表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載完結】ただ互いに憎み合っていただけなのに、周囲が勝手に溺愛だと勘違いし、愛の権化のように崇拝されました。  作者: 逆立ちハムスター


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/145

そして獣だけ残った

厨房での「地雷ポエム(奇跡の成功)」という名の衝撃映像を脳裏に焼き付けたまま、テオはふらふらとした足取りで、皆が待つハーブ園のテーブルへと戻ってきた。


「……おじさんたちの愛は、もう僕には理解できない次元に行っちゃったよ……。でも、いいんだ。僕にはまだ、論理の守護者であるルナがいるから……」


そう自分に言い聞かせ、テオが視線を上げた瞬間。彼の視界に飛び込んできたのは、予想だにしない「平和で異常な」光景だった。


「……なるほど。貴方の言う『言葉の翼』という概念、興味深いわ。論理的に言えば、文脈の飛躍こそが感情の爆発を誘発する……。つまり、シアン。貴方の存在は、この世界における『美しい不確定要素』なのね」


「おやおや、理解が早いね、理性の姫君。君という名の数式に、僕という名のメロディが加われば、この世はもっと鮮やかな叙事詩になると思わないかい?」


テーブルでは、ルナとシアンが身を乗り出し、仲睦まじく「愛と詩の構造」について語り合っていた。シアンの生い立ちを聞き、彼を「好きなことを貫く自由人」として認めたルナは、今や彼を管理対象から「研究・理解すべき対象」へと昇格させていたのだ。


「ええ。テオが貴方と友人になりたいと言うのなら、私も努力(理解)しようと決めたわ。……さあ、次の節を聞かせて。その『心拍数と韻律の相関関係』についてを」


「ル、ルナ……? 嘘だろ……?」


テオはその場に膝を突き、真っ白な白目を剥いた。

カイルおじさんは戦場ポエムに染まり、ルナまでもがシアンの難解なポエムを「論理的」に受け入れ、楽しそうに歩み寄っている。


「……終わった。……僕の世界から、まともな人間がいなくなった……」


テオが絶望の淵で、虚空を見つめながら手を伸ばした先。そこには、シアンの膝の上で、彼が作った「蜂蜜のテリーヌ」を幸せそうにモグモグと食べているエトワールの姿があった。


「キュ……キュイ~♪(美味しい~)」


「……エトワール、お前まで……。お前までシアンさんの『美味しいポエム』に胃袋を掴まれたのか……」


テオは、もはや何も言わず、力なくエトワールをそっと引き寄せ、その柔らかい毛並みに顔を埋めた。


「……いいんだ、エトワール。君だけは、……君だけは、ただ『キュイ』って鳴いてて。……言葉なんていらない。……ポエムも、管理も、殺意も、照明弾も、地雷も……全部いらないから……。エトワール……なんだかもう疲れたよ」


「あら、テオ。おかえりなさい。おじさんたちのサポートはどうだった? 今、シアンと貴方の『感化された話し方』をどう論理的に洗練させるか相談していたところよ」


「……もう、そっとしておいて……。全部僕が悪かったんだ……。僕が……。僕は今、エトワールという名の『まとも』に帰還している最中なんだ……」


ハーブの香りが漂う美しい夕暮れの中。

楽しそうに詩を論じる少年少女と、愛の爆発に包まれた大人たち。その中心で、ただ一人の少年が、聖獣を抱きしめながら「まともさ」の墓標を立てていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ