毒入りスープ♡
私たちの「愛の彫像」と「誘惑に屈しない愛」の噂は、王宮の裏側に巣食う者の神経を逆撫でしていた。何者かは、私たちの偽りの愛を暴く最終手段として、「毒」を選んだ。
とある屋敷での夜会ディナーの日。私たちの前に出されたのは、色鮮やかな、しかしどこか不穏な輝きを放つスープだった。
大勢の来客の中に、豪華な装いだが、どこか見慣れない者がいたような気がした。
アルフォンスは、スプーンを手に取り、そのスープを私の方へと差し出した。(この毒で先に死ね。お前の苦悶の顔が見たい)
「さあ、エルゼ。まず君からだ。……愛しい君のために、一口味見させてくれ」
私は優雅にスプーンを受け取った。(あなたの卑劣な罠に乗るものですか。毒見役はお前だ)
「あら、アルフォンス様。私が先では、あなたの愛情が伝わりませんわ。どうぞ、このスプーンに込めた私の『愛』を、味わってみてくださいませ」
私はそう言って、アルフォンスの口元へスプーンを運んだ。
私たちは、日頃からお互いの食事に、ほんの微量の毒(消化促進剤と称した下剤や、不眠症になるハーブなど)を混ぜ合うのが日常だった。もはや私たちにとって、毒は「日常のスパイス」だったのである。
アルフォンスの口にねじ込む。砕けそうになる前歯の痛みで口を開けるアルフォンス。アルフォンスはスープを一口飲むと、眉をひそめた。
「……む。なるほど。……これは、少しばかり刺激が強いな」(これはいつもの毒とは違う。少し効き目が強いが、悪くない)
彼の顔が、わずかに青ざめる。
私はその変化を見逃さなかった。
そう、私は僅かに無意識にポカンと口を開いてしまったのだ。(ついにやった? アルフォンスが用意した馬鹿な刺客のせいにできるの? 本当に!?)と。
暗殺仲間のベテランアルフォンスはその好機を、当然、見逃さなかった……。
私は口にねじ込まれたスプーンで歯を強打し、アルフォンスの二の舞に。強烈な苦味が口いっぱいに広がり、胃がキリキリと痛み出す。
「……ふふ。……最高の刺激ですわ、アルフォンス様。……まさか、こんなに濃厚な『愛の味』を私にくださるなんて」(この毒、なかなかやるわね。まさか胃の粘膜を刺激するタイプとは。だが、お前ごときに私のプライドは傷つけられない)
アルフォンスもまた、私の演技に冷や汗を流す。(あの女、正気か!? あれほど強力な毒を平然と飲むとは……! 私の体ですら、少しばかり痺れてきたぞ!)
私たちは、互いの腹の探り合いと、毒に耐えるという極限の演技合戦を繰り広げた。
結果、私たちの顔は青ざめ、額には脂汗がにじむ。




