第6話 Six Feet Under⑭
「……大した演技だこと」
「何のことだ?」
三人が出て行ったことを確認し、ロビンは口に蓄えた口髭を軽く撫ぜた。
「とぼけちゃって。……まあいいわ、私のここでの仕事はここまでね。後ちょっとで実験も終わったのに。ほんと、残念」
「ふむ……これは一体どう言う実験だったんだ?」
「あら? 聞いてないの?」
「私はただの警察機関の人間だぞ。知るわけないだろう」
「ふふっ、副総監殿が謙遜しちゃって。いいわ、教えてあげる。私はね、あの方に不死の身体を作れと勅命を受けたの。だから、まずは食事を必要としない身体を作った」
「その結果がこの遺体か」
チラリと視線を向けると、そこには腹を割かれた少女の遺体があって、中はぽっかりと空洞になっている。
「そうよ。とりあえず飲食をしなくても生きれるようにはできた。でも、それだけね。結局肉体としての寿命からは逃れられなかった。流れで殺しちゃったけど、ほっといても数日後には死んでたでしょうね」
「……そうか。だが、食事はどうする? 摂らねば不自然だろう?」
「あらそんなこと? 食べた物は全て吐かせてたわ。そこの旦那も知らなかったんじゃないかしら? 治療として必要なことだからと言えば簡単に信じちゃった。後はひたすら私の用意した薬を飲ませて、徐々に内臓を腐らせていけばはい終わり。ほんと、馬鹿は扱いやすくて助かるわ」
レクターはそう言うと、ふっと小さく笑った。その笑みは目の前の子どもが哀れで仕方ないとでも言いたげであった。
「……なるほどな。やはり国直属の研究機関に所属していた者の考えは分からんな」
「あら元よ、元。今は陛下の為に働くただの駒」
「駒、か」
「えぇ。それにしても最初警察機構の制服を着た人間が入って来てビックリしちゃったけど、アナタだったなん――」
瞬間、パンと乾いた音が室内に響いた。ぽたぽたと、赤い雫が床に広がった。腹に空いた穴から滴る血に目を丸くしたレクターの口から、ツッと血が垂れた。
「なんっ……」
「誰と勘違いをしているのかね?」
「は?」
「私は君の言う陛下なぞ知らんな」
「なッ……騙したな貴様!?」
髪を振り乱しながら叫ぶレクターを、ロビンはただじっと見下ろす。まるで、憐れな何かを見下すかのように。
「騙す? 面白いことを言うな、犯罪者は。勝手にベラベラ話して来たのはお前だろうに」
「――ッ!」
「本当に、科学者の言うことは分からんな」
乾いた音が立て続けに部屋にこだまする。
それだけだ。それで、終わってしまった。
「……余計な手間ばかりが増えるな」
帽子を被り直したロビンは、ただ小さく舌打ちをして部屋を後にする。部屋に転がる死体に、一瞥すらすることはなかった。




