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王都騎士団を追放された元教官 ―故郷で弟子をとることになりました―  作者: すなぎも


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53 お留守番

 窓がひとつある、床も壁も古木で組まれているこじんまりとした部屋。ヒカリとヒカゲはベッドに腰かけ、オレは寂れた木製の椅子に座る。


「それで。なんでいきなり騎士団から追い出されてるのよ!」

「オレが怒られるの?それは違くない?」

「わかってるわよ。ルーカスのバカ。これでチャラね。それでヒカゲ」


 ん?なにがチャラなの?オレが罵倒されただけじゃない?


「あなたはなんで私に何も言わなかったの!」

「置手紙をお読みでない?」

「読んだわよ!なんで私を待たずに出て言ったのか聞いてるの!」


 詰め寄るヒカリに。


「だって任務でいなかったし」

「3日ぐらい待てなかったの!?」

「時間が勿体ないかなって。ねえ?」

「ねえ?じゃないわよ。全く」


 呆れた様子で、それでも「しょうがないわね」と理解を見せるヒカリ。


「それで、今までなにをしてたの?」

「えっとだな」


 簡単に、ヒカリにこれまでのことを話す。故郷に帰り、ヒカゲがそこに合流したこと。そこで問題なく生活できていることを。


「わ、私のこと放っておいて貴方たちだけのんびり過ごしてたってこと!」


 顔を真っ赤にしてご立腹の様子。


「なんでそのことを私に言いにこないのよ!」

「だってオレ王都から追放されてるし。騎士団との接触禁止だし」

「ルーカスはいいわよ!いやよくないけど!あんな奴らの言うことなんて聞かなくていいのに!」

「騎士団長のお達しだぞ?破ったら牢獄にぶち込まれるわ」


 それはさすがに勘弁である。


「ヒカゲは!貴方はなんで私のところにこなかったの!」

「いや、それは、その」


 困ったようにヒカゲの視線が泳ぐ。ヒカリはヒカゲの頬をがっと掴んで、鼻が触れ合う距離まで顔を近づけて目を合わせた。


「正直に言いなさい」

「こ、こんな感じで怒られるの。わかってたから。いでっ!」


 制裁のデコピンを喰らい、ヒカゲは赤くなるおでこを涙目になりながら抑える。


「これで許してあげる」

「だから会いたくなかった……」

「なんか言った?」

「な、なんでもない」


 唇を尖らせている様子は子供さながらで、反省している感じではないが。


「まあいいわ。それで、なんで2人はこんなところにいるのよ?」

「ミノタウロスの討伐依頼を受けて来たんだよ。そっちは?」

「私達もそうよ」

「ならなんで宿にいるんだよ。騎士団はもう討伐に言ったって聞いたぞ」

「私は留守番なのよ」


 目線を天井に向けて、鎧を脱ぎ軽くなった足をパタパタと動かしながらヒカリは続ける。


「留守番?」

「ええ、留守番。何回かバッツとこうして討伐に出ていたら、留守番係になったのよ」

「留守番係って……。っていうかバッツと来てるのか?」

「ええ、そうよ」


 ヒカリが足を止めて窓の外。ミノタウロスがいるであろう火山を見つめた。


「バッツに留守番してろって毎回言われてたんだけど、隊員に頼むから助けて欲しいって頭さげられてたから助けてあげたわけ。助けてもバッツに文句いわれるのは私だから断りたかったんだけど、さすがに死なれちゃ目覚めが悪いしね」


 少し間をおいて、ヒカリは続ける。


「まあ、そういうお願いしてくる人達はみんな死んじゃったから今日は素直にお留守番してるってわけ」

「死んだって」

「もう六番隊はバッツを含めた4人だけ。その4人だけでミノタウロスの討伐に来てるのよ。この時間だともう死んじゃってるかも知れないわね」


 無表情。興味も悲しみもない。既にどうでもいいことのように、それを口にした。そのまま後ろに倒れ込むようにベッドに仰向けになる。


「そんなことになってたのか」

「隊長が一気に4人も抜けたんだもの、しょうがないじゃない。その代償を支払うべきなのは六番隊が妥当で、今日でその清算が済むんじゃないかしら」


 清算が済む。というのは、恐らく死を意味している。


「相手はミノタウロスだぞ?バッツなら倒せると思うけど」

「そう、ね。今までのアイツなら倒せてたかも知れないけど」


 ヒカリは思い出すかのように目の上に腕を置いて視線を覆った。


「哀れなモノよ。弱さを認められない騎士の成れの果て。ルーカスにも見て欲しいものね」


 そう言って、ヒカリは口を閉じた。


 窓の外には火山。そこからは相変わらず異様な魔力が伺える。


 日が、沈み始めていた。

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