第49話 運も実力のうち
巨大な城は多分この周辺が見えているだろう。だから、セーニャがグラン達の方向に向かうのはバレてしまう。
何とか注意を引く為に、俺は城の足元に潜り込んだ。
例えデカブツでも構造は城だ。まずは足を狙って歩けなくする。
「旋風斬華!」
俺は鉄だろうが、魔力防壁だろうが、何でも斬ることが出来る。
こんなデカブツ、一刀両断にしてやる──!
「おおおおっ!!」
もう一度念を込めてティルファングをきつく握りしめる。宝石部分が緑色に光った瞬間、足元で竜巻が起きた。
風の力を帯びたティルファングで左足を切り落とす。巨体は重心を崩し、左側の魔力を吸収していた塔が合体から離れた。
偶然とは言え、魔力が失われたことで動く城は突然動きを止めた。
「は、はは……運も実力だってな」
しかし油断はできない。俺はまだ元気な右腕方向に飛んだ。
中から魔物が出てくるかと思いきや、気配は何もない。
魔力を持たない俺にはアルヴァンが居るのかは分からないが、先ほどセーニャが警戒しなかったところを見ると、もう大ボスは居ないようだ。
元は塔だった右腕部分も胴体から切り離す。やはりエリオーネがティルファングに加わったことで俺自体に魔力が無くても剣が強くなった気がする。だから範囲攻撃の旋風斬華でもここまで高火力に転じるのだろう。
「いやあ、魔力ってすげえ……」
とはいえ、俺が強くなった訳ではないし、もしもエリオーネが剣の中から魔力を放出しているならば、ごく普通の切れ味に戻るだろう。
慢心している場合ではない。足は動かなくしたからこれで暫くは大丈夫だろう。
「撤退までの時間は稼いだから、後はグラン達と合流して──?」
生暖かく、そして気持ち悪い風が吹いた。
嫌な予感がする。まさか、暗殺者達がやられちまったのか?
いや、あいつらは多分殺しても死なないはずだ。
グランなんてウォルトと約束しているくらいだから、その辺りチラつかせてやれば元気になるはず。アンナの方は知らんけど……。
全力疾走でセーニャが向かった方角に突き進むと、そこにはまた黒獣達が集まっていた。
「お、おい……嘘だろ、こんな化け物を」
グランとアンナは体力こそ回復していないが、大きく抉られた腹部の傷は治癒魔法で完全に塞がっていた。
彼と目が合い、やっと来たのかと鼻で笑われるが、これはまた相手が悪い。
400匹ほど同じような獣を倒した二人だが、新たに合流したのは共食いをして魔力を吸収した強化版黒獣が二匹、そしてそれを吸収したアルヴァンがニタリと笑みを浮かべて待ち構えていた。
「あいつ、魔力吸収し過ぎて気持ち悪いことになってんなあ……」
魔獣を取り込んだ時点でもはやアルヴァンは人を捨てていた。当初の不老不死の研究から最強の生命にいきつき、少しずつ人間としての感情や思考が欠落していったらしい。
塔でエリオーネ達の魔力も吸収したことで彼は獣と同化した。もう俺達の姿を見ても人の言葉を発さない。
「ラスボスが元人間とはなあ……」
アルヴァンは両腕を黒獣の皮膚に変えており、顔は魔獣のまま、そして頭には二本の角が生えていた。最後の食事を終えたところで満足そうに黒獣の死骸を無造作に地面へと投げつけた。




