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第47話 この星で住むために


 一方、城の方ではイリアが魔力を分け与えてもらったことで機嫌を良くしていた。


「ん〜。セーニャの魔力も美味しかったなあ。さて、と」


「ああん……イリア様、それ以上は内緒ですわよ」


 頬を赤らめるセーニャ。俺は勇者様と慕ってくれた彼女を奪われたみたいで、イリアに軽く嫉妬した。

 でも相手は自称創世神。

 下手に突くと俺達は存在も消されるんじゃないかと思う。


「イリア、とりあえずこの世界のことを教えて欲しい」


「えっとねえ、ここは灰と血に染まった戦乱の星と呼ばれている場所で、コロニーからの移住には適していないんだ」


 あまりにも衝撃的な発言に、俺は当初の目的を見失いそうになった。

 隕石の衝突でコロニーが潰されてしまい、人が生きる場所がなくなるから移住出来る星を探していた。

 そして政府が何年もかけて見つけたのがこの星だった。

 母なる星、アルカディア──創世神イリアが作り上げた大陸に限りなく近いここは、先住の魔物さえどうにかしたら人間が住める。

 政府はありったけの腕利きを集めてこの星に派遣したが、先発隊で帰ってきた人間はほんの一握りだった。

 それでも戻った人間は高揚したままあの星はコロニーとは違う、大地と再び生きることが出来ると鼻息荒く語ったらしい。

 第二陣として、現在ウォルトを筆頭にモンスターハント部隊が結成された。


 ここまでがウォルトから聞いた話だ。


「じゃあ、俺達がやってきたモンスターハントは無意味なのか?」


「ううん、魔物がいるとそもそも移住出来ないから、ディオギス達がやっていることは間違いじゃないよ」


「じゃあ、どうして……」


「この星に人間が住める場所であるのは間違いない。けれども、その為にこの星が人の戦意を高揚させて争いを引き起こす核を潰さなければいけないんだ」


「カク?」


「うん。星の心臓だね。どこにあるかわかんないけど、それを潰さないと魔物は凶暴だし、住んだ人間も荒ぶって危険なんだ」


 なるほど、この星が【灰と血に染まった戦乱の星】と呼ばれるのは間違いではないようだ。


「それで、今のイリアはどれくらい滞在できるんだ?」


「そうだなあ、セーニャがもう一回えっちしてくれたらあと30分くらいは──」


「短っ!」


 体液交換とかナントカ言っても結局滞在時間は変わらないじゃないか。

 しかもイリアがトンデモ発言をする所為でセーニャは顔を真っ赤にして目の前で語る幼女のローブを引っ張っている。

 二人の間に何があったのか、絶対に聞いてはいけない。

 

 そういえば、この自称創世神はどこから来て、なんで俺達に力を貸してくれるのか。


「なあイリア。ティルファングを俺に与えてくれたのはなんでだ?」


「んふふ、それはね、──が、──で」


「聞こえないよ、どうした?」


「あうう、タイムアップ。ごめんにょ」


 風船が割れるように、イリアは突然パチンと姿を消した。この嵐のような登場と撤退の様子を見ていると、彼女が今、ここに存在していたのか疑いたくなる。


「あら……イリア様は間違いなく、わたくしとまぐわりましたわよ?」


「……ごめん、俺の頭がついていけない」


 鎖骨に見せつけるかのようにつけられたキスマークをみて、俺は幼女相手に強烈な敗北感を味わった。

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