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【連載完結】ただ互いに憎み合っていただけなのに、周囲が勝手に溺愛だと勘違いし、愛の権化のように崇拝されました。  作者: 逆立ちハムスター


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要塞王子の再臨

王国の端にある小さな港に、重厚な装甲に覆われた遠方の貿易国の軍艦が接岸した。

タラップを降りてきたのは、かつて「無機質な計算機」と呼ばれたライナス王子と、その妻カサンドラ姫である。


「おかえり、カサンドラ」

ソフィアが聖母のように微笑む。


だが、出迎えたエドワードとソフィアは、王子の姿を見て絶句した。


「……ライナス王子も、よくぞ来てくれた。……が、その、君の装備は何だね? これから戦争にでも行くのか?」


エドワードが指差す先、ライナス王子は礼装の下に「ドワーフ製のような対魔法防護服」を完璧に着込み、腰にはカサンドラのあらゆる魔力特性に対応した「中和用魔導具」をびっしりと装備していた。その瞳は以前の死んだような「計算」ではなく、獲物を狙う肉食獣のような、鋭い「注視」に満ちている。


「……エドワード陛下、ソフィア王妃。お久しぶりです。……カサンドラが、今朝の紅茶に『致死量寸前の痺れ薬』を混ぜる予兆(まばたきの回数)を見せたので、その対策に追われておりました。……一瞬たりとも、彼女から目が離せないのです」


ライナスは、隣で妖艶に、そして狂おしげに微笑むカサンドラを、片時も視線を外さずに「監視」していた。


「あら、お父様、お母様。ライナス様ったら、最近は私がナイフを握るだけで『その角度は頸動脈を狙っているのか?』って、熱烈に問い詰めてくださるのよ。……ああ、エルゼ様とアルフォンス様に導かれたあの日から、私たちは本当に幸せですわ!」


カサンドラが夫の腕に抱きつくと、ライナスは即座に彼女の手首の関節を極め、暗殺を警戒しながらも、その体温を確かめるように強く抱き寄せた。


「「「「おおお……! エランディア国でも、愛が爆発している!!」」」」


港に集まった信者たちが、国際的な「殺愛」の広がりに涙を流して跪いていた。


「……ソフィア。少し違和感を抱く私は信仰心が足りていないのだろうか?」

「あらエドワード。見てごらんなさい、あのライナス王子の必死な顔。……あれこそが、私たちの娘が欲しがっていた『注視(愛)』の形よ。……少し、過剰な殺意が混じっているけれだけよ。カサンドラが幸せなら、それが一番良いよ」


一方、この「地獄の里帰り」を遠くから観察している二人がいた。


「……ねえ、ルナ。あのライナス王子とかいう人、昔よりずっと目が血走ってるよ。……あれ、完全に『奥さんに殺されないための生存本能』を愛だと勘違いしてない?」


「……正解よ、テオ。……ライナス王子の脳内では現在、『妻の生存=自分の生存』という計算式が、『妻の殺意=自分の生き甲斐』に書き換えられているわ。……最悪のバグ(愛)ね。誰がこうしたかは検討つくけど」


テオとルナは、かつて最悪の元凶を生み出した、エルゼとアルフォンスが出した助言が、海を越えてどのような化け物を育ててしまったのかを思い知り、静かにエトワールの背中に顔を埋めた。聖地から離れた遠方の国ですら、イカれてしまっているのだと。


ライナス王子は、そびえ立つ『エターナル・ドロップ』の塔を見上げ、不敵に笑った。


「……なるほど。あの塔が、この国の愛の象徴か。……カサンドラ。あの中なら、周囲を気にせず、思う存分君の『真実の吐息』を受け止めてやれそうだ」


「まあ、ライナス様! ……さあ、行きましょう。お父様、お母様! 私たちの『深化した愛』を、ぜひ聖地で披露させてくださいな!」


王都に、また新たな、そして国際的な「イカれた狂気の爆発音」が響き渡ろうとしていた。

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