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愛は死んで義務(結婚)だけが残ってしまいました。  作者: 笑顔の裏に離婚届と凶器


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11/17

嵐の夜

ダンスコンテストの日の深夜は、嵐が街を襲っていた。


ダンスコンテストで「30年間の強制労働」という名の呪いを課せられた私たちは、もはや限界に達していた。

正面突破が無理なら、物理的な「退場」を前提とした最終計画へ移行するしかない。


私は執務室で羽ペンを走らせる。

認めているのは、私の死後、アルフォンスの全財産を合法的にむしり取り、彼を路頭に迷わせるための「偽造遺言書」だ。


「……いいわ。私が病死したと見せかけて国外へ高飛びしたあと、彼には莫大な負債と、私の『いかに彼が愚かだったか』を綴った暴露本だけを遺してあげる」


一方、隣の部屋ではアルフォンスも、不穏な笑みを浮かべて羊皮紙に向かっていた。

彼が記していたのは、エルゼが死んだ(殺した)後に、彼女を「悲劇の聖女」として祭り上げ、その「清らかな遺志」を継ぐ夫として生涯独身を貫き、国民の同情を買いながら権力を掌握するための「偽りの回顧録」


「……完璧だ、エルゼ。君の死後、君の名前は永遠に私の踏み台として輝き続けるだろう」


お互いに相手を社会的に抹殺するための「遺言」を完成させた、季節外れの猛烈な嵐は、例外なく屋敷をも襲った。


凄まじい突風が窓枠を叩き割り、私たちの執務室に吹き込む。

机の上に置かれた「殺意の証明(書類)」は、無情にも夜空へと舞い上がった。

「なぁぁぁ!!!!」

私の声は、簡単に嵐の音にかき消された。


嵐が去った翌朝、その紙片はあろうことか、王都の広場や教会の庭園に、まるで天からの啓示のように降り注いでいたのだ。


朝食のテーブルで、私たちは届けられた「号外」を手に、絶句する。


「見たか! エルゼ様の遺言書を! 『私のすべてを彼に捧げる(財産没収の文言)』『彼を一人にしないで(借金で拘束する文言)』……なんと健気な愛だ!」


「アルフォンス様の手記も凄まじいぞ! 嵐が運んできたのは、二人の魂の叫びだ! 『彼女を永遠に聖なる存在として守り抜く(神格化して利用する文言)』……これぞ真実の愛の誓約だ!」


私の「財産没収計画」は、『身の回りのものすべてを夫と共有したいという、究極の献身』に。

彼の「聖女祭り上げ計画」は、『死の淵に立っても妻の誇りを守ろうとする、騎士道精神の極み』に、見事に脳内変換されていた。

国民は「嵐ですら、隠されていた二人の情熱を隠しきれなかったのだ」と涙を流している。


「……アルフォンス様。あなた、私が死んだあと、私を教会のステンドグラスにするつもりだったのですか?」


震える指で、彼の書いた「回顧録(捏造)」を指差す。

アルフォンスも、引きつった頬をぴくつかせながら、私の「遺言書(偽造)」を凝視していた。


「……君こそ、私の貯蓄から隠し資産まで、すべて『愛の証』として管理するつもりだったとは。……驚いたよ、エルゼ。君の愛(執念)は、金銭の価値すら超越しているらしい」


視線が、火花を散らす。

周囲の侍女たちは、私たちの「死後まで見据えた愛の深さ」に感動し、もはや号泣して仕事にならない。


「……死ね。アルフォンス。……死んでも、私の書いたこの『借金まみれの台本』からは逃がさないわよ」


「……光栄だね、エルゼ。……君を聖女の檻に閉じ込めるためなら、私は地獄の門番にだってなってみせるさ」


結局、この二つの書類は『嵐が運んだ聖典:永遠の愛のバイブル』として一冊の本にまとめられ、ベストセラーを記録した。

私たちは、死ぬことすら許されない「愛の象徴」として、さらに強固に結びつけられてしまったのだ。

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