第7話
「次の目的地は北東にある廃墟か」
「人の手が加わった形跡があるので、もしかしたら我々よりも前に誰かがこの星を調べていたのかも知れませんわ」
俺達は酒場でウォルトから今回与えられた仕事の整理をしていた。
キャンプ地から北東に廃墟らしきものを確認したので、そこに生存者がいる場合は捕獲、敵がいる場合はデータを持ち帰り殲滅。
別のハンターも既に出発したらしいが、消息が途絶えたらしい。
「この星には物騒な二つ名があるそうですわ」
ターニャが即席で作ったサンドイッチを頬張りながらセーニャの話に耳を傾ける。
「ああ、それはウォルトに聞いた。〈ヴァルグレイヴ〉灰と血に染まった戦乱の星か」
「廃墟には怨念が残っておりますので、ディオギス様はわたくしから離れないようにお願いしますわね」
「はいはい……」
魔力を持たない俺だけが彼女達に守られないといけない立場で悔しい。
「不死者が相手でしたらぁ〜、私の魔法で何とかしますよぉ〜」
ホットコーヒーを持ってきたターニャはそう言うとにこりと微笑んだ。彼女は聖職者なので不死者がもし相手であれば相性抜群だ。
◇
俺達がこうして未開発の惑星を探索することが出来るのは、創世神イリアと呼ばれる女神の加護を受けたアイテムのお陰だ。
今回コロニー連合のお偉い方から〈ヴァルグレイヴ〉の探索と生存している魔物討伐を一任されているのが俺達のギルマスであるウォルトだ。
彼はかつてとあるコロニーの中で異種生命体を討伐する軍を率いていたらしいが、戦乱の中で片腕を失い軍から脱却。その後マイデン家に仕えてくれていたのだが、俺が追放されたと同時に彼もマイデン家を抜けた。
何故あの時俺を拾って連れ出してくれたのかは分からないが、あの時ウォルトが一緒にコロニーから出てくれたお陰で今の俺が生きている。
イリアから携わったアイテムと、彼の扱う魔法は、魔物を一切寄せ付けない結界を展開している。それがちょうどこのキャンプ地がある場所一帯にあたる。
この結界から飛び出して魔物の攻撃を受けずに探索を進めるかどうかはシールドが使える魔法使いや、聖魔法が使える聖職者が必須。
難点は、常に結界を展開しているウォルトは動くことが出来ない。故に彼は他のハンターや俺達に指示を与える役と魔物の死骸を証拠として提出し金に変える仕事を担っている。
「未開惑星の開発って言ってもあちこちジャングルじゃねえか。一体お偉いさんは何考えてんだか」
はっきり言ってこの状態では人間が住むのは難しい。魔物は多いし、ジャングルを切り開かないと作物を育てることもままならない。
「まずは魔物殲滅が目的なのではないでしょうか? 人々は魔力があっても戦は出来ませんわ」
まあ魔物殲滅の依頼があるから、俺は魔力がなくてもここで生きていられる。
それに、ここに生息すると言われている“魔力を提供する魔物“を狩って力を得られなければ、生活する場所がない。
もしも、俺が魔力を得られないまま魔物が他のハンターに殲滅された場合は──。
「ディオギス様?」
ぴたりと足を止めた俺を心配して二人の女性が側に寄ってきた。
「ディオギス様、お疲れでしょうか……少し休憩なさいますか?」
「いや……大丈夫……」
俺が狙っている魔物から魔力を得られなくて、やっぱり彼女達が期待する勇者様でなかったら、きっと俺から離れていくのだろう。




