいちゃんの仇を討つって決めたのに……ここに来たら、何かが変わってしまう気がして」
ケローネは小さく笑い、島の方を指さした。
「海の男はみんなそうさ。宝の前に立つと、心が揺れる。
だがな、前に進むしかねえ。後ろを振り返っても、何も変わらねえよ」
ジムは深く息を吸い、頷いた。
そうだ。ここまで来て、引き返すわけにはいかない。
程なくして、黒い錨号は島の北東の入り江に近づき、錨を下ろした。
浅瀬のため、大型船は入れない。ボートを降ろし、ジム、ケローネ、そして信頼できる三人の船員が上陸した。
砂浜は熱く、足元が柔らかく沈む。周囲は静かで、鳥の鳴き声と波の音だけが響く。
密林の木々が風にざわめき、時折葉ずれの音が不気味に聞こえた。
「まずは拠点になる場所を探すぞ」ケローネが指示を出した。
「水場と、見晴らしのいい高台。シルバーが来る前に、陣を張らねばならん」
一行は浜辺を歩き始めた。
ジムは複製地図を握りしめ、島の地形を頭に叩き込む。
スパイグラスの丘は島の中央にそびえ、そこからX印の場所までは……。
だが、その時――
遠くの水平線に、帆影が現れた。
最初は小さな点だったが、すぐに大きくなり、黒い船体がはっきり見えてくる。
三本マストのブリガンティン船。甲板に立つ人影が、陽光に反射してきらめく。
そして、船首に掲げられた旗――黒地に白い髑髏と交叉した骨。
海賊旗だ。
「シルバーだ……!」
誰かが呟いた。
ジムの血が凍った。
あの男の船が、ついに追いついた。浜辺からでも、はっきりと確認できる距離。
彼らはこちらに気づいているはずだ。ボートを降ろし、上陸してくるのは時間の問題。
ケローネの表情が険しくなる。
「急げ。
陣取れる場所を探すんだ。」
ジムは島の密林を見上げた。
緑の壁が、まるで自分たちを飲み込もうとしているようだった。
宝島の空は、まだ青く澄んでいる——




