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【連載完結】ただ互いに憎み合っていただけなのに、周囲が勝手に溺愛だと勘違いし、愛の権化のように崇拝されました。  作者: 逆立ちハムスター


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かつての否定者

王都の片隅、静寂に守られた離宮。

そこには、かつてエルゼとアルフォンスの命を狙い、愛という言葉を呪った男、モルガン侯爵が幽閉されていた。


窓の外では、白い法衣を纏った者たちが静かに花を配り、人々が虚ろな表情で歩いている。

モルガンは、その光景をかつての鋭い騎士の瞳で見つめていた。


「……ふん。私がかつて望んだ『愛のない世界』が、これほどまでに醜く、寒々しいものだったとはな」


彼は、食事を運んできた使用人の手が、かつてのような震え(毒を盛るのではないかという緊張感や、愛殺教徒としての興奮)を失い、ただの機械のように動いているのを見逃さなかった。


モルガンは羽ペンを取り、一枚の手紙を書き上げた。

それは、かつて自分が否定し、そして敗北した「天敵」への招待状だった。


数日後。公爵邸に届いたその手紙を、エルゼは不快そうに、けれどどこか縋るような思いで眺めていた。


「……モルガン? あの、私の暗殺を企てたしつこい男かしら。……『お前たちの愛が病かどうか、私が診断してやる』ですって。相変わらず、無礼な男ね」


「……だがエルゼ。……今の我々に、これほど明確に『我々の愛(殺意)』を知る者は他にいない」


アルフォンスの言葉に、エルゼは唇を噛む。

王宮は沈黙し、街は凪に沈む。自分たちの存在意義を疑い始めた今、かつて自分たちの「偽りの愛」を一番近くで暴こうとし、そして信じた男の言葉は、毒か薬か。


「……行くわよ。テオ、ルナ、シアン。貴方たちも来なさい。……あの男が、この『凪』の正体について何を語るのか……確かめる必要があるわ」


テオたちは、初めて聞く「モルガン」という名に戸惑いながらも、両親と共に離宮へと向かった。


そこには、幽閉生活で白髪こそ増えたものの、かつての凄まじい闘気を「静かな覚悟」に変えたモルガンが、椅子に座って待っていた。

彼は、テオたちの後ろに立つエルゼとアルフォンスを一瞥すると、不敵に笑った。


「……久しぶりだな、化け物夫婦。……顔色が悪いぞ。……まさか、あのような『空っぽの正論』に、お前たちのその汚らわしくも眩しい熱量が、消されかかっているのか?」


モルガンの声は、凪に沈んだ街とは正反対の、低く、力強い響きを持っていた。

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