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ただ互いに憎み合っていただけなのに、周囲が勝手に溺愛だと勘違いし、愛の権化のように崇拝されました。  作者: 逆立ちハムスター


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エルゼ、アルフォンス夫婦の、お悩み相談室♪

国際問題という名の本物の地獄を回避するため、私たちはひとまず殺意を封印。カサンドラ様を最高級の紅茶でもてなし、優雅な「お悩み相談」という名の情報収集を開始する事に。


「……それで、カサンドラ様。その……旦那様は、どのような御方なのですか?」


私は慈愛に満ちた秘技、アルカイックスマイルを貼り付け、彼女の言葉を待つ。

隣ではアルフォンスが、羽ペンを回しながら軍事機密でも扱うような真剣な面持ちでメモの準備を整えていた。


「夫……のライナス王子は、まるで感情のない機械のようですわ」


カサンドラ様は、適温の紅茶をまるで冷めた紅茶のように寂しげに見つめて語り出す。


「彼は二十四時間、常に国益と貿易の数字しか頭にありません。私が微笑みかけても『その表情筋の動きに何の意味が?』と問い返し、誕生日に花を贈れば『市場価値の変動が激しいものを贈る意図は?』と分析する……。私という人間ではなく、ただの『同盟の担保』としてしか見ていないのです」


(……あら。少しだけ、アルフォンスに似ているわね)

私は隣の男に冷ややかな視線を送った。

(あなたも昔、私のドレスを見て『防御力が低そうな布だな』と言い捨てたわよね?)


アルフォンスは私の視線を無視し、鋭い問いを重ねる。

「なるほど。超合理的、かつ冷徹。……しかし姫、彼はあなたに害をなしたり、他の女性に(うつつ)を抜かしたりは?」


「いいえ。彼は完璧な夫を『遂行』しています。浮気もしなければ、暴言も吐きません。ただ……私という熱を持った存在を、完全に無視しているのです。それが、どれほど残酷なことか……!」


カサンドラ様は、涙ながらに訴えた。

「だからこそ、お二人に憧れたのです。たとえ殺意であっても、相手のすべてを注視し、命を懸けて向き合うその熱量に……!」


アルフォンスが私の耳元で、他人に聞こえない低音で囁く。

「……エルゼ。これは厄介だ。ライナス王子は、感情ではなく『効率』で生きている。私たちが下手に説得しても、彼は『愛などという非効率な概念に時間を割く合理性がない』と切り捨てるだろう」


「……ええ。そしてカサンドラ様は、その『無関心』から逃れるために、私たちの『過剰な殺意』に救いを求めている。……このままでは、彼女が国に帰った瞬間、王子の関心を引くため、彼の寝室にドワーフ火薬満載の爆薬を仕掛けかねませんわ。そして黒幕は……」

「「私達になる」」


情報収集の結果、浮き彫りになったのは「無機質な夫」と「限界寸前の妻」

普通なら歩み寄りを勧める場面だが、私たちの「普通」はすでに崩壊している。


「……テオ、どう思う?」

アルフォンスが、いつの間にか背後にいた養子に意見を求めた。


テオは聖獣の喉を撫でながら、鼻で笑う。

「……簡単だよ。その王子様に、アンタたちが『殺し合い』で培った『相手の一挙一動を予測する技術』を叩き込んでやればいい。愛じゃなくて、生存戦略として『妻を見ること』を教えるんだ。……既に普通の愛とは程遠いけど」


(……テオ、あなた、時々冴えたことを言うわね)


私たちは、隣国の「機械仕掛けの王子」を王都へ招き、彼に「聖夫婦流・最恐のコミュニケーション術」を伝授することを決意したのである。

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