第28話 不在のギルマス
魔力を奪われ続けているセーニャは自分の意識を保つだけで必死だった。
もう幾日この鎖に繋がれているのか分からない。それに、助けたあの女はディオギス様の下にたどり着いたのだろうか。
頭が白く霞む。あの女の名前は──なんだっけ。
「ああ、ディオギス様……」
──
──
姉の切なる波動が切れかけていることに、ターニャはびくりと身体を動かした。せめて方角だけでも分かれば探知出来るのにこの距離が歯痒い。
「ターニャ?」
「大変ですわ、お姉様の波動が弱っています……」
確かにセーニャが居なくなってからもう何日も経過している。それに、アルヴァンがこちらにはセーニャが居るようなことを匂わせていたので、エリオーネを失った今、今度はセーニャをけしかけてくる可能性だってあり得る。
そうなったら姉妹戦だ。それだけは絶対に阻止しなくてはならない。
「ターニャ、とりあえず今はイリアって子に会いに行こう。きっとその人がティルやセーニャを助けてくれるはず」
創世神と同じ名前であることにきっと意味があるはずだ。そしてあの女神像を扱ったウォルトに訊けば多分彼女の居場所が判明する。
「リオ、済まないが、この人をみててくれないか?」
「はい、分かりました!」
エリオーネを一人にしておくのは危険だ。彼女は先ほどまで敵だったし、リオであれば得意の弓で拘束出来るはず。
俺とターニャは一階に降りてカウンターにいるはずのウォルトを探した。
「あれ、ウォルトがいない?」
「何だ、ギルマスを探しているのか? 俺達もなんだよ。次の魔物討伐の情報が欲しかったんだけどなあ……」
別の狩人達もやれやれと肩を竦めていた。ウォルトはこの惑星のあちこちに選りすぐりの狩人を派遣するギルマスだ。
彼がこの拠点が安全になるように結界を張っているからここは安全な場所だと戻ることが出来る。
そんな彼が今までギルドを不在にすることなんて無かった。しかも、誰も知らないなんて。
「あの、ウォルトが最後どこに居たか見た人いますか?」
「さあなあ……俺達も今戻ってきたところだから」
嫌な予感がする。あのウォルトが誰かに捕まるとは考え難いけど。
「そうだ、もしかしたら──!」
勝手に入れないかもしれないけど、ウォルトの部屋に行けば女神像がある。あれは創世神イリアの加護がど なんとかって言っていた。
あの蘇生魔法の件はターニャに言ったらダメだって言われたけど、今は非常事態だ。
「ターニャ、部屋の鍵を開ける魔法って使えるかい?」
「え、えぇ……ですが、それはウォルト様の許可が無ければ……」
「そのウォルトがピンチなんだ。悪いけど、俺と一緒にあいつに怒られる覚悟で頼む!」
ウォルトに万が一のことがあれば、イリアを探すどころの話ではなくなってしまう。
悩むターニャを無理矢理説得して俺は二階にあるウォルトの部屋へと足を向けた。




