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王都騎士団を追放された元教官 ―故郷で弟子をとることになりました―  作者: すなぎも


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50 人助け

 朝は傭兵ギルドに行き依頼の確認。ソニアとフィオナの実戦になりそうなものがあればそれを受け討伐を行う。それが終わり次第、ソニアはクラフトマスターの練習をしに鍛冶屋へ。フィオナは身体づくりのためにランニングと筋トレ。余った時間で剣の稽古と果実取りで実戦の練習


 そして、夜にヒカゲと模擬戦を行う。最近はヒカゲも昼間の訓練に付き合ってくれている。剣の稽古ではソニアにアドバイスをしたり、フィオナとの果実取りなんかはオレと違って魔眼がないのにひらひらと躱しているので見事の一言。


 ウォーミングアップが済んでいるヒカゲと戦うのはなかなかに骨が折れる。


 それでも。


 オレは剣筋を紙一重で躱して、剣をすくい上げるように振る。


 キィン――と鋼がぶつかる甲高い音が響くのと同時に、ヒカゲの手から剣が飛んだ。空中でくるくると回転し、地面に突き刺さる。


「まだオレの方が強いな」

「むぅ。ちゃっかり魔眼つかってない?」

「使ってたらもっと余裕で勝ってるよ」

「それは、そう」


 不満そうに剣を拾って納めるヒカゲ。


 しかし、前に比べてヒカゲの打ち込みがだいぶ鋭くなっている。受ける時に使用する魔力も前よりあげないと腕にかかる衝撃で剣を落としかねない。


「ん?なに?」

「……いや、なんでもない」


 澄ました顔をしているが、自分で考え足りないところを鍛えているようだ。この模擬戦もオレに付き合ってるわけではなく、ちゃんと強くなろうとしている。てっきり騎士団を抜けてから鍛えないようになると思っていたが、そんなことはなかったらしい。


 しかもやっていることが素振りと筋トレ。普通の騎士ならサボりがちになる部分だ。オレに文句を言われるのを見越してやっているのか、或いはソニアとフィオナに影響を受けているのか。


「偉いな、ヒカゲも」

「なに急に」

「なんでもないよ」


 褒めると逆にへそを曲げそうなので、伝えないことにするが。


「久し振りに頭をなでなでしてやろうかな!偉い偉い!」

「はぁ?なに急に。鬱陶しい」


 嫌々と頭を振っているが、それでも距離を取ったりはしない。むしろ撫でてくれと言わんばかり頭を傾けてきた。意外とわかりすくて可愛い奴である。


 そんやりとりをしながら家に戻る。


「いつもなら帰るのになにしてるんだ?」

「ね。なんだろ」


 ソニアとフィオナが家の影に隠れている。2人がヒカゲとの模擬戦をこっそり見に来ていることには気づいているが、バレていないと思っているのだろう、いつもならすぐに帰っていた。それなのになぜか今日は隠れてこちらの様子を窺っているいる。


「どうした?そんなところに隠れて」


 声を掛けると、暗闇から姿を現した。申し訳なさそうにしているその手に持っているのはギルドの受付嬢に押し付けられた依頼書。受けるとかどうか、模擬戦が終わったらヒカゲと相談しようと思っていたので、机の上に置いていたのを思い出す。


「あ、あの。お兄ちゃん、この依頼受けるの?」

「考え中。言っとくけど2人用のやつじゃないぞ。受けるとしたらオレとヒカゲだ」

「そ、そうだよね。2人でだよね」


 あはは。と困ったように笑うソニア。なにが言いたいのかいまいちわからない。


「興味があるのか?別に面白い依頼じゃないと思うぞ」

「興味があるっていうわけじゃないんだけど」


 歯切れが悪いソニア代わり、フィオナが口を開く。


「私達じゃ邪魔してるんじゃないかと思いまして」

「邪魔?お前たちが?なんで?」


 どういう意味かさっぱりだ。


「依頼を受けたいのに、私達の面倒を見なきゃいけないから村を離れられない……。とか?」


 不安そうに窺ってくる2人。見当違いな発言に、オレは思わずため息を吐く。


「そんなわけないだろ。面倒を見てるつもりはないし、2人がいるから村を離れないって気持ちもない。いや、ある意味ではそういう気持ちもあるけど」

「や、やっぱり」


 瞳に涙を滲ませる2人。慌ててそれを否定する。


「違う違う。ソニアとフィオナを鍛えて楽しんでるのはオレ自身だ。特に最近の2人の成長速度と来たらもう留まるところを知らないだろ?」

「そ、そうなんですか?」


「そうなんだよ。やる気もあるし、ぐんぐん成長してる。その成長を見るのが楽しいから、依頼うけるかどうか悩んでるんだよ」


 最初はお願いされ、暇潰し程度に鍛え始めたが、今では2人の成長がオレの楽しみになっている。


「依頼を受けてもいいんだけど。それ以上にソニアとフィオナを見ていたいってな」


 こんなに楽しいと思えたのはいつぶりだろうか?もともと魔眼という固有スキルを持っていたので人に助言することが多く、その行為自体は好きだった。教官になってからだろうか?そこに義務感を抱くようになったのは。


「まあ、2人がどうこう考えることじゃないから。今日はさっさと帰っ」

「行ってきて!」


 そうオレの言葉を遮ったのはソニアだった。


「困ってる人がいるんだったらそっちの人達を助けてあげてよ!」

「でも、オレはもう騎士じゃないし、傭兵が本職ってわけじゃない」

「それでも!どうにかしたいって気持ちがあるから悩んでるんでしょ?お兄ちゃん達なら困った人たち助けてあげられるんでしょ?だったら行ってあげてよ!」


 真っ直ぐな瞳でこちらを見つめてそう伝えてくるソニア。


 どうしたものかとヒカゲを見ると、こちらに任せる、と目を伏せる。


「わたし達は大丈夫だから!」


 大丈夫、と言われても。心配しているわけではない。わけではないが。助けてあげて欲しい、と。ここまで子供にお願いされたら、それを無下にする必要はないか。


「ヒカゲ、いけるか?」

「ん。いいけど」


 ソニアから依頼書を受け取る。ここからだと馬車を使って2日ほどか。火山の麓で目撃されており、移動中の人達が何回か襲われている。そのせいで近隣の村では気軽に外出できなくなっているらしい。魔物の名前はミノタウロス。


「じゃあ、明日には出るか。2人とも、サボらず訓練しとくんだぞ」


「はい!」

「わかりました」


 気持ちいい返事を受け取り。


「やるか」

「ん」


 ヒカゲと目を合わせて、出発の準備をすることにした。

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