31 ヒカゲとの模擬戦
サンベリル村に帰ってきて数日が経った。王都を追放された時はどうなることやらと思ったが、いまは平穏そのもの。ソニアとフィオナも順調に力を付けてきており、空き時間も出来てきた。
「考え事?」
風を裂く鋭い斬撃。オレはそれを受け止めると同時に、刃を払い返した。
「そんな余裕あるかよ」
火花が散る。剣がぶつかり合うたびに手には激しい衝撃が走る。
鋭く踏み込んでくるヒカゲ。斜め上から斬り下ろされた刃は訓練だと思えない、こちらの命を断ち切るのに迷いがない正確さ。
それを寸前で受け流し、身体を半歩回転させて背後に回った。ドンッ、と背中に剣の柄で押し込むと、ヒカゲは前のめりに身体を崩す。
「いったぁ。よくも」
「実戦だったら死んでたかもな」
向かい合い、剣が激しくぶつかり合う。金属音が何度も青空に吸い込まれていく。訓練とは名ばかりの、容赦のないぶつかり合い。振りが速すぎて、剣が風を裂く音が鼓膜を揺らす。
終わりは突然。キンッという音と共に、ヒカゲの剣が空中に弾かれた。バランスを崩し足を踏みしめて体勢を立て直したときには、剣の先端が喉元すれすれに止まっていた。
「こんなところか」
「むぅ。ムカつく」
「固有スキル無しの斬り合いだったらまだオレの方が上手だな」
騎士の頃からこうしてヒカゲに稽古を付けていた。固有スキル有りだと歯止めが効かず、殺し合いに発展し兼ねないので身体強化魔法だけを使用した剣での斬り合い。教官時代を含めてもヒカゲに負けたことはないのがオレの自慢。というのは、年下の女の子を相手にしているので、小さすぎる自慢か。
「おっと。そろそろ二人の様子見てくるわ。ほいじゃな」
ヒカゲとの訓練はソニアとフィオナ、二人に指導する合間を縫って行っている。
サンベリル村に戻り、自分の身は自分で守らなくてはいけないようになった。幸いヒカゲがいてくれるので剣の腕は錆びつかせずに済みそうだ。
ヒカゲもヒカゲでまだまだ伸びしろの塊。こんなところで成長を止めてしまうのは勿体ない。教官の頃は極力、平等に鍛えていたので贔屓は出来なかったが、もっとビシバシ鍛えてやりたいというのが本音。
「忙しくなってきたぞー!」
熱心に鍛えていい子が3人もいる。しかもそれぞれ将来有望と来たもんだ。これからどう成長していくのが、楽しみが止まらない。次はどんな訓練をしようかと、ウキウキで考えながらソニアがいる鍛冶屋へと向かった。




