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ただ互いに憎み合っていただけなのに、周囲が勝手に溺愛だと勘違いし、愛の権化のように崇拝されました。  作者: 逆立ちハムスター


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愛の巡業

「公爵、公爵夫人! お二人は今や、この国の希望の光。その尊い愛の輝きを、地方で苦しむ民たちにも分けて差し上げるべきですわ!」


王妃様の鶴の一声で、私たちは半強制的に「地方視察(という名の愛の巡業)」へと駆り出されました。


「まったく思いつきで、いつもいつも。こんな埃っぽい馬車で揺られながら、見も知らぬ牛や馬に微笑みかけるなんて、どんな拷問かしら」


私は、窓の外で熱狂する農民たちに優雅に手を振りながら、隣で同じく「慈愛の仮面」を貼り付けたアルフォンスに毒を吐く。


「……ふん、エルゼ。君のその笑顔、日増しに厚化粧(仮面)が剥がれてきているよ。民衆は『愛の女神』を期待しているんだ。もう少し、マシな演技をしたらどうだい?」(さっさと演技に疲れ果てて馬車から転げ落ちろ。そうすれば私は、悲劇に打ちひしがれる夫を演じて、この面倒な巡業を中止できる)


「あら、アルフォンス様こそ。その無理やりな微笑みのせいで、頬の筋肉がピクついていらっしゃいますわよ。……お可哀想に。お疲れでしたら、そのまま永遠の眠りにつかれます?」


ところが、私たちのこの「殺意の火花」が、地方の空気と化学反応を起こし始めた……。



巡業先の農村で、一頭の乳の出に悩む牛が、私たちの馬車の前を横切る。私がアルフォンスへの怒りを込めて、扇で空を切るように仰いだ瞬間、その風を受けた(?)牛が、突然元気よく鳴き声を上げ、無事ミルクを溢れんばかりに出した。


「奇跡だ! 公爵夫人が扇を振るえば、生命の息吹が宿る!」


さらに、枯れ果てていた村の古井戸。

アルフォンスが「……この底に、君を突き落として埋めてやりたいよ」と呪詛を吐きながら井戸の縁を叩いたところ、地層がわずかに動き、十年ぶりに水が湧き出したではありませんかー!


「聖なる一打だ! 公爵閣下が触れれば、大地も喜びに震えて涙を流す(湧水)!」


行く先々で、私たちの「殺意に満ちた行動」が、ことごとく「祝福の奇跡」として誤認され、増幅されていく事に……。

ついに巡業の終着点では、私たちの到着を祝う宗教的なパレードまで開催される始末。


「……アルフォンス。……もう、笑うのも疲れましたわ。……いっそ、このパレードの山車から一緒に飛び降りて、心中したふりでもしましょうか」


「……よせ、エルゼ。そんな簡単に死ねるなら、とうに死んでいるさ。それに……私たちが飛び降りたら、『愛が深すぎて地上に降り立った神の再臨』とか言われて、さらに伝説が強化されるのが目に見えている」


私たちは、頭上に降り注ぐ花吹雪を、まるで毒の霧でも浴びるかのような忌々しい目で見つめる。

沿道では、王妃様から派遣された「愛の語り部」たちが、私たちの奇跡を詩にして歌い上げている。


もはや、私たちが何をしても「愛」となる。

世界が私たちの殺意を拒絶し、強引にハッピーエンドへ書き換えていく絶望の中、私たちは固く(面倒な巡業から一人だけ逃げ出さないよう)手を握り合い、熱狂の渦へと進んでいくのでした。

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