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第40話 いざ、セーニャのもとへ


 朝になり、俺達は初めてチームを分断した。 

 グランとアンナ、リオは正面から黒狼達を引きつけて討伐、出来るだけ派手に。

 俺、エリオーネ、ターニャ、はエリオーネの案内に沿って西側の勝手口から侵入。使用人の部屋が並ぶところで身を隠しつつ二階に登る。

 建物内部にも魔物がいた場合は可能な限りターニャとエリオーネの魔法で眠らせて進む。戦闘は極力避けること。


「アルヴァンに会ったらとにかく建物から降りてこい」


「えっ、どうして?」


「お前では勝てないからだ。昨日、イリアを召喚しただろう?」


 グランは俺の力を知っているのだろうか。イリアを召喚したのか、彼女が勝手に出てきたのか分からないが、確かにあんなに寝たのに疲れが取れない。それに、ティルファングの光が弱い気がする。


「グラン、あんたはイリアと俺の力を知っているのか?」


「ああ、イリアとは昔旅をした。それだけだ」


「それだけって、イリアは──」


「ちょっと、あんたグランに食いつかないで頂戴!」


「あ、はい。すいません……」


 突然乱入してきたアンナはグランが絡むと別人格のように怖い。特に女に対しての牙の剥き出しは強く、ターニャとエリオーネはグランに話しかけることすら許されない状況だ。

 グラン達暗殺者(アサシン)に惚れたリオは一緒のチームで獣狩りが出来ることを喜んでいた。

 セーニャを救出する為に数日前から矢を練って増産していたらしい。


「いきましょう。多分、セーニャに時間はないわ」


 確かにセーニャが囚われてからもうすぐ一週間になる。彼女とどうやって出会ったのかも思い出せないのに、このまま生き別れたら気分が悪い。

 先に暗殺者(アサシン)チームが動いた。昨日偵察した通り、黒い獣の魔物が二匹、白い獣が一匹、追加で何やら見たことのない魔物もいたが、二人の敵ではない。


「いくぞアンナ」


「応!」


「ぼ、僕もいきます!」


 まずは正面にいる黒い獣を惹きつける為に派手に火の術を起こす。地面から燻る煙に寄ってきた獣にアンナの毒を塗った手裏剣が飛ぶ。

 リオは拡散の矢を空に放ち、敵がどこから襲ってくるのか分からないようにしつつ全体にダメージを与えていた。

 矢の雨を避けつつ、グランが敵の懐に潜り込み小太刀で斬りつけていく。続いてアンナが回るように敵を切り刻む。

 鮮やかな二人の舞はバタバタと獣の敵を仕留めて行った。


「見惚れている場合じゃない! 俺達も行かなきゃ」


「こっちよ」


 エリオーネはさすが自分とアルヴァンが作った城だけあって内部をすいすい進んだ。

 途中、使用人らしき魔物に遭遇したが、彼らはエリオーネの顔をみた瞬間、アルヴァンが戻ってきたと勘違いして頭を下げてきた。


 彼女のおかげで魔物と戦うこともなく予定通りに二階に到着する。


「問題はここからよ。ひとつ確認させて頂戴」


「なんだ?」


「もしもよ、セーニャが敵になったら攻撃できて?」


 エリオーネの瞳は真剣だった。

 つまり、セーニャは幽閉されている間にエリオーネが最初そうだったように敵になっている可能性が高い。

 まして魔獣と同化するほど変態なアルヴァンに捕まったのだ。何をされたのか見当もつかない。


「……セーニャに剣は向けられないけど、あいつを救う為に最善の行動を取りたい」


「それを聞いて安心しましたわ」


 質問の意図は分からなかったが、俺は彼女の不敵な笑みにも気づくことができなかった。

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