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【連載完結】ただ互いに憎み合っていただけなのに、周囲が勝手に溺愛だと勘違いし、愛の権化のように崇拝されました。  作者: 逆立ちハムスター


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エターナル・スリープ・ホール。〜王の入眠〜

聖地アトラクションの最後を締めくくるのは、最も底知れない静寂が支配する場所だった。

建設現場の最下層、巨大な竪穴の底に広がる『エターナル・スリープ・ホール』


「……テオ、ルナ。ついにこの時が来た。我が国がたどり着いた究極の安息……『不変愛・仮死派』の聖域だ」


エドワードは、普段の鋭い知性をどこへ置いたのか、どこか晴れやかな、それでいて「覚悟」を決めたような眼差しで、その暗い穴の縁に立っていた。


「……陛下。まさかとは思いますけど、これ、本当に降りるんですか? 下には『便所の神』の像があって、その周りに信者たちが……その、重なり合って寝てるだけですよ?」


テオが引き気味に尋ねると、エドワードはフッと寂しげに、しかし慈愛に満ちた笑みを浮かべた。


「テオよ。王とは常に動いていなければならぬ存在。だが、この穴の中では、王も民も関係ない。予が求めている真に平和な平等、ただ『動かぬ石』となり、永遠という名の愛に身を投じる……。予は、この瞬間のために王冠を被ってきたのかもしれん」


「……待ってください、陛下。その論理の飛躍、私の手帳では修正不可能です。……陛下!? 何をしているんですか!」


ルナの叫びも虚しく、ボタンを押すエドワード。降りていくエレベーター。

そして地下へ着くと、エドワードは優雅に王の外套を脱ぎ捨てると、何の迷いも、そして何の躊躇もなく、自らその深い穴の中へと横たわるように身を投じた。


「ああ……。便所の神(真の平和に満ちた愛の象徴)よ……予を、永遠の平和が支配する静寂へと……誘ってくれ……(仮死)」


穴の底に降り立ったエドワードは、驚くべき手際で周囲の信者たちの間に潜り込み、完璧なポーズで硬直した。その顔は、国政を論じている時よりも遥かに「満たされた」表情をしていた。


「……ねえ、ルナ。陛下、動かないよ。瞬きもしない。……あんなに聡明で、僕たちを助けてくれた時のあの格好良かった陛下が、今、便所の神の足元で『死体ごっこ』のセンターを張ってる……」


テオの顔から血の気が引いていく。

ソフィアに感じたのは、ジワジワと脳を管理されるような「不気味な恐怖」だった。

だが、今エドワードに見せつけられているのは、「あんなに凄い人(国を再構築(屋敷にあった回顧録))ですら、愛殺教の前では一瞬で人間を辞めてしまう」という、抗いようのない「概念の恐怖」だった。


「……最悪だわ。あの方は、自分の知性をあそこに『不法投棄』したのよ。……テオ、見て。陛下が寝転んだ瞬間、周りの仮死派たちが『王の入眠だ……不変の極致だ……』って、さらに深い眠りに落ちていくわ」


ルナの手帳に記された『エドワード陛下の生存指数』は、今や「植物(静止画)」と同等まで急降下していた。


「……僕たち、いつかああなっちゃうのかな。母さんたちみたいに殺し合うか、ソフィア様みたいに管理し始めるか、陛下みたいに寝転ぶか……。どれを選んでも、未来が絶望しかないよ」


「……させないわ、テオ。貴方の筋肉が少しでも硬直し始めたら、私が電気ショックを与えてでも無理やり動かしてあげる。……あんな『不変』に、貴方の管理権を渡してなるものですか」


ルナは震える声で自分に言い聞かせるように呟いた。

穴の底では、エドワードが「王としての威厳」を完全に保ったまま、一ミリも動かずに「死体」になりきっている。


王都を包む狂気は、もはや熱狂ですらなく、静かな「腐食」のようにテオたちの日常を飲み込もうとしていた。

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