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【連載完結】ただ互いに憎み合っていただけなのに、周囲が勝手に溺愛だと勘違いし、愛の権化のように崇拝されました。  作者: 逆立ちハムスター


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狂気に染りし鍵

人目につかぬよう、王都郊外の薄暗い林に身を潜める一行。

草むらに隠れながら、エルゼが苛立ちを爆発させていた。


「……ねえ、モルガン。さっきからわざわざ遠回りして、景色なんて眺めてるんじゃないわよ! この暗殺者、逃げる隙でも窺ってるの!?」


「……計算によれば、……このルートは目的地に対して30%のロスだ。……説明しろ、モルガン」


アルフォンスもナイフを弄びながら、冷徹に問い詰める。テオは泥だらけになった服を払い、ルナは周囲の生体反応を警戒していた。


「おやおや、みんな。そんなに尖らなくてもいいじゃないか」

シアンが竪琴をポロンと鳴らす。

「『逃亡の森、木漏れ日は毒。焦る心は空回り。けれど見上げた空の色、これもまた一興……』。……たまにはいいじゃない、ピクニック気分でさ」


「うるさいわよ、能天気詩人!」

エルゼの怒号が響く中、モルガンは落ち着き払って、懐から取り出した真っ赤なリンゴを優雅にかじった。


「……ふん。……たまには外の景色も見たいだろう? 幽閉生活は長かったからな。……まあ、安心しろ。これでも私は、レテへ行くための『最短ルート』へ向かっている」


「最短ルート?」

テオが首を傾げる。モルガンはリンゴを飲み込み、不敵に笑った。


「レテは極北の果て。普通に行けば頑丈な砕氷船と、数ヶ月の月日、そして膨大な食料が必要だ。だが、そんな準備をしていたら、あの凪の連中に追いつかれ、王都は完全に沈黙するだろう」


「もったいぶらずに言いなさいよ! その最短ルートって何なの!?」

エルゼが詰め寄ると、モルガンは淡々と、けれど重みのある言葉を放った。


「……君たちが作った、あのイカれた『愛の急降下エターナル・ドロップ』だ」


「「はぁぁぁ!?」」

エルゼとアルフォンスの声が重なった。


「……あれは、もともとドワーフが神の領域へ到達するために設計した、次元を穿つための加速装置なのだよ。……君たちは知らずに、その設計図を再現してしまった。……そして、これが必要だ」


モルガンは、先ほどの白いメダルを弄った。カチリと音がすると、メダルの中心部から、青白く、凍てつくような輝きを放つ小さな結晶が現れた。


「……これは『熾天使の涙の欠片』……聖地レテに残された聖遺物の一部だ。……これと、その聖獣エトワールが持つ『アルカナ魔法』……。……これらをあのドロップの最高加速時に共鳴させれば、空間は歪み、一瞬で極北のレテへと転移ワープできる」


「……あのアトラクションで……ワープするって言うの……?」

ルナが計算機を叩く。その数値を見て、彼女の顔が青ざめた。

「……無茶よ。……理論上は可能だけど、……加速時のG(重力)と魔力共鳴の負荷で、……文字通り『死と生の境界』を反復横跳びすることになるわ……!」


「いいじゃない。……最高にロマンチックな旅路だわ」

エルゼが扇子で口元を隠し、獰猛に笑った。

「……自分たちが作った地獄の機械が、神の国への切符だったなんて。……アルフォンス、……振り落とされないようにしなさいよ?」


「……フン。……お前こそ、……恐怖で私の腕を掴まないことだ」


テオは、腕の中のエトワールを見た。エトワールは、モルガンの持つ結晶を見つめ、静かに「キュイ……」と、覚悟を決めたように鳴いた。


王都に残された、狂気の象徴。

そこへ戻り、自ら「急降下」することで、彼らは神の領域へと足を踏み入れる。

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