決死の覚悟
「……脱獄がバレたのね。いいわ、エドワード! 仲睦まじい私達の絆もここまでよ! モルガン(案内役)を連れて行きたいなら、私の死体を氷漬けにしてからにしなさい!」
馬車の中で、エルゼが今にも飛びかからんばかりの殺気を放つ。
アルフォンスも無言で腰を浮かせ、テオは「もう終わりだ……」と震えていた。
その横で、モルガンはまたしてもいつの間にか奪っていたアルフォンスの二本目のナイフを、うっとりと眺めながら磨いている。
「……ふむ。終わる時は終わる。それが騎士の定めというものだ」
「……貴様、……いい加減にしろ」
アルフォンスがナイフを奪い返すと同時に、馬車の扉が蹴破るように開かれた。一行は覚悟を決めて地面に降り立ち、エドワード王の前に立ちはだかる。
「……陛下、僕たちは、その……!」
テオが必死に弁明しようとしたその時。
エドワードは、深いため息をつきながら、巨大な『愛の急降下』を見上げて呟いた。
「……ああ、エルゼ。いつも良いタイミング来てくれる。……実はな、重要な相談があるのだ」
「……え?」
「見ての通り、あの『凪』を説く連中が来てからというもの、この偉大なアトラクションたちの利用者が激減してな……。維持費(人件費)ばかりがかさんで、国庫を圧迫するかもしれないんだ。……そこで皆と相談していたのだが……」
カイルが、大剣を杖代わりにしながら、酷く真剣な顔で頷く。
「……これらを解体して、城壁の補修材や、最前線の兵器の材料に再利用すべきかどうか……。だが、これはお前たちが愛を込めて(狂って)作ったもの。勝手に壊すのも忍びないと思ってな。陛下はずっと決断を控えているんだ。……それで、どう思う、エルゼ。……やはり、鉄屑にするしかないのか?」
「…………は?」
エルゼの扇子が、ポロリと手からこぼれ落ちた。
ソフィア王妃も、困ったように眉を下げて微笑む。
「そうなのよ、テオちゃん。最近は誰も叫ばなくなってしまって、王都の活気が足りないわ。……どうかしら、この巨大な鉄の塊、何かに使えないかしらね?」
あまりの拍子抜けに、背後で隠れていたルナがズッコケ、エトワールが「キュ……?」と首を傾げる。
モルガンは馬車の中で優雅に微笑んでいた。
「おやおや、陛下。これはまた……。『王の苦悩は鉄の屑、愛の奇跡は錆びゆきて。壊すか遺すか、神のみぞ知る……』。……まさに、喜劇の極みだね」
シアンが楽しげに竪琴を掻き鳴らす。




