第3話:宝の地図
その夜、民宿の二階の部屋で、ランプの灯りが揺れる中、トムはジムにすべてを話した後、独りで残った。
ジムが寝床についたのを確認すると、トムは古い革の袋から地図を取り出し、テーブルの上に広げた。
インク壺と羽根ペンを手に、慎重に線をなぞり、島の輪郭、座標、目印のすべてをメモ用紙に複製した。
「これで、万一の時にも……」
トムは独り言のように呟き、複製した地図を小さな木箱にしまい、部屋の隅の棚の奥に隠した。
本物の地図は元の場所に戻し、床板を元通りにした。
外の海は静かで、星がカリブの空を覆っていたが、トムの心は重かった。
シルバーの影が、すぐそこに迫っている気がした。
翌朝、陽光が民宿の窓を照らし始めた頃、ジムは祖父の頼みで近くの市場へ買い物に出かけた。
新鮮な魚とパンを籠に詰め、潮風に吹かれながら民宿への道を急いだ。
「おじいちゃん、今日は一緒に網を直そうか」
ジムはそんなことを考えながら、玄関の戸を開けた。
だが、そこに広がったのは、血の臭いと荒らされた部屋の惨状だった。
カウンターが倒れ、椅子が散乱し、床には赤黒い染みが広がっている。
そして、トムが――祖父が、胸にナイフの傷を負い、息絶えて倒れていた。
ジムの籠が落ち、魚が床に転がった。
「おじいちゃん……! おじいちゃん!」
ジムは駆け寄り、トムの体を抱き起こしたが、すでに冷たくなっていた。傷口は深く、争った形跡が部屋中に残っていた。
床の近くに落ちた木製の義足の欠片――それは、ジョン・シルバーのものに違いなかった。
買い物に出ているわずかの間に、シルバーが訪れ、トムを殺し、地図を探し出したのだ。
床の下の床板が剥がされ、古い革の袋が空っぽになっている。
本物の地図は、シルバーに奪われていた。
ジムは膝をつき、涙をこらえながら叫んだ。
だがすぐに、近所の住人が騒ぎを聞きつけ、駆けつけてきた。
誰かが保安官を呼びに行き、間もなくして官吏の男が数人の兵を連れて現れた。保安官は厳しい顔で現場を検証し始めた。
「これは殺人だ。海賊の仕業か? 義足の男の目撃情報があるぞ」
兵たちが部屋を調べ、トムの体を布で覆い、証拠を探す。
ジムは震える声で、昨日の男のことを話した。
「ジョン・シルバー……片足の男です。おじいちゃんを、トム・ゴールドと呼んで……」
保安官は眉をひそめ、記録を取った。
「トム・ゴールド? あの伝説の海賊か。生きていたとはな……だが、証拠がない。捜査するが、シルバーはもう島を離れたかもしれない」
現場は封鎖され、ジムはただ茫然と立ち尽くすしかなかった。
検証が続く中、ジムはふと、二階の部屋へ上がった。
祖父の棚の奥を探り、木箱を見つけた。中には、昨夜トムが複製した地図が入っていた。
島の輪郭、X印の場所、座標――すべてがそこにあった。ジムは地図を広げ、指でなぞった。
「おじいちゃんが残した財宝……宝島の宝」
胸に熱いものが込み上げた。
シルバーが本物の地図を奪った以上、あいつは宝島へ向かうだろう。
だが、この複製があれば、自分も行ける。シルバーより早く見つけ、祖父の仇を討つ。
いや、祖父の望んだ平穏を守るために、宝を沈めるか、隠すか――いずれにせよ、動かねばならない。
ジムは地図を握りしめ、窓から見える海を睨んだ。
「絶対に、シルバーには渡さない。おじいちゃん、僕が守るよ」
そう誓うジムの目には、少年の無垢さと、海賊の血が宿る決意が宿っていた。
保安官の検証が終わり、民宿は静けさに包まれた頃、ジムは行動を決意した。
港へ行き、船を探す。
宝島への旅が、始まろうとしていた——




