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王都騎士団を追放された元教官 ―故郷で弟子をとることになりました―  作者: すなぎも


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27 親ばかが故に

 疲れ果てたソニアを母親のリサさんとフィオナに任せて、オレはハリドさんと鍛冶場に立ち並ぶ。


「昔からそうだったんだ。何度かソニアに武器の作り方を教えようとしたんだが、毎回こんな感じになっちまう」


「なるほど」


「その度にアイツが悲しそうに諦めちまうんだ。今回はお前がいるから大丈夫かと思ったんだが」


「大丈夫じゃなかったみたいですね。オレがもっと確認してればよかったんですけど」


 油断していた。クラフトマスターをかなり成長させている、親バカのハリドさんならソニアに無理をさせないと思っていたが、そんな事はなかった。いや、無理をさせようとして、させたわけではないんだろうけど。


「ハリドさん、ソニアになんの鉱石叩かせたんですか?」

「ん?ああこれは」


 ハリドさんが手で持ち上げた、形が剣になりかけている鉱石。改めて魔眼を使用してみると、禍々しい程の魔力を孕んでいた。初めから魔力を帯びているなら気づけたが、どうやらそいつは特定の条件下の元で魔力を帯びる。


「月影石だけど」

「そんなの子供に叩かせる親がどこにいるんですか!」


 思わず大声で叫んでしまった。月影石とは月の魔力を吸収する特殊な鉱石であり、雲より高い山の上でしか採ることが出来ない貴重品。月影石で作られた武器は強力な魔力を放つ事ができ、魔剣と称され高額で取引されている。加工するには高い技術力を求められ、並みの腕では魔力に弾かれ形を変えることも叶わないという。


「この金槌はなんですか?」


 床に落ちた金槌を片手、では重かったので両手で持ち上げる。


「魔喰虫の頭殻で作ったやつだが?」

「バカオヤジ……」


 思わず本音が漏れてしまう。


 魔喰虫とは生物や鉱石を食べることで体内に魔力を蓄える魔物。魔力を持つものならなんで食べるという性質が故にかなり狂暴で、自然や鉱石を喰い潰すという、姿を見たらすぐに処分しないといけない厄介な魔物。その癖、大量の魔力を蓄えているので非常に強いという質の悪さ。


 だが、厄介なぶん魔喰虫の頭殻から作られたモノは、使い手の魔力を大量に消費するがそこらへんの武器とは桁違いの破壊力を誇るという、使う者を選べばかなり強力なモノになる。


 なるのだが、スキルを大して使ってこなかった子供に、魔喰虫の頭殻で作った金槌を持たせ、月影石を使った武器を作らせるこなんてのは。


「ありえない……」


 ありえない。が、ハリドさんはこの重大さに気づいていないのだろう。オレの反応を見ても「なにが?」と首をかしげている。


「月影石と魔喰虫の頭殻はですね」


 ハリドさんに二つの特徴を教える。なんで鍛冶屋がそんな事も知らないんだ!と怒鳴りたくなるが。


「そ、そうだったのか。ソニアがやる気を出してくれたのが嬉しくて、いつも奮発して高い鉱石とそのとき調子がいい金槌を渡してたんだが。そんな事になるとは……」


 悪気がない。というのはわかっている。


 ハリドさんのクラフトマスターはかなり成長している。鍛冶屋としては超一流と言っていい。この人になら武器の事は任せられる。と、作っている姿を見なくても、魔眼で見ればわかるほど。だが、成長のしかたが圧倒的に感覚的なのだ。


 頭で考えるのではなく、身体が順応していくタイプ。月影石の加工も”なんとなく”で行えるし、魔喰虫の頭殻で作った金槌を使っても”いつもより疲れた。むしろ使い甲斐がある”とでも思うタイプ。悪く言えば脳筋野郎。


 職人としては超が付くほど一流だが、指導者としては評価もつけられない。


「じゃ、じゃあ子供の頃からソニアが武器を作れなかったのは」

「今日の調子で鉱石と金槌を選んでたなら、ハリドさんのせいですよ」

「そ、そういうことか……」


 汚れた床に手を膝をついて悔しがるハリドさん。


 知らなかったことはしょうがないが、なぜ励ます気にはなれかった。

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