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愛は死んで義務(結婚)だけが残ってしまいました。  作者: 笑顔の裏に離婚届と凶器


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愛の結晶

「二人の愛の結晶が見たい! 公爵家の美しき血脈を絶やさないで!」


国中の教会から安産祈願の鐘が鳴り響き、国民からの「期待」が物理的な圧力となって押し寄せていた。ついに、私たちの不仲を疑う保守派の貴族たちが、「子宝を授かるという伝説の離宮」をリフォームし、私たちをそこへ閉じ込めた。


逃げ場のない、一晩。

寝室には、広大すぎるベッドが一つだけ。


「……さて。どうするつもりだい、エルゼ。外では監視役の侍女たちが、寝息一つ漏らさず聞き耳を立てているよ」


アルフォンスは、暖炉の火を見つめながら、冷めた声で言った。

私は、彼から最も遠いベッドの端に座り、氷のような微笑を湛える。


「決まっていますわ。私たちはここで、夜明けまで『完璧な沈黙』を貫くのです。それが最も、彼らを苛立たせる方法でしょう?」(お前の指先一つ触れるのもおぞましいわ。石像のように固まって朝を待て)


しかし、アルフォンスはゆっくりと立ち上がり、私の方へ歩み寄ってきた。

彼は私のすぐ隣に腰を下ろすと、耳元で、外まで聞こえるような「甘く、溶けるような声」を紡ぎ出した。


「ああ、エルゼ。君のそんな冷たい瞳も、私にとっては最高のスパイスだ。……もっと、私を拒絶してごらん?」


私は彼の意図を察し、即座に合わせる。

「あら……アルフォンス様。そんなに強く抱きしめられては、私の……心が……壊れてしまいますわ……っ」(私の服に触れたら、その指をへし折りますわよ。でも、外の連中には私が悶えているように聞こえるよう、声を震わせてあげますわ)


アルフォンスは、私の肩を抱くフリをしながら、私の耳を指先で弾く。

「……聞こえるかい? 侍女たちのすすり泣く声が。『なんて激しい愛の告白なの』と、彼女たちは感動に震えているよ」


「……ええ、ええ。皮肉なことですわ。私たちが互いを呪う言葉が、彼女たちの耳には『情熱の愛』に変換されて届くなんて」


私たちは、一晩中、至近距離で「最悪の罵倒」を「最高に甘い声」で囁き合う。

「お前のその金髪、引き抜いて庭の肥やしにしてやりたいよ」

「まあ……アルフォンス様、そんなに激しく私を求めてくださるなんて……(早くベッドから落ちて床で寝てしまえばいいのに)」


極限の緊張感と、一歩間違えば本当の殺し合いに発展しかねない殺意。

しかし、外に漏れるのは、官能的ですらある低い囁きと、時折響く「布が擦れる音(お互いに相手を突き飛ばそうとしている音)」だけ。


翌朝。

私たちは、一睡もできず、青白い顔で部屋を出る。

そこには、あまりの「情熱的な夜」を想像して気絶し、運び出される侍女たちの姿が。


そして、執事が感極まった様子で、私たちにこう告げた……。


「……公爵閣下、奥様。先ほど、陛下より伝令が。お二人のあまりの仲睦まじさに、隣国の『独身を貫くはずだった冷徹王女』が、『愛を信じる勇気をもらった』と婚約を発表されました。お二人は今や、大陸の『愛の象徴』です!」


((違う、私たちは一晩中、いかに合法的に相手を消すか議論していただけよ……!))


アルフォンスが、私の腰をそっと引き寄せる。

その指には、血管が浮き出るほどの力がこもっていた。


「……光栄だね、エルゼ。これでは、ますます期待を裏切れない」


私は彼の胸に顔を埋め、周囲には見えない角度で、彼を睨みつける。


「ええ、本当に。……死ね。アルフォンス。」


ついにこぼれ落ちたその一言は、奇跡的なタイミングで鳴り響いた教会の祝福の鐘にかき消され、私だけの秘密の祈りとして、鼓動に刻まれたのでした。

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