第45話 魔力ってすげえ
「今回はすごい魔力だね、ディオギス!」
唐突に俺とエリオーネの間に乗っかる幼女──もとい、自称創世神イリアは嬉しそうに俺に抱きついてきた。
いやちょっと待て、エリオーネを助けて欲しいのになんで俺に抱きついてくるんだ。
「お、おい……出てきてくれたのは有難いけど、エリオーネを……」
「えっ? なんかあった?」
「いや、だからエリオーネの傷を……」
目の前にいるはずのエリオーネの存在を探すが、彼女は何処にも居なかった。
やはり魔力を俺に注いだ影響で肉体が消滅してしまったのか。兄らしいこと、何一つしていないな……
「エリオーネ……って言うのかこの子。ティルファングの中にいるよ?」
「──はい?」
イリアが指差したのはティルファングの柄部分に当たる宝石だ。そこは祈りを込めると色が変わり突然頭の中に呪文というか技の名前が浮かんでくる。
小難しい詠唱とか、精霊やなんかの契約ってのをすっ飛ばして使えるからティルファングは万能な剣だと思い込んでいたが、実は違うらしい。
「ティルも、エリオーネもそこにいるよ。今のディオギスなら召喚出来るんじゃないかな?」
「つまり、二人とも死んだわけじゃないのか?」
「うん、ずっとそこで魔力無くなって寝てるね。あれ、言わなかったっけ?」
思わずズッコケそうになった。ティルの話は全く聞いていない。
「ティルを助ける方法を聞く前に、イリアがここに居るのは三十分が限界だって居なくなっただろ」
「あはは、それは仕方がないよ。だってディオギスの命もらうわけにいかないから」
俺の服に顔をすりすりしながらイリアは瞳を閉じて唇を突き出してきた。
「なんだよ、それ」
「魔力を貰わないと、ボクはこの世界に留まれない。魔力伝搬は体液交換なんだよ」
「たい……」
だから初対面のイリアにいきなりキスされたのか。早く、と急かされてもなかなか心の準備が整わない。
マゴマゴしていると突然風の魔法に吹き飛ばされた。
てっきり下のフロアの魔物が迫り上がって来たのかと思いきや、般若のような形相のセーニャがイリアを無理矢理拘束してキスしていた。
なんで俺はいきなり百合のシーンを見せつけられているんだ。ちょっと羨ましいような……
いかんいかん、このままだと俺までグランのように変態になってしまう。
ねっとりしたキスに見惚れている場合ではない。セーニャがイリアの相手をしている間に階段に魔物が密集していた。
エリオーネの魔力を受けた俺は何故かその数を見ても何とも思わない。寧ろ、身体から沸る力を放出したくて右腕が疼いた。
「よっしゃ、エリオーネ……一緒にいくぞ! 氷牙連撃!」
ティルファングから脳に直接技の名前が送られる。身体が羽のように軽い。まるで別人に生まれ変わったように俺は閃光のように敵陣を駆け抜けた。
氷の刃が次々と魔物の核に突き刺さり、その巨体を凍結させていく。魔物同士の共喰いが出来ないよう完全に氷付けにすることで侵食を防ぐことに成功した。
魔力ってすげえ。
もはやチートじゃないか。
こんなものを最初から持っていたら、何も苦戦しないでランクの高い魔物も倒せたのでは?
周囲の魔物を氷の像にしたところで2階にいる二人に視線を戻す。
イリアをこの世界に留めるには魔力を伝搬する「体液交換が必要」とは言っていたが、キスどころか二人の甘美なる世界はとんでもないことになっていた。
デバガメはいかん。
俺は何も見なかったことにして外にいるグラン達の応援に向かった。




