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ただ互いに憎み合っていただけなのに、周囲が勝手に溺愛だと勘違いし、愛の権化のように崇拝されました。  作者: 逆立ちハムスター


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ウェヌスに愛されし者達。伝説はここから始まる

「……聖なる殺意を、私たちに!」

「憎しみという名の抱擁を! お導きください、聖殺愛教せいさつあいきょうの御主人様がた!」


壇上での「心中未遂」から数日。屋敷の門前には、白装束に身を包み、なぜか「首に縄」や「ダガーの刺繍」をあしらった奇妙な集団が押し寄せていた。

彼らは、私たちの「相手を殺したいほど愛している(誤解)」という哲学に救いを見出した、熱狂的な信者たちである。


「イカれた宗教になってるじゃないの!!」


私は窓からその光景を眺め、目眩を覚えた。

「アルフォンス、あなたのせいですわ。あなたが『君を貫くためだけに剣を研いだ』なんて詩的な表現を使うから、彼らがそれを教典にしてしまったわ」

「私だけのせいにするな、エルゼ。……君の『食事に毒を盛る』という告白のせいで、信者たちは今、食事の前に『毒の試練(という名の激辛スパイス摂取)』を儀式にしているんだぞ。おかげでお前に使う嫌がらせのスパイスが手に入り辛くなったじゃないか」


アルフォンスは、もはや教祖の法衣のような、無駄に装飾の多い黒いガウンを羽織らされ、憔悴しきっていた。

彼の手には、王妃様が勝手に認可した『聖殺愛教・総本山』の設立趣意書が握られている。


「……公爵、公爵夫人! 素晴らしいですわ!」

王妃様が、聖歌隊を従えてガーデン兼バルコニーに乱入してきた。


「お二人の『殺愛的宣言』は、愛に悩む迷える子羊たちに、新たな光を与えました! 『愛さなければならない』という義務から解放され、『殺したいほど憎んでも、それこそが愛なのだ』という救済! これこそ、今世紀最大の宗教改革ですわ!」


王妃様は興奮のあまり、私たちの前に、一組の「教祖専用の宝座」を用意させた。

それは、お互いの背中合わせに座ると、首元にちょうど「装飾用の鎌」が交差するように配置された、狂気的なデザインの椅子だった。


「さあ、お座りになって! 信者たちが、お二人の『殺意の祝福』を待っておりますわ!」


(また変人に作らせたわね……)


私たちは、数万の信者がひれ伏す上階バルコニーへと引きずり出された。

私は信者たちを絶望させようと、アルフォンスに向けて本気の呪いの言葉を投げかけた。


「……消えなさい、アルフォンス。あなたの存在そのものが、私の人生の汚点ですわ」


すると、信者たちは一斉に感涙に咽び、地面を叩いて叫んだ。

「ああ! 『あなたのいない世界など、私の人生ではない』という究極の逆説! なんという慈悲深い御言葉だ!」


アルフォンスも、自暴自棄になって剣を抜き、私の足元に突き立てる。

「……貴様を、地の果てまで追い詰めて屠ってやる!」


「『永遠に私だけを見続け、離さない』という誓いの儀式だ! 聖なる追跡チェイス万歳!!」


……もはや、この場では何を言っても「聖なる教え」に翻訳される。

私たちの純粋な殺意は、信者たちの「生きる希望」へと変換され、この国を一つの巨大な「殺愛共同体」へと変えつつあった。


「……エルゼ。……私はもう、このまま教祖として、信者たちに君を暗殺するよう命じたいよ」


「……あら、名案ですわね。……でも、きっと彼ら、暗殺を『究極の接触』と勘違いして、素敵なお花を投げてくるだけだと思いますわよ」


私たちは、教祖という名の「愛の生贄」として、逃げ場のない聖域(監獄)へと祭り上げられていくのだった。

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