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第33話 V S ガマ


「おいクソガキ」

「俺はディオギスだ」

「なんだっていい。おれはウォルト以外は興味がない。それに、このガマはランク3くらいだろう。お前の力を見せてみろ」


 いきなりグランはそう言うと戦線離脱した。毒霧は払ったのだからあとはお前達でどうにかしろという算段らしい。

 確かに彼のランクはずば抜けて高そうなので、いつまでも頼りにする訳にいかない。

 寧ろ、俺達も戦えることを見せないと、このグランという男は惑星探索はウォルトと二人でやってやるとか言いかねない。──しかもそのまま愛の逃避行とか言いそうだ。


 俺は今ティルを召喚できないが、強い意思の力で技が編み出せることを知ったので、またそのイメージを練ることにした。


「相手が強かろうとなんだろうと……俺は最強剣士、だっ!」


 ティルファングが赤く光る。炎をイメージしてそれをぶつける。


俺は、最強の炎技を使う剣士、最強の炎技を使う剣士──!!


灼空覇斬アポカリプス・レイヴン!」


 何故か身体が軽かった。こんなに飛べるはずないのに、俺の身体はティルのように俊敏に動き、ガマの魔物の身体を蹴り、頭上まで跳んだ。

 炎を纏ったティルファングはカエルのぬめる皮膚を易々と焼き斬った。

 魔物の咆哮と共に握り直した剣を真横に薙ぐ。

 左腕を失ったガマは長い強酸性の舌を伸ばして俺の服に絡みついてきた。


「やば……!」


 鎧を着けていないディオギスは直接酸性の体液を浴びたことで脇腹を火傷した。

 痛みに構っている場合はない。舌を斬り落とさなければ全身溶かされてしまう。


「かってぇ……」


 思わず先ほどの覇気が消えてしまった。意思の力が弱まるとディオギスの力は半人前以下に落ちる。


「アロー・レイン!」


 リオがすかさず俺に当たらないようにガマの全身に矢の雨を降らせた。


「ディオギス様、目を閉じててください!」


 もう一発リオの構えた矢には閃光弾という目眩しの魔力瓶がつけられている。一瞬ガマの舌が怯んだ瞬間、体を小さくしてするりと拘束から抜ける。


「た、助かった……ありがとう、リオ」

「いえ、ごめんなさい。すぐに矢が練れなくて」


 細かい魔力を大量に使う矢を増産するのは、まだ12歳と幼いリオには難しい。オタマジャクシの分散した小物を蹴散らしたエリオーネとターニャもこちらに合流した。


「ディオギス様、大変ですわ……! 火傷が」

「あら、ターニャお得意の治癒魔法(ヒーリング)を使うと良いのではなくて?」

「そ、それは……」


 何故かターニャは口篭った。ターニャは聖職者(プリースト)だ。なのに魔法使い(ウィザード)としての力もある。そして今ディオギスの火傷を治せるのは彼女しか居ないのに、何故かスキルを使おうとはしなかった。


「この程度の火傷なら動ける。そんなことよりもあのガマ……皮膚が硬くなったぞ」


 リオの放った矢から魔力を吸収したガマは瞳の色を赤に変え、巨体をさらに大きくした。

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