49 困難な依頼
王都騎士団の大量離脱の影響でサンベリル村から出稼ぎに出ている傭兵達はまだ戻ってきていないが、それでも依頼はだいぶ落ち着いてきた。村周辺に出没している害獣駆除はハリドさんなどの村の住人が行い、魔物関連はオレ達が行った。といっても魔物をやったのは主にソニアとフィオナだけど。
「だいぶ片付いて来ましたね!これも皆さんお陰ですよ。こんなにも協力的になってくれるなんて私は嬉しく泣きそうです。えんえんえんっ!」
わざとらしい演技をしながらそう言うギルドの受付嬢。
「村のみんながこんなに強くなってくれると頼もしいよな」
「そうですよ!鍛冶屋とか牧場主とかやめてみんな傭兵になってくれたらいいのに!」
「それは言いすぎだろ」
みんなは普段からギルドに依頼を受けに来る、というわけではない。もしものとき魔物と戦える力を付けたい!という目的がり、訓練の一環として数日に1日だけ依頼を受けに来ていたらしい。
今は商売相手である傭兵達が村にいなくて手が空いているからという理由と、魔物と害獣の目撃情報の依頼がたまっていて危険だからという理由でギルドに来る日を増やしてくれているようだ。あくまで本業は鍛冶屋であったり定食者であったり。傭兵を本業にしようとは思っていない。
「もったいないってのはあるけどな」
駐屯している怠けた騎士よりよっぽど強い。年齢的なところが問題だが、実力で考えれば普通に傭兵としてごはんを食べていけるはずだ。
「ですよね!ルーカスさんから見てもそうなら間違いないですよ!いまから傭兵一本でやりましょうってスカウトしてきます!」
なにやらノリノリな受付嬢は「うひょ~」と言いながら裏口に走り出したが。
「ふざけるな!」
と大きな声が聞こえてくると、すぐにしゅんぼりと肩を落として戻ってきた。
「ギルドマスターに怒られました……」
「だろうな」
「私を慰めると思って厄介な依頼うけてくれますよね?」
「無茶苦茶なこと言うな」
受付嬢が見せてきた依頼帳簿に載っているのは魔物討伐依頼だ。村の周辺に現れた魔物というわけではなく、少し離れた場所の採掘場であったり、森の奥であったり。しかもなかなか強い魔物達。
「ヒカゲお姉ちゃん、次はどの依頼受けたらいいかな?」
「知らない」
「この魔物は私達でも倒せそうですか?」
「知らないって」
依頼掲示板の前で右腕をソニア、左腕をフィオナに組まれているヒカゲ。楽しそうに実戦練習になりそうな依頼を選んでいるようでなによりだ。ヒカゲの目から光が消えている気もするが、微笑ましい光景ということにしておこう。
「ソニアとフィオナにやらせるのには危険過ぎるんだよな」
受付嬢が見せてきた依頼内容はまだ2人には難しい。もうちょっと鍛えてからじゃないとまず勝てない。
「じゃあルーカスさんとヒカゲさんのお二人でどうです?子供たちの面倒見てばかりで最近たまってるんじゃないですか?デートだと思ってたまには遠出しちゃうましょうよ?イチャイチャしましょうよ!」
「バカいえ。こんな危ない相手になにがデートだ。それにヒカゲとはそういう関係じゃない」
全く、ギルドの受付嬢が聞いて呆れる。どんなお願いのしかただよ。
にしても、村からの距離もある。2人をヒカゲに任せてオレ1人で行くのもありだけど、簡単に熟せる依頼でもない。万が一を考えると、やっぱヒカゲと行くのがベストか。たまには思いっきり身体を動かしたい気持ちもあるけど。
「ヒカゲお姉ちゃん!今度わたしが作った武器あげるね!」
「あー……。うん」
「ヒカゲさん。今度私が作った料理食べてくれますか?いまお母さんに教わってて」
「あー……。そう、ね」
ソニアとフィオナのやる気も凄いし、オレも今は2人を強くしたいという気持ちが強い。ヒカゲへの懐き方も凄いしどうしたものか。
「あーあ、この魔物がいるから鉱石の採掘依頼の進みがいまいちなんですよねえ。こっちの魔物がいるから隣の街に行くとき遠回りになっちゃってるんですよねえ!この魔物なんかはぁ!ルーカスさんが倒してくれればいいのにぃ!なかなか受けてくれなくてぇ!」
「うるせえうるせえ!ちょっと考えるから黙ってろ!」
「おー願いします!検討に検討を重ねて検討を加速させて是非うけてくださいお待ちしてまーす!ご予約5件!ルーカス様御一考はいりまーす!」
大声に反応したギルドマスターが裏から顔を出し。
「もうちょっと落ち着いて接客しろ!」
「いっだぁーい!」
受付嬢の頭を思い切り叩いて戻る。
「ひぃーん!私が可哀そうなので絶対に受けてくださいよー!」
そう言って受けて欲しいであろう依頼書をわざざわざ写して渡してくる受付嬢。
この嬢ちゃん、8年前は引っ込み思案であんま表に出てこなかった気がするけど随分と強くなったものである。全く、どうしたものか。




