呪いのギフト
ランチ会の屈辱を晴らすべく、私は裏ルートで手に入れた「呪いの遺物」を解禁することにした。
それは、かつて稀代の悪女が愛用し、周囲に不幸を振りまいたとされる「漆黒の呪いブローチ」
「アルフォンス様、先日は素敵なランチのひとときを共にありがとうございました。これはお礼に……私の愛だと思って、常に身につけてくださいませ」
「おい!よせ!やめろーー!!」
私は、彼の胸元にその不吉な宝石をピンで留め……ずとも引っ付いた。
(死ね。アルフォンス。これでいい。今日からあなたの行く先々で、鳥の糞が落ち、馬車は泥を跳ね上げ、最終的に階段から転げ落ちるはずだわ!)
「おい、何をした……、これ、取れないぞ。あぁ! い、いま、う、動いたぞ!」
「き、気のせいですわよ」(確かに黒い触手が少し……ニョロニョロしてる)
ところが夜会。
私は信じられない光景を目にすることになる。
アルフォンスが会場に入った瞬間、彼を狙って近づこうとした肉食系の男爵令嬢が、何もないところで盛大に転倒。
さらに、彼に色目を使おうとした未亡人のドレスが、シャンデリアに引っかかって派手に破けた。
「まあ……! アルフォンス様のブローチが光った瞬間、あの方たちが!」
「エルゼ様の『愛の呪い』が、彼を悪い誘惑から守っているんだわ!」
周囲の噂は、またしても私の予想の斜め上を突き抜けた。
どうやらその呪いの宝石、持ち主本人ではなく、「持ち主に下心を抱いて近づく第三者」を攻撃する性質があったらしい。
「エルゼ、君の愛の深さには恐れ入ったよ。このブローチのおかげで、私は君以外の女性と視線を合わせることも許されないようだ」(余計な真似をしてくれたな。遊びに行けなくなったじゃないか、この嫉妬深い毒婦め)
アルフォンスの服が朝と変わっているのにピッタリとくっついているブローチ。ニョロニョロしてる……。
「まあ、アルフォンス様。そんなに喜んでいただけるなんて、贈った甲斐がありましたわ」(チッ、不良品を掴まされたわ……!)
私たちは、周囲から「鉄壁の守護を誇る、独占欲の強いおしどり夫婦」として、最敬礼で迎えられることになった。




