表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王都騎士団を追放された元教官 ―故郷で弟子をとることになりました―  作者: すなぎも


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/61

23 訓練前の確認

 早朝。太陽が山の間から姿を見せて、湖の水面を光らせている。冷たい朝の空気が心地よく、遠くで鳥の声がする以外の物音は聞こえない。


 そんな中、草を踏む足音が2つ聞こえてきた。振り返ると、小走りでこちらに近付いてくるソニアとフィオナ。小さな息遣いのわずかな乱れ。家から走ってきたのだろう。


 やる気の表れか、薄いシャツと短パンの少女たち。王都ではみない露出の多さであり、『田舎者』と指をさされそうだが、これから訓練をするには100点満点の服装である。


「おはようお兄ちゃん!」

「おはようございます。ルーカスさん」


「おはよう。ちゃんと朝飯は食べてきたか?」


「うん!」

「はい」


 元気のいい返事に、うむうむと頷く。


「じゃあちょっと見せてもらうぞ」


 魔眼を使い、2人の身体を隅々まで見る。彼女たちの身体付き、筋肉量、どこの部位に多くの筋肉が付いており、どこに無駄な肉が付いているか。


「ちょ、ちょっとお兄ちゃん。そんなにじろじろみないでよ」

「さすがに、恥ずかしいかも知れません……」


 いやん!と少しふざけて身体をよじらせているソニアと、頬を赤く染めて俯いているフィオナ。


 動きやすい恰好で来いと言ったとはいえ、あまりに薄手だったからそういう恥じらいはないものだと思っていたが、そんなことはなかったらしい。オレが2人ぐらいの年頃だった時は全裸で走り回っていた気もするが、そこは男女の違いか。


「すまんすまん。固有スキルでお前らの身体の状態を見てたんだ。もうちょっと我慢してくれな」


「そ、そうなんだ。ちなみにお兄ちゃんの固有スキルってなに?」


「魔眼って言ってな、目に魔力を与えると色んなものが見えるようになるんだ。ソニアの固有スキルは『クラフトマスター』で、フィオナは『魔獣化』。フィオナは魔獣化を中心に訓練してたけど、ソニアはクラフトマスターを全く使ってなかったみたいだな」


「そんなことまで見えるの!」


「そのかわりソニアは筋肉がいい感じに付いてるのと、体力もあるみたいだな。主に剣を使った訓練をしてて害獣は殺したことがある、と。ちょっといいか?」


「ん?」


 首をかしげるソニアの前に片膝をついて腰を下ろす。


「両手を前に出して力を入れてみろ」


 不思議そうにしながらもムッと拳を作るソニア。オレはまだ未熟な二の腕へ手を伸ばし、指先で軽く筋肉の張りを確かめる。皮膚の下にはまだ頼りないながらも硬さを帯びた筋があるのを感じる。そのまま指を拳まで滑らせた。


「なるほど。次は腹筋に力を込めて」


 ハッと息を込めるソニアのお腹と背中に手を当てる。線は細いが一本通るような芯を感じられる。力を込めると、確かな圧が返ってくる。


「悪くない。次は下半身」


 太ももとふくらはぎを掴むと、力が込められた。指を弾くような筋力と、薄くもしなやかな筋の感触。


「自分で鍛えたのか?」


「サイラスさんが「人体の仕組み」っていう本もってたから、フィオナちゃんと一緒にそれを読みながら鍛えてたんだけど」


 不安そうに「どうかな?」と視線で問いかけてくる。


「んー……。素晴らしい!この身体を自分たちで作れたなら充分だ。偉いぞー」


 立ち上がり、ソニアの頭を撫でてやると、えへへ、と下を向きながら笑う。


 独学でこの身体に仕上げたのはいいセンスを持ってる。正しい事が記された書物を参考に愚直に行ったのだろう。子供の割に、という前置きは付くが、年頃の少女にしてはいい育ち方をしたと言える。


 恐らく、アンナさんが固有スキルで陰ながらサポートしていたのだろうが。


「それじゃあ今後なにをしていくかを説明するぞ」

「あ、あの」


 言葉を遮り、フィオナが小さく手を挙げた。目はこちらを向いておらず、どこか言い難そうにしているが。


「私の身体調査は、しないのでしょうか?」

「全然筋肉付いてないからな。触らなくてもわかる」


 と、言ったところで脳裏に手合わせした後の、2人の落ち込む様子がよぎった。これではまるでソニアは頑張って、フィオナが頑張っていなかった。ソニアを褒めたのは頑張っていたからだと捉えられてもおかしくない。


「安心しろ代わりにフィオナには凄い魔力があるのはわかってる、わかってるぞ、フィオナ。お前はソニアが身体を鍛えている時、魔力の最大量を上げたり、魔獣化を使いこなせるようにしてたんだよな?わかる。わかるぞ。オレの魔眼でそれはしっかり見えてるからな。偉い。フィオナも偉い!2人とも偉い!」


「そう、ですか……」


 精一杯ほめたつもりだったが、フィオナには響かなかったようだ。彼女は残念そうに肩を落として、暫く「しょぼん」と落ち込んだ様子を見せていた。


 年頃の少女というのは、騎士たちよりも扱いが難しいのかも知れないな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ