第11話
「焔雨穿空!」
「旋風斬華!」
纏めてかかってくる小型の魔物は連携魔法で一掃出来る。セーニャの魔力を借りて放つ旋風斬華は炎の渦となり、襲いかかる蜘蛛や巨大な蟻のような魔物を次々と燃やした。
昨日戦った魔物がランク1……魔物の共喰いを防ぐにはウォルトが言うように死骸が残らないのうに燃やすしかない。
「よし、こんなもんか?」
『オオオオオオ──!!!』
小粒の魔物が消えた瞬間、突然地面が激しく隆起し、地下から10メートルはありそうな女王蜘蛛が姿を現した。
ギラギラと光る金色の眼差しが子ども達の残滓を見て怒りに狂い、激しく咆哮する。
その声で地面が更に振動し、廃墟の壁や床に深い亀裂を入れた。
「くっそうるせえ!」
「これは──怪音波ですわ……仲間を呼んでいるようです!」
8本の足を暴れるように動かした女王蜘蛛は今壊した廃墟の壁を伝い、天井部分へ高く飛んだ。
あんなに巨大な魔物が俊敏に動けるのかと視線を動かしてみると、蜘蛛の腹部分に人間の顔らしきものが見えた。
「嘘だろ、あの魔物……人間と同化してやがる」
「まだ人の形が残されているということは、取り込まれてから時間は経っていないかも知れませんわ」
「──セーニャ、あの人間を助けられるか?」
もしも、仲間になってくれるのであれば、戦力は一人でも欲しい。それにこの惑星探索において人命救助はウォルトから受けている依頼のひとつだ。
「どこまであの魔物に吸収されてしまっているのか分かりませんので、手遅れかも知れませんが……」
「やってみるしかないな。魔法は中の人間も殺してしまうかも知れないから、俺が注意を引いてみる」
今後のことを考えると、ティルに頼らずに何とかこの状況を打破したい。仮に意志の強さが俺の力となるのであれば、俺は世界最強と思うしかない。
しかし、いざ10メートルの蜘蛛型魔物と対峙すると若干そのサイズの違いにたじろぐが、ここで怖気付くわけにはいかない。
「──これを試してみるか」
魔法が使えないディオギスは常に魔力を帯びた魔石を持ち歩いている。それはセーニャがコツコツと魔力と魔法を注入してくれたもので、剣士の彼でもそれを魔物に投げつけるだけで魔法が発動する仕組みとなっていた。
流石に範囲魔法のような強力な魔石は作れないようだが、一対一であれば十分な威力を発揮する。




