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王都騎士団を追放された元教官 ―故郷で弟子をとることになりました―  作者: すなぎも


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57 それぞれの道

 火山での戦いを終えて村へ戻った。


 誰も傷ついてはいないが、大量の魔力を使ったのでみんなへろへろだ。本当は騒ぎたいところだが、そんな気力は沸いてこない。


 ミノタウロス・ロードをという達成感でなんとか村までたどり着くと、村の中から鎧に身を包んだ人――六番隊の騎士達が駆け寄ってきた。


「お前ら無事だったのか、よかった。さっきの光は?」

「ヒカリがミノタウロス・ロードを倒した時のやつだよ」

「ミ、ミノタウロス・ロードがいたのか!?」


 驚く彼らに、ヒカゲが影からミノタウロス・ロードの腕を引っ張りだす。あの戦いの中で『高く売れる』と掠め取っていたのは流石としか言いようがないが、緊張感がないと言えるので褒められたものじゃない。


 それでも、ミノタウロス・ロードがいたという証拠には十分すぎるモノ。


「ミノタウロス・ロードが……。じゃあ、バッツ隊長は」

「戦ってる時に吹き飛ばされて。探してたけど見つからなかった」

「そうか」


 短く答えると、三人は顔を伏せた。

 慰めてやりたい気持ちは山々だが、ヒカゲが「早く帰ろ」と肘で突いて来たので。


「騎士団への報告は任せる。疲れたから宿で休ませてくれ」


 そう言って歩き出すと。


「ま、待ってくれ!ルーカス!本当に、本当に悪かった!今回の件だけじゃなくて、色々と!」


 色々と、というのは騎士団を追放された事を含めて謝っているのか。


「別にお前らが謝ることじゃないだろ?やったのはアンジェロとバッツだ」


「だとしても。俺達はそのことに気付けなかった。もっと早く気付けていればこんなことには……」


 六番隊のほとんどがアンジェロとバッツに巻き込まれた被害者だ。彼らに騙され死んでいった騎士達は一番の被害者と言っても過言じゃない。当然、今目の前にいる生き残ってしまった3人も被害者だ。


「ルーカス。騎士団に戻って来てくれないか?」


 問いかけに、仲間の騎士がそれを止める。


「お、おい。それは」

「わかってる!俺が頼めた義理じゃない!そんな権利も権限もない!だけど、きっと大丈夫だ。ルーカスが戻ると言えば誰も反対しない。そうすれば王都騎士団は強かった頃を取り戻せる。そうだろ?」


 こちらを真っ直ぐ見ている瞳に、オレは視線を逸らさず見つめ返す。


 すると彼はひざまずくように両膝をつき、深く頭を下げた。


「騎士団はボロボロだ!もう取り返しがつかないところまで来てる!崩壊するのも時間の問題だ!だからルーカス!頼む!どうか騎士団に戻って来てくれ!」


 静まり返った村に騎士の声が響き渡る。


 長い沈黙のあと、オレが頭を下げる続ける騎士に近付こうと踏み出すと。。


「ダメよ」


 そう言い放ったのはヒカリだった。感情が見えない冷たい瞳で、跪いている騎士を眺める。


「貴方たちが頼るべきなのはルーカスじゃない。まだいるじゃない?バッツの他に頼れる教官長様が」


「だ、ダメなんだ。あいつじゃなにも」

「甘えたことを言わないで」


 ヒカリが伏せていた騎士の胸倉を掴んで無理やり立たせる。


「何様のつもり?あいつがルーカスにしたことを理解しているの?あんまりふざけた事を言ってると」


「ヒカリ」


 怒りが滲む声音を遮る。納得してないと舌打ちをして、ヒカリは手を離した。


「ルーカス。やっぱりお前は騎士団に」

「黙って」


 ヒカゲがオレと騎士の間に割って入る。構えた剣先、寸分の狂いもなく相手の喉元に狙いを定めていた。


「黙ってて。ルーカスが喋る。何も言わずに納得して。それ以外は認めない」


 据わった瞳で睨みつけられ、騎士は黙り込む。


 ヒカゲを手で制して剣をおろさせる。


「騎士団が大変なことになってるのは知ってる。必死に騎士団が動き回ってるのも知ってるよ」


「なら」


「けど、オレは戻らない」


 はっきりと、そのことを告げる。


「オレが戻ったところで騎士団は前のようにはならない。抜けた隊長が戻るわけでもないし、アンジェロはオレを許さないだろうから、むしろ今より状況は悪化する。そんな簡単な話じゃないんだ」


 アンジェロがいる限りオレが戻ったところで騎士団が不安定になるだけだ。むしろ今より状況が悪くなる。アンジェロに少しでも悪気があるなら、本人が会いに来るはずだ。それがない時点で、心中を察することが出来る。


「だからって今の状況がいいとは思ってないから、オレは傭兵ギルドで出来る限りのことをするよ。そっちの方がうまく行く気がするんだ。今回みたいな感じでな」


「で、でも。傭兵達じゃ限界があるだろ。強い魔物には人数で当たらないと」


「大丈夫」


 言いながらオレはヒカゲとヒカリの肩に手を置く。


「オレには仲間がいるからな」


 教官をしてから3年間、彼女たちの働きは見ることは出来なかったが、今日の動きを見て確信した。2人は本当に強くなっていた。ヒカゲとヒカリ、そこにオレが加われば、どんな問題も解決できる。


 それに、村には期待できる弟子がもう2人いる。きっと彼女たちも力になってくれる。


「だから騎士団には戻らない。悪いな」


 騎士は数秒こちらを見つめていたが、小さくうなずいた。


「いや、悪かったのは俺の方だ。ルーカス。それに、ヒカリとヒカゲも。勝手なこと言って悪かったな。申し訳ない」


 そう言って、彼は右拳を胸に当て敬礼した。


「今回の件。しっかりと騎士団に伝えておく。助けてくれて本当にありがとう。王都騎士団を代表してお礼を言おう」


 他の2人も同じように敬礼をする。


「ああ。なにかあったら連絡は……」


 言ったところで、王都騎士団との接触を禁じられていることを思い出す。


「騎士団を辞めたら連絡してくれ。サンベリル村にいるとから、力になるよ」


 その言葉にわずかに目を細める騎士達。


「じゃ、宿に戻るか。今日はゆっくり休んで明日かえろう」


「うん」

「そうね」


 オレ達が宿に戻るまで、彼らは敬礼を解くことはなかった。

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